第一話【最悪の誕生日】
私の名前はユア。
今日6月13日金曜日、晴れて20歳を向かえた大学2年生である。
なんだか13とか金曜日とか、嫌なイメージのある日だと思わないこともないが、とにかく私は今日成人となった。
思えばこの20年、生きてきたという実感が全く沸かない。
小さいころは毎年年をとるたびに家族や友人たちと誕生日パーティなるものをやってきたし、周りの子たちとなんら変わりのない生活をしてきたはずだ。
だけどいつからだろうか。
私は幼心に他人と自分では何か相容れないものがあると、漠然とだがわかっていた。
何か私と他人との間に半透明な壁のようなものがあって、よく見えないのだ。
でもそれは私だけではなく、相手も感じていたようで、私は小さいころから極端に友達が少なかった。
周りの子たちが笑っているのを見て何が楽しいのかわからない、泣きたいのに涙が出ない、笑っているのに笑いなさいと言われた。
どうやら自分はずいぶんと表情のない子供だったらしい。
自分ではわからないが、よく『人形みたい』だと言われた。
感情のない人形である自分は、おそらくほかの感情豊かな子供たちにとって近づき難い人種であったのだろう。
だけど私は人間だった。
いくら表情に乏しくとも、ちゃんと心があった。
だけど周りはそうは思わなかったらしい。
私が何をやられても傷つかないと思ったのか。
私はよくいじめの対象になった。
信じていた友人にいつの間にか無視されたり、嘘の呼び出しの手紙を信じて3時間待ったこともある。
そんな私を見るたび、他の人間たちはバカみたいに笑っていた。
高校からはさすがに皆大人になったのか、そんなこともなくなっていたけれど、私の心の中にはそのときの傷跡が今もまだ、決して消えることはない。
―ま、おかげでこの年にして随分達観した人格になりましたけどね。
人は必ず嘘をつくし、保身のためなら裏切りだって平気でする。
所詮人は自分が一番大事なのよ。
私は若干20歳にして、こんな風にひねくれてしまったのだ。
人間なんて大嫌いだし、こんな自分も大嫌い。
そんな私に見かねた母は私に信じることの大切さを教えようとしたけれど、私はこれから先ずっと誰も信じないし、愛さない。
それが心ある『人間』である限り。
だから私は極力人と関わることを避ける。
一人でいることが一番の心の平安だからだ。
誰かに煩わされるのは、もううんざりだった。
―――なのに。
私の心の平安は、20歳の誕生日に突如として壊された・・・
暗い女の子でごめんなさい;;