国が亡ぶ前に、さあ逃げましょう~
決心したけど、今言ったほうがいいかな……。
いや、夜のほうがいいから、今言ったほうが時間がある!
「お父様、お母様。それにエイミ。私決心しましたの」
私ははっきり告げた。
お父様もお母様もエイミも、私を見つめている。
いやなんだかエイミはわかってそうだわ。
「このティラー伯爵家全員でこの国、オマスペルマスを捨てようと思いますの」
沈黙が少し続いた。
そして、
「「ええっ!?」」
お父様とお母様が口をそろえて声を張り上げた。
エイミは何も言わなかった。
やっぱり、分かっていたのかしら。
「で、でもアンジュ、それだと国王に仕えている私達は国王を裏切ったことになりますわ!」
「ミ、ミルティーユの言う通りだ!」
お父様はお母様の意見に賛成している。
「今はそういう問題じゃないのです! 聖女がいなくなれば魔物がたくさん侵入しますわ。この辺りは魔物も強いですし、城下町に入ったら何人の人が死ぬことか……。それでも何もしない国王を見て、逃げていく貴族もいると思いますわ。ここに居たら命が危険になるかもしれません。今は命を優先すべきですわ!」
私の説得(?)にエイミは、うんうんと頷いてくれている。
お父様とお母様はしばらく無言だったけど少しして、微笑みを浮かべた。
「そのとおりだアンジュ! 実は俺も王の素行には嫌になっていてな。聖女が廃止と聞いて俺も国を捨てようと思った」
「そうよ~! アンジュを試していたの」
た、試されてたのね……。
でも、家族はみんな賛成。
あとは、衛兵とか侍女がどれだけ付いてくるかだけど……。
「言われなくても、ずっと伯爵家についていくつもりですわ! アンジュ様、ご安心ください!」
「わ、わたくしも今の国王さまに嫌気がさしたので……、もちろんついていきます。あ、でも家族でいったん移動します。そこから合流という感じで」
み、みんな……。
メイドや侍女、衛兵はみんなついて行ってくれる。
いったんは家族で移動する人もいたけど。
「じゃあ、作戦会議をしよう。君たちには決まったら伝える」
お父様がメイドたちにそう言って、私達はリビングに移動した。
「いつ逃げるかですけど……夜がいいと思いますわ。どこに行くか聞かれると厄介ですので」
私は意見を言う。
みんなが頷いている。
「家は、〖クッピー&パット〗で移動すればいいと思います」
なるほど。カットして貼り付けるのね、屋敷を。
エイミ、ナイスアイデア!
「つまり、荷物はそのまま屋敷に置いておいて、私達は別の国に行く……。というか、〖テレポーテーション〗で行けばいいのか。先に行く国決めれば」
私は一人でつぶやいた。
だけど、採用されちゃった。
「なるほどね! なら、聖女がいない国がよさそうよね。〖シャッフシー〗」
お母様が、〖シャッフシー〗で何か調べている。
「〖アップリミ〗」
ん、印刷?
なにかしら。
リビングのテーブルに、この国近辺の地図が上から降ってきた。
「調べた結果、聖女がいないのは、ここよ!」
お母様が指差した先には、「ペルミルン」と記されていた。