あの向こう
僕は小さな灯りを頼りにゆっくりと出入口に向かう。
扉近くまで行き、軽く扉を押すとキィッといいながら扉に隙間ができる。
隙間からは、やはりこの部屋同様石造りの壁が続いており、その奥から風が流れてきている。
そしてその風が外と繋がっている事を教えてくれるが、その先には光は一切なくただ闇が広がっていた。
「おっかないな〜ちゃんと外に繋がってんのかなぁ?」
ココを出ることも少し不安に思う上、出口がコレだとやっぱり躊躇ってしまう。
1度目を瞑ってもう一回向こうに目をやってみるが、広がる闇はまるで光りどころか人すらも飲み込みそうでそれは僕に恐怖を植え付けさせる。
うぅ‥‥やっぱ無理。
僕は扉をゆっくり締め、先程横になっていた所まで戻ってしまいそのまま座り込んでしまった。
結局戻ってきちゃった。
この意気地無し!とか心の何処かから聴こえてくるけど気にしない。
アレはちょっと勇気がいる。もう少し様子を伺ってからゆっくり、ゆっくりと‥‥
ぐぅ〜〜
お腹空いた‥‥
タイミングが悪いと言うか何て言うか、僕には緊張感と言うものは無いのだろうか?
何か食べ物ないかなぁ‥‥
僕はポケットをガサゴソと探るが食べ物は全くない。
勿論辺りにも食べ物らしきものは無い。
ぐうぅ〜〜〜
ぐふぅ、やっぱり何も無いと思うと余計にお腹が空いてしまう。
やはりあの闇を抜ける他に無いようだ。
ぐうぅ〜、ぐうぅ〜、ぐうぅ〜〜〜〜〜〜〜〜
分かったから僕のお腹1回黙ろうか。
えぇい!どうにでもなれ!!
「‥‥よしッ!」
声を出し、足に力を入れ僕は再度立ち上がる。
「大丈夫!ヤバくなったら全力で走る!!」
恐怖を消すために敢えて大声を出し、気持ちを落ち着かせる。
大丈夫!怖くない、怖くない‥‥!
これでもかと心に言い聞かせ僕は扉の前に立つ。
パンッ!と頬を叩き気合いを入れ直す。決心をつけ扉をゆっくりと開き暗闇へと脚を踏み入れる。
真っ暗な為右手を壁に付け、足はすり足でゆっくり進む。
ズリ、ズリ、ズリ、ズリ‥‥
ある程度進んだ所で僕はふと後ろを振り向く。
「‥‥ッ!」
先程までいた部屋の灯りはもう見えなくなっており僕は既に闇の中にいる事を改めて知り、恐怖がまた襲ってくる。
そんな時だった。
ピチョンッ!
突然首筋に水滴が当たる。それは今まで抑えていた恐怖をあっさりと決壊させてくれた。
「ぴぎぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!?」
先程のすり足を忘れたかのように走り出し、僕はもう安全と言うものに気を配れる状態では無かった。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
奇声をあげながら疾走す成人男性。
きっとこれは僕の黒歴史として墓場まで持っていくだろう。
いくら走ったかも分からないが闇はやっと終わりを見せ、目の前に一筋の光が目に飛び込んでくる。
やった!光だ!!助かった!!
光は進むにつれ大きくなり僕は念願の外に出ることが出来た。