第8話 歴史書
「君をここに連れ出した理由についてだ…。これに関しては少し納得の行かない部分もあるかもしれないが、どうにも関係ないように思えないことなんだ。信じて欲しい」
「どんなものなんでしょうか……」
「これを見てほしい」
そう言って聞いてた話とは違ってやけに落ち着いているネーズは、一冊の古びた本を見せてきた。
ネーズが1枚1枚ページをめくる。そこに描かれていたのは、古典的な絵。人のような絵や、家のような絵、それから武器のような絵も見える。そんななか、最後から2ページ目に、明らかに異質な絵が見えた。
「これはな、家の先祖代々から伝わる古い歴史書なんだ」
「これが歴史書ですか…?」
「気になった部分もあっただろう。この歴史書は少し変わってるんだ。もちろんかなり昔の出来事が絵として描かれている部分もある。だがな…どのページからか、どうやら未来を予知しているようなんだ…」
「未来予知ですか…!?」
「ああ、そうだ。絵としては伝わりにくいような絵だが、よく見ると全て"これから起きること"が描かれていた…。それに気づいた俺のじいさんも相当驚いたらしい」
「それも…何かの魔力の力なんでしょうか?」
「それは違うな。魔力に唯一出来ないのは、未来に直接干渉する事だ。世界のコピーを作るくらい心配な未来があるなら、未来に干渉して芽を摘んでしまえばいい。それを神は出来なかったんだよ」
「じゃあ…これは…」
「だから不思議なんだ。どういう理屈かも説明できない。ただひとつ分かっていることは、ここに描かれているものは全て本当に起きるということだ。それは君もきっと、もう信じてくれただろう?」
「………はい……」
俺はその絵を見てすぐに信じた。信じるしか無かった。最後から2ページ目、そこに描かれていたのは…。明らかに俺が住んでいた日本…そして、自動車事故に遭う人の姿…パイプラインの出入口らしき物…。これは完全に、俺のつい昨日の出来事のようにしか見えなかった。
「そして極めつけはこれだった。次のページを見てほしい」
「……これは…」
「前のページで事故にあっている人物が、次のページでは果敢に戦っているんだ」
描いてあったのは、両手を敵にかざし戦う俺と思しき人の姿だった。
「そしてここでページは終わる。もしかしたら世界が狂ってしまうのかもしれない…そんなふうに見えた。前のページの風景を見て、すぐにどこの風景なのかわかった。壊れそうなパイプラインを不安視した俺達は、イロハの能力で君の世界を何度か視察していたから。そして…」
「ある日視察の途中、俺がその絵のように事故を起こし、タイミングよくパイプラインが壊れ、次のページで敵と戦っていたのは俺なのかと…」
「そうだ…。さらにナマタマゴの攻撃を防げたということは魔力が使えたんだ。魔力が宿ってもセンスがある人にしか使えない。運命としか思えないんだ…。もちろん納得の行かない理由なのはわかる。それに命もかかるかもしれないんだ。無理にとは言わない、難しければ自分の世界へ帰ってくれ」
「………俺は…もう逃げないって決めたんです。ここに来る前俺は…根拠はなくても、なぜだか魔力を使ってみて、"本当ないけないことなんじゃないか"と思いました。色々な話を聞いて、"このままじゃだめだ"と思いました。そう自分で思ったからには……全てを解決するまで、帰る気はありません」
キッパリ言った。昨日まで告白する勇気すらろくになかった俺が、昨日今日会ったばかりの人達の、命にかかわる願いを聞いた。それも、本心で。そんな自分が信じられなかった。でもだからか…俺はこの世界との、運命を感じずにはいられなかった。
どこかで全てを説明しきらないと話が進められないと思った結果、この謎の会話ラッシュ回になってしまいました。つまり文才も構成力もないのです。