2.ログインと初戦闘の話
今日はいよいよ、WWWのサービスが始まる日。
きっとなっちゃんは、わくわくしすぎて眠れなかったとかで早く起きすぎてそうな気がする。
……そんなことをいってるけど、わたしも実はちょっと早く起きちゃって、後始まる時間まで待つだけなんだよね。
結局、なっちゃんから電話がかかってきた。
やっぱり思ったとおり、早く起きすぎて暇をもてあましてたみたい。
話してたら時間になったから、通話をきってゲームにログインしてみよう。
早速WWW起動してログインすると、タイトルロゴと共にインフォメーションが。
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~インフォメーション~
本日10時より、サービスを開始、ゲームサーバーを開放いたしました。
なお、混雑解消のため、初期位置を各門内、中央広場から選択することができます。
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なるほど、確かに一気に同じ位置にでたらものすごい混雑するもんね。といってもなっちゃんに確か東西は混むって言われてたから、最初からわたしは南門を選択かな。
そうして選択を終えたら、無事にゲームのフィールドに降り立てたみたい。
「うわぁ……」
思わずに声にでちゃったけど、立派な石畳に、中世ヨーロッパ風の建物。目の前にはこれまた石造りの門があって、そこの左右からは石壁が続いてる。
なっちゃんの話と公式ホームページによると石壁でぐるりと囲まれた街ってことだったけど、実際に見ると結構迫力があって圧巻だね。
それにしても、
「殆ど、っていうかぜんぜん人がいない……」
なっちゃんが、最初は南は殆ど人がいないとかいってたけど、確かに間違ってない。けど、近くにいるのが門番だと思われる衛兵さんだけって……。名前が緑だから多分NPCみたいだけど、いくらなんでも人がいなさすぎだよね……。
ちなみに、名前が白だとプレイヤー、緑だとNPC、それ以外だとモンスターだったかな?モンスターのほうはレベル差で、+5Lv以上で赤、+-2で黄色、-5以上で青だったはず。黄色を基準に、相手のほうがレベルが低いほど青く、逆に高いほど赤になるっていう感じみたい。この辺はフィールドいけばわかるよね。
装備は、腰にある木剣と木盾があるから多分これがそうだよね。それじゃ、早速フィールドへレッツゴー。ログインしたらまず、いろいろ確認しろってなっちゃんにいわれたけど、ゲームなんだし、冒険第一だよね。
門を潜ってフィールドに出ると、見渡す限りの草原地帯。きっとごろごろしたら気持ちよさそう。
実際あちこちに白いウサギさんがいて、寝転がったり、草を食べたりしててかわいい。でも、これモンスターみたいなんだよね……。名前が赤で【スモールラビ】ってなってるし。
強そうだけど、とりあえず戦ってみよう。右手に木剣を、左手に木盾を構えてってと。
丁度近くで休んでるのがいるから、ためしに殴ってみよう。
「えいっ」
いきなり全力はかわいそうだからちょっと加減したんだけど、ぽこんっていう音と共にスモールラビの頭に命中。
スモールラビのほうは状況を確認しようと慌てて周囲を見回してる。あっ、目があっちゃった。
すると、素早く後ろに下がって、助走をつけて向かってきた!それから、直前で飛び上がってお腹の辺りに体当たり。
「動きが直線的かな」
思ったより素早いけど、ほぼまっすぐ突っ込んでくるだけ。これなら対処は楽で、うさぎさんの狙いに合わせて木盾を重ねると、直後に少し衝撃が。無事にガードできたみたい。
体勢を崩してるところに合わせて、すかさず木剣を振って、これはきっちり命中。うさぎさんはそのまま少し距離をとって、また体当たりを仕掛けようとしてるみたい。
その間にうさぎさんのHPバーをみると、なんとか1割減ったぐらい?これはうさぎさんがタフなのか、わたしの攻撃力が低すぎるのか。きっと両方だよね。
そんなことを考えてる間にも再度ダッシュからの体当たりが。これもきっちり盾でガードして、追撃。
3度目はちょっと学習したのか、ジグザグに飛びながらの体当たり、かと思いきや空中でくるりと身を翻してのキックだった。ちょっとびっくりしたけど、対処は同じ。
このうさぎさんは、体当たりと時々ジャンプキックといった攻撃パターンみたい。きっちりガードしきってカウンターで何とか倒せた。う~ん、ただすばしっこいだけなのかな?
