ううううううううううううううう
ああああああああああああああああ
世界中の人々が眠る頃、
サンタクロースは空を飛んで、
誰かの家の上を通っているだろうか。
〜
省吾は、夜更かししていた。
けれど普段から夜更かしばかりしている子ではない。
今日だからこそ夜更かしするのだ。
今日がクリスマスイブだからこそ、夜更かしするんだ。
サンタクロースは信じていなかった。父や母が僕が寝た頃にやってきて、枕元にプレゼントを置いていく。
プレゼントは僕がほしいものと違う、例えば、脳トレのゲームだったり、有名な僕が読んだってよくわかんない本だったりした。
最近二人とも口うるさくなってきて、あれをやれ、これをやれ、といろんなことを言うようになった。
うっとおしい、ほっといてほしい、僕だってやりたいことをやりたいし、宿題をサボったりしたわけでもないのに。
だから、今日、夜更かしをすることにしたんだ。
今年も去年と同じように、プレゼントを置きにくるだろう。その時を見つけてやるんだ。
そうやって子供騙しを続けて面白がってることを、僕はちゃんと見抜いてるんだぞって、
父さんや母さんが思ってるよりもちゃんと考えて生きてるんだぞって、証明してやるんだ。
布団をかぶりながら、時計をみた。
まだ10時だ。
サンタクロースを信じたふりをして、楽しみにしてるふりして、舞い上がってるふりして、早く布団に入ったのが裏目に出た。しまった。
目をつぶってしまうと眠ってしまいそうだし、かといってやることもない。下の部屋からテレビを見る音が聞こえてくる。父さんたちはまだ起きてるみたいだ。
小学校の四年生にもなると、サンタクロースを信じてる子は半々くらいで、今日の学校も信じる派と信じない派で喧嘩になってたな。
特にミオちゃんは信じる派の中でも一番に信じていて、トナカイの服の色から頭の先の装飾まで色々しゃべっていた。ミオちゃんは素直でかわいいけど、サンタクロースを信じてるなんて子供だな、なんて思ったりしたけど、自分もまだ子供だと思って変な感じがした。
もし父さんたちがこなくて、サンタクロースも来なかったら、僕は世界の秘密を知ることになるのかな、なんて壮大な気持ちで少しだけ、ワクワクした。
マスコミの前で、「サンタクロースはいませんでした。僕は一晩寝ないでずっと待っていたけれど、ちゃんと来ませんでした。よってサンタクロースはいません」なんて、カメラのフラッシュを浴びながら、論文を読み上げるように発表するんだ。
世界中の人々は悲しむかもしれないな。
ミオちゃんも悲しむかもしれない。
なら、仕方ないけど、 発表はやめておこう。
悲しむ人が出ないように、心の中にとどめておこう。
僕は大人だからね。
そんな変なことを考えてたら少し寝ちゃって、もう一度目覚めると、時計は2時20分をさしていた。
ちょっと寝ぼけてたけど、枕元を確認して、プレゼントがまだないことを、安心して、少し残念だった。
あんだけお父さんたちがプレゼントをおく現場をおさえて、嘘をついていたことを非難しようとしてたのに、プレゼントはほしいのか僕、ってなって。なんだか、しょぼく感じた。そんなもんなのか僕は、ってなった。
まぁいい。そんな小さなことは気にしてる場合じゃない。
ここからが勝負なんだから。
ここから朝までプレゼントを置きにくるお父さんたちをこの目で見なきゃいけないんだ。
その時、フッと眠気がきた。
そして、呑まれた。
雪の中にいた。僕は暖かそうなスキーウェアみたいな恰好で、頭にニット帽と耳当てもして、立っていた。
僕は東京生まれで、東京育ちだから、雪はあんまり見たことはない。近所にちょこっと積もるくらいの雪しか見たこともない。
それなのに、この夢はすごい。雪しか見えない。あたりは真っ白で、真っ白すぎる白さが、これは夢だと教えてくれた。
起きなきゃ。そしてつねった。
痛くなかった。夢はさめない。
おじいさんが歩いてくる。灰色の服をきた。太ったおじいさんだ。寒そうな恰好をしてる。
「やぁ、一人で雪遊びかい?」おじいさんは言う。
「さぁ、わかんないよ、なにかをしたいってわけじゃないんだけど。」僕は答える。
強いて言うなら起きなきゃいけないんだけど、雪の白さはなんだか惹きつけられて、見惚れてしまう。
「寒いだろ、うちへくるかい?」
そう言ってきたら、急に寒い気がしてきて、
僕はついていくことにした。
おおおおおおおおおおとおお