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第三話【始まりの鐘はここに】

日本帝国軍部機関・・・日本は戦後約50年、民主主義国として首相を筆頭とし、国民に選ばれた議員たちによって政治を行っていた。

しかし古くからの血筋なのか何なのか、日本人はどうやら政治に関してやや他国よりも厳しいらしく、ひとつの内閣が長続きしたためしがなかった。

しょっちゅう変わる国のトップに世界各国も呆れ果て、日本は世界から浮き出た存在となったことで政府は危機感を感じた。


そこで日本における政策を一から見直そうということになり、民主主義の体制からして疑問視されることとなった。


最早ここから日本は崩れ始めていたのかもしれない・・・国民の意見が届くように、もう50年前の過ちを繰り返さないためにと作られた憲法さえ、いまや過去の遺物となった。


国民の意見をいちいち聞いていたら国が安定しないのは当たり前だとし、なんと日本政府はかつて正に戦争を起こした原因とも言える独占体制へと移行することになったのだ。


日本は『日本帝国』と名を改め、皇帝陛下を国のトップとし、法律も何もかもが一部の政治家たちと陛下のみが決定権を有する国になってしまった。



その中で、民主主義とは決別したことで日本はアメリカかた完全に独立し、軍部の必要性も問われた。

そこで政府直属の軍部機関として立てられたのが『日本帝国軍部機関』である。


大体にして普段やることは警察と変わらないのだが、警察と違って陛下直属のため、法律の仲介がない無理なやり方がきくという点において異なる。


よって警察は最早ただのお飾りになってしまっているのも確かだ。




ここまでをまとめるとつまり。


私は何かの理由で陛下の機嫌を損ねたのか、それとも知らないうちに犯罪を犯したのか、どちらにしろ国を支配する陛下から「ちょっと顔貸せや」といわれたも同じなのである。


一番理解したくない現実というのが、まだ帝国が建国してから数年しか経っていないが今まで陛下のご機嫌を損ねた者たちが軍部機関に連れられていってから帰ってきた者がいないということだ。

国民たちは陛下のご機嫌を損ねないよう、日々を大人しく過ごすしかない。



「君には拒否権など存在しない。隠れたところで無駄だ。我々は逮捕権を持っている」



ここで逃げ出してもあの鍛えられた軍隊相手に敵うはずがない。

私は何もしてないのに!!!

トンでもない誤解だ。


というか、第一級犯罪人って・・・

なかなかいないんじゃないだろうか。

何の証拠があってこんなこと!?

ううん、でもきっと何かの間違いよ。

証拠なんか出てくるはずないんだから、すぐに私が無実だとわかるはず。


とりあえずここは大人しくしておいた方がよさそうだ。

何の罪も無しに軍部の世話になるなんてムカつくけど。


私はおずおずと手を上げて名乗り出た。

一斉にこちらを見る人たちの視線が居た堪れない。






こいつらか弱い女相手に一体何人がかり!?



私が名乗り出るとすぐさま軍部機関は数人で私を囲い込み、私を中心にして外へ連れ出していった。


なんとも傍から見れば仰々しい。

まるでボディーガードに護られている芸能人のような変な気分になってきた。


しかし時折確認するように乱暴につかまれる腕は軋んでかなり痛い。

痣になったら誤認逮捕に付け加えて傷害罪で慰謝料分捕ってやる!!






私はこいつらが乗ってきたのであろう黒いワゴン車の後部座席に乗せられた。

そして後から私を囲んでいた黒ずくめのやつらも同乗してくる。

これじゃあぎゅうぎゅう詰めで息が苦しいんだけど・・・



「あの・・・車ってこれしかないんですか?」


「君を見張るためだ」


「見張るって・・・あの、何かの間違いだと思うんですけど。あたし何もしていませんし」


「それは陛下がお決めになることで、我々は言われたとおりにするだけだ」


「証拠だってないでしょう?一級犯罪なんてそんなの」


「陛下の御意志だ」



駄目だコイツら・・・機械相手にしゃべってるみたい。

私は深くため息を吐いたけど、そのときふと気になったことがあった。



「あの、あたしの家族はこのことを知っているんでしょうか?」


「・・・君は成人だろう、親の同意は必要ない。大体これは任意同行ではない。繰り返すが、君に拒否権はない」



な、なんてめちゃくちゃなの!

これが帝国なのか・・・



「でもどれくらい拘束されるんですか?それによっては母に連絡しないと」


「君は帰れないから心配いらない」


「・・・え」



私が今まで冷静でいられたのは、私が私自身で潔白だとわかっていたからだ。

何かの間違いで目をつけられたのだとしても、本当に逮捕できるわけがないと。


しかし甘かったようだ。

緊張で背中が汗で湿っている感じがする。



「君には十分一級犯罪の罪がある。証拠は我々が持っている」


「どっ、どういうことですか!?あたし、何もしてません!!なのに帰れないって・・・」



そのとき私は気づいてしまった。

今まで軍部に捕まって帰って来なかったやつらはどうなったのか。


陛下の下に拘束される・・・

つまり、軍部によって内密に消去されるということだ。

それが一生牢屋で過ごすことなのか、『死』を意味するのかはわからないが。


想像した途端に私は背筋がぞっとした。

大抵のことには冷静でいられると自負しているけれど、命の危険が迫っているとなれば話は別だ。


冗談じゃない!!



「っ、放せ!!放せよコンチクショー!!!あたしは何もしてないってば!!」



力いっぱい暴れてみたが、やっぱり無意味だったみたいだ。

逆に手足を強く拘束されて、さるぐつわを嵌められた。


これじゃこいつらが犯罪者じゃない!!


私は何がなんだかわからず、教壇に立っていたリーダーと思われる男を殺気を篭めて睨み付けた。


ふざけんなっ!!帝国の犬め!!これが国のやることかよっ!!!


私は悔しくて仕方なくて、そしてこれからどうなってしまうんだろうという不安で目に涙が浮かんできた。


なすすべもなく、ついに諦めて項垂れるように後部座席の真ん中に拘束されていると。





「はあー。まさかこんなじゃじゃ馬だったとは・・・騙された」



前の方から、この場の雰囲気には似合わない若い男の声が聞こえてきた。


思えばこんな風にして『ヤツ』に出会ったのだ。





やぁーっと登場させられた・・・;;

長いこと長いこと。


あ、政治何とやらは適当ですので気にしないでください。

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