そんなことを思っていたらレベルアップのインフォメーションが!
1匹でレベルアップしたみたい。とりあえずステータスのほうはAGIをあげようかな。
それからスキルのほうも上がったみたいで、【剣】【盾】【筋力上昇】【敏捷上昇】がそれぞれLv2になったみたい。
念のためにステータスを確認してみると、
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雪花 Lv2
種族:ヒューマン
職業:ファイター
-ステータス-
STR:8 [+1, +1]
VIT:7 [+1, +0]
INT:3
DEX:3
AGI:5 [+0, +1]
-スキル-
【剣 Lv2】【盾 Lv2】【鎧 Lv1】【神聖魔法 Lv1】【筋力上昇 Lv2】【敏捷上昇 Lv2】
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うん、今更ながらSTRとVITとAGIに補正が入ってることに気付いたよ……。多分、これは装備品とかスキルとかなのかな。
そこで、装備とスキルを確認してみると、
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見習い向けの木の剣
STR +1
― 木の剣。切れないが、殴れる。
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見習い向けの木の盾
VIT +1
― 小型の木の盾。軽いが、そこまで頑丈ではない。
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【筋力上昇Lv2】
― スキルレベル×1%、STRが上昇する。(最低保障値[+1])
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【敏捷上昇Lv2】
― スキルレベル×1%、AGIが上昇する。(最低保障値[+1])
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うん、やっぱりそうみたい。
合計値が表示されて、[]のところの前半が装備分で、後半がスキル分みたいだね。それから初期装備に含まれるだろう、鎧代わりの服は補正がありませんでした。ちょっとしょんぼり。
ついでに他の所持品も確認することにして、所謂アイテムボックスであるストレージを呼び出してみる。
ストレージ中には、初心者用ポーションx10が入ってるほかは空欄で、全部で5マス×6列あるから、きっと30個分はアイテムを所持できるってことなのかな?
今回はドロップアイテムはないみたい。経験値いいみたいだし、このままうさぎさんと暫く戦う方向で。
そして2匹目のうさぎさん。あいかわらず名前は真っ赤。今回も先制攻撃をいれてからは、同じパターンみたい。ダッシュからの体当たりとジグザグに走ってからの体当たり。
これなら1匹目と同じで楽になるのかなって思ってたら、ダッシュから体当たりに移る寸前で横にジャンプ。そこから再度ジャンプして体当たり。これにはちょっとびっくりしたけど、何とか後ろに下がって回避しつつ、木剣で攻撃。ちょっとパターンが増えたけど、それからも何とか危なげなくHPバーを削りきって終了。
するとまたしてもレベルアップのインフォメーションが。
キャラクターのレベルが上がっていたので、今回もまたBPはAGIへ。SPはトータルで2かな?それからスキルも【剣】【盾】【筋力上昇】【敏捷上昇】の4つがまたしても上昇して、それぞれが3Lvになりました。
今回はそれに加えてドロップアイテムが出たみたいだけど、名前が???でよくわからなかった。見た目から恐らく毛皮っぽい感じはするんだけど。
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???
