9.戦果ともふもふのお話
灰熊さんの討伐も無事に終わって、一段落といったところで、休憩がてら戦果の確認のお時間です。
インフォメーションを確認してちょっとびっくり。なんと、レベルが2つもあがってるのです!灰熊さんはもしかして結構おいしいのかも。……うん、単純に灰熊さんがそれだけ強敵だったってことだよね。ボスだし……。
BPは……あれ?4つもあるんだけど!2つ上がって4もらったっていうことなのかな。クラスチェンジかLvが10超えたからなのか。どっちもなきがするけど、とりあえず横に置いちゃって、もらえるんだからもらっちゃいましょ。
配分はどうしよう。1はSTRに振ると素の値が10になるから確定として、残りはどうしようかな。今のところ魔法を使ってないからINTはいいとして、VITは10になってるから後ででいいかも、防具でもあがるみたいだし。
今回は、BP4をSTRとAGIに半分こにしましょう。DEXは今のところ必要性を感じないというか、生産以外で何に影響するのかよくわかってないので放置しちゃう方向で。
次はスキルの確認です。
こちらは予想通りというべきか、【神聖魔法】と【分析】以外があがってます。【分析】はともかく、【神聖魔法】は今のところほぼ出番がないからしょうがないんだけど、後で鍛えなきゃだね。
殆どのスキルが1つ分はレベルアップしてるみたいだけど、【鎧】だけなんと!2つもあがってます。ガードしてても削られちゃったもんね……。でもこれで【鎧】を育てるのは少なくともダメージを受けることが必要みたいだよね。痛いのは嫌だけど、これは【神聖魔法】とセットで鍛えるチャンスかも?
最後はSPかな?こっちも4つ増えて、合計値が14になってます。
ということは、やっぱりレベルアップでBPとSPともに2つずつもらえるようになってるみたい。
どうせならスキルも追加しちゃいましょう。VITも重要なことに今更ながら気が付いたので、補正が入る【体力上昇】をとることは確定で。どうせならINTとDEXのほうもとっちゃいましょう。少しだけでも底上げできるなら、ってことで【知力上昇】と【器用上昇】も取得。
SPは6減って残り8です。
一通り確認し終えて、今のステータスはこんな感じになりました。
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雪花 Lv12
職業:ナイト
-ステータス-
STR: 12 [+0, +1]
VIT: 13 [+2, +1]
INT: 4 [+0, +1]
DEX: 5 [+0, +1]
AGI: 15 [+2, +1]
-スキル-
【片手剣 Lv2】【両手剣 Lv4】【重盾 Lv2】【鎧 Lv5】【神聖魔法 Lv1】【筋力上昇Ⅱ Lv4】【体力上昇 Lv1】【知力上昇 Lv1】【器用上昇 Lv1】【敏捷上昇Ⅱ Lv4】【分析Lv1】
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毛皮のショールだけ装備した状態でこんな感じ。見事に近接職って感じです。AGIを先に20まであげてからSTRとかにしようかな。でも、STR先でもいいような気もしたり……。
うん、AGIとSTRを1Lvずつ交互にあげることにしましょう。
一通り確認が終わったので、他のみんなはどうだろうと思ってみてみると、まだ確認中みたい。
はてさて、となるとやることはひとつです。
「よいしょっと」
頭の上でいまだに寝ているポテリスくんをおろして、と。
「それっ、君にはもふもふの刑だ~」
はぁ~、物凄く気持ちいい……。もふもふふわふわの毛並、名前の通り全体的にぽてっとしてはいるけど、特にお腹のもちもち感も堪りません!
ほっぺたのほうは~。ふわっ、こっちも凄い!もちもちとしていながらも、とってもふわふわでものすごくやわらか~。
「むきゅぅ……きゅぴ……?」
むにむにしすぎて、ポテリスくんが目を覚ましちゃったみたい。きょろきょろと周りを見回した後、両方のお手々でくしくしとお顔を洗ってます。ただ、物凄く動作がのっそりしてて、めっちゃ和んだり。
って、またうつらうつらし始めてる……。
「この~、寝坊助さんめ~」
「むきゅぅ~」
そのまましばらく、むにむにもふもふしてると、どうやらほかの人たちも終わったみたい。
「うむ、皆終わったみたいだな。では、討伐報酬の確認だが――」
いよいよ、メインの2つ目の討伐報酬です。今回はドロップ品は、「灰色熊の毛皮」、「灰色熊の手」、「はちみつ」の3種類だったみたい。
まず灰色熊の毛皮だけど、こちらはやっぱりというか普通の毛皮です。大きさも茶熊さんのよりは一回り以上大きいかも。それから、物凄く毛足が長くてもふもふしてます。そのまま高級絨毯替わりになりそうな感じ。
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灰色熊の毛皮
―夜に現れるというアッシュベアの毛皮。毛足が長く、とても柔らかい。
また、多くの毛が密集している背中側は特に、衝撃に強い。
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こんな感じなんだけど、何故か2つドロップしてます。……倒したの1匹だよね?
まぁ、おいとくとして次に灰色熊の手。こちらも茶熊の時にも見たけど、熊さんの手です。元の大きさが3mの灰熊さんなので、ポテリスくんよりも明らかに大っきいです。
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灰色熊の手
―夜に現れるというアッシュベアの手。
高級食材や珍味として使われる場合もあり、非常に美味であるという。
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何やら美味しいらしいけど、【料理】スキルなんてないのです。う~ん、そのうちとってみようかな?こちらは1個だけのドロップでした。
最後の品のはちみつ。琥珀色に輝いてて、ほんのり甘い匂いがしてます。……でもなんで瓶詰なんだろう。
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はちみつ
―熊の森でとれるはちみつ。ほんのりとした甘さがある。
熊の森の動物たちの大好物。
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……これはまた、動物さんたちに集られそうな予感がひしひしと。って、もしかしてこれならポテリスくんも起きだすかな?
配分だけど、毛皮と手はドラコさんが一旦預かって、売却で出た利益を分配するっていうことになりました。なんでも毛皮で防具を作って売りつけるとかなんとかいってたんだよね。
はちみつのほうはというと――
「ほらほら、こっちだよ~」
「きゅぷっ?きゅぴ~……」
満場一致でポテリスくんにプレゼントになりました。今はなっちゃんが指先にすくったはちみつを、ポテリスくんの鼻先でゆらゆらさせてます。
アイテムの説明通り、ポテリスくんも好物だったみたいで、一掬いして口元に持って行ったら、ぺろりとなめてくれたのです。それから、のっそりと起きだしてもっともっととちっちゃなお手々をふりふり。ただし、瞼は閉じたままなので、まだ夢心地みたいです。
それからみんなしてはちみつを食べさせてたんだけど、なっちゃんが面白がって、前述の通りに。
ポテリスくんははちみつの匂いにつられてるみたいで、あっちへふらふら~、こっちへふらふら~。その間も瞼は閉じたままなので、バランスを崩してよろめいてるようにも見えるから、ちょっと危なっかしい。
「こういうのなんていうんだっけ」
「うん?こういうの?」
どうやら声に出てたみたいです。せっかくなのでそのまま聞いてみることに。
「こう、ふらふら~ってバランスを崩して、よろめいて、たたらを踏む?」
「……ユキよ。それは千鳥足じゃないのか」
「それだ!」
そうです、千鳥足です!お酒を飲みすぎた人がよくやってるアレです。まさに今のポテリスくんがそんな感じ。
「それにしてもだな」
「どれだけ、ふらふら、してんの、って感じね」
二人して若干笑いをこらえてるみたいにちょっと声が引きつってたと思ったら、ユリさんは決壊したみたいに大笑いし始めるし、ドラコさんはそっぽを向いてるけど肩がちょっと揺れてる……。うぅ、恥ずかしい。
恥ずかしさを紛らわせるために、ポテリスくんのほうを見ると、まだなっちゃんと遊んでるというか遊ばれてるみたい。ぽてぽてとかよちよちといった歩き方で相変わらずふらふらしてます。
――ぷきゅる
あ、転んじゃった。
「むきゅぅ~……。きゅぴ~……」
うつ伏せのまま、手足を少しぱたぱたさせてたと思ったら、あきらめて寝始めちゃったみたいです。
それをなっちゃんが抱っこして連れてきたので、受け取ってわたしの膝の上へ。
「なっちゃん、ほどほどじゃないとかわいそうだよ~。ほらほら、きみも起きて起きて。おいしいはちみつが待ってるよ~」
そういいながらほっぺをむにむにと。なっちゃんにも手伝ってもらって、指差にはちみつを付けてもらって、鼻先でゆらゆらしてもらいます。
しばらくそうしてると、ちょっと起きてきたのか、首を伸ばしてはちみつをなめようとしてる。
「ほらほら、ちゃんと起きて。じゃないといつまでも食べられないぞ~」
そのまま、むにむに続行です。ほっぺに加えて、おでこのほうもむにむにと。するとようやく目が覚めたみたいで、ちゃんと瞼があいてます。
「きゅぴぴっ、きゅぴぴっ」
「ほらほら、ゆっくりお食べ~」
なっちゃんの指をぺろりとなめた後、はちみつ!はちみつ!とばかりに両方のお手々を上下にふりふり。なので、はちみつの瓶を近くまでもっていってあげると、そのままぎゅっと抱きしめて、瓶の口を傾けてぺろぺろとし始めました。
自分と同じかそれより大きい瓶をどうやってもってるのか、ちょっと不思議です。
とはいえ、一生懸命はちみつをなめてる姿は非常に愛くるしいです。見た目のぽてっとした感じもあって、物凄く愛嬌があるというか。
しばらくほんわかしながら眺めていると、ドラコさんとユリさんも復活したみたいなので、街へ帰ることになりました。
帰り道も帰り道で、行きと同じく毛玉まみれになるかと思ってたんだけど、今回はそんなこともなかったのです。
どうやら手元にポテリスくんと一緒にもってるはちみつの効果のようで、遊んで~とばかりに突っ込んでは来るんだけど、はちみつを見るとそっちに目が行くみたい。その結果、はちみつの瓶にあまり影響がなさそうな肩とか背中とかにぽふっと静かに着地して、よじよじと列ができてます。そして列の先頭の子はポテリスくんからはちみつをもらって、1回か2回ぐらいぺろっと舐めると、次の子へといった具合です。
きゅぴきゅぴ言いながら、列を守ってはちみつを舐めてるもふもふたち。まさに天国のような気分です。ユリさんやなっちゃんも終始顔がにやけっぱなしで、ドラコさんも若干笑みが漏れてます。うんうん、もふもふは正義なのです。
森の出口が近づくにつれて、もふもふの列もほとんどなくなって、それに合わせてだいぶ減ってしまったはちみつに、ポテリスくんはちょっとしょんぼりしてるみたい。はちみつを眺めてちょっと悲しそうな鳴き声が聞こえてきたり。
でもでも、みんなに分けてあげられるのは偉いよね、ってことでよしよしとして上げると気持ちよさそうに目を細めてます。うん、気持ちいいのはいいんだけど、そのまま寝ちゃわないでね……?
○●○●○
ポテリスくんのもつはちみつの瓶もほぼ終わりになったころ、いよいよ森も終わって目の前には平原地帯が広がってます。
ポテリスくんとの旅もここで終わりです。近くの木の枝の上に抱っこして乗っけてあげて、そのまま頭をなでなで。……うん、いつまでもこうしてるわけにもいかないので、名残惜しいけどさよならです。
「きゅぴっ」
撫でていた手を戻そうとすると、行かないで!とばかりに指先をちまっとつかまれました。ちょっとうるっとした目でこっちを見てます。
はうっ、そんな目をしないで~。
「うぅ、また来るからそれまで元気でいるんだよ~」
「きゅ、きゅぴぃ~……」
そういってもう片方の手でなでなでしてると何とかわかってくれたみたいで、離してくれました。
他の3人もそれぞれ抱っこしたり、乗せたりしてたもふもふたちを森に返し終わったようなので、いざ街へ向かって出発です。最後に、振り返ってばいばいと手を振ったら、ポテリスくんが両方のお手々に尻尾を合わせてふりふりしてくれて、とってもかわいかった。
○●○●○
「それにしても、今回はありがとう。ものすごいレベルアップだったわ。また何かあったらよろしくね」
「うむ。それで清算のほうだが、ユリとユキには茶熊の分もあるが、なにどれも需要は高いだろう。まず安値にはならないだろうから、期待しておいてくれ」
「いや~、楽しかったねっ。またみんなで狩りに行こうねっ」
帰るまでが遠足とはいったもので、南門に到着して、これれで本当の一段落、といった感じです。茶熊さんを狩ったり、灰熊さんを倒したり、なっちゃんの言う通り、確かに結構楽しかった。
「うむ、ではな。何かあったら連絡をくれ。特にユキ、珍しい素材なんかを手に入れたら我らにいってくれれば、買い取るか装備にするからな」
「そうね、ユキちゃんはあっという間に先に言っちゃいそうだもの。何か珍しいものがあったらお願いね。それから、装備品のメンテナンスも請け負うからそちらも連絡頂戴ね」
「ありがとう、それとまたよろしくお願いします」
それから軽く手を振りあって、その場で解散に。ユリさんとドラコさんは、中央広場のほうへ。それぞれこれからまた工房にこもって生産するんだとか。
わたしとなっちゃんのほうは、そのまま一旦ログアウトです。