毛皮のような何か。
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この毛皮のような何かを収納できるかなと思って試してみたらなんか入っちゃった。やっぱりドロップアイテムでよかったみたい。名前がわからないのはちょっと疑問だけど、とりあえずはこのままで、次のうさぎさんでも倒そうかな。
討伐に戻って3匹目。2匹目みたいに途中でフェイントをはさむこともなく、実にあっさり終了して、ドロップはなし。インフォメーションは今回はなかった、残念。
そして4匹目。これはちょっと厄介だった。フェイントとかはなかったんだけど、途中でわたしが構えた盾の上になんと着地して、そこからさらにジャンプしての体当たりをしかけてきた。これにはちょっとヒヤッとしたけど何とかかわせて、後は注意しつつ盾で守ってからの攻撃と、かわしてからの攻撃で終了で、ドロップはなし。
続けて連続で5匹目のうさぎさん。これはフェイントもなにもなかったので、実にあっさりと終了。結構なれてきたかも。今度はなぞの毛皮のドロップとレベルアップのインフォメーション。かなり早いペースかも?
これでキャラクターのレベルは4になって、これもまた悩むこともなく即決でAGIに。
現状だと戦闘にかかわりそうで一番低いのがAGIなので、当分はAGIを上げる予定なのです。SPはトータルで3かな?
今回もスキルが上昇してたけど、やっぱり【剣】【盾】【筋力上昇】【敏捷上昇】の4つで、それぞれが4Lvになったのでした。
そのままうさぎさん狩りを続けようと、6匹目を探したんだけど、名前がちょっと薄くなってた。レベル差が縮まってきたのかな?とりあえずそのまま無難に6匹目を撃破、ドロップはまたなぞの毛皮。これで通算3枚目かな。
このまま狩り続けるかちょっと悩んだけど、どうせならもっと強いモンスターと戦ってみたくなって、場所を移動することに。何か忘れてるような気もするけど、きっと気のせいだよね。
そのまま南下していくと、途中で『コケッコ』っていう鶏みたいなモンスターを見かけたけど、名前の色は黄色だからスルー。うさぎさんよりも弱いってことだし、今のわたしは強敵を求めてるのです。
遠くに森みたいなものが見えてきたあたりで、また新しいモンスターが。名前は『ブラウンベア』で2mより大きいぐらいの熊さんです。名前も赤いし丁度よさそうってことで、さっそく挑戦!
この熊さんものんびりしたもので、襲ってくる気配はなかったから、こちらから先制の1発。
「えいっ」
最初から全力で胴体に一撃。でもぜんぜん効いてる様子はないっていうか、タイヤを殴ってる感じかも……。そこでこっちに気づいたのか、
「グルァァア!!」
2足で立ち上がって咆哮してきた。両手を振り上げた状態での咆哮は結構迫力があって、ちょっとびっくりして動きを止めちゃった。
そこに熊さんは振り上げた右腕を振り下ろしてくる。
「ッ!」
なんとか木盾で受けられたけど、ズシンとした衝撃が伝わってきて、たたらを踏んでしまう。そこに追撃の左腕が!
「っつぅ……」
これも辛うじて木盾が間に合ったけど、元々体勢を崩していたところに受けたために、衝撃によって後ろに倒れこんでしまった。すぐさま後ろにそのまま転がって距離をとって立ち上がるのと、目の前に追撃のボディープレスが。危なかったぁ~。
すぐに起き上がれないみたいだし、今がチャンスだよね。そのまま熊さんの右側面に回りこんで胴体に木剣を振り下ろす。う~ん、やっぱり感触が硬い……。
熊さんのほうもやられてばっかりはいないと、4足に立ち上がって、振り向きながら左腕で薙いでくる。でも、振り向き始めが見えてたんだよね。
後ろに下がってかわした後に、素早く踏み込んで今度は左側面に一撃。熊さんは今度は右腕で薙ぎながら2足で立ち上がっちゃった。
いったん距離をとって、仕切りなおしかな。わたしのほうは木盾でガードしたにもかかわらずHPバーが3割ぐらい飛ばされてた。これじゃまともに喰らったら1発で死亡するかも?熊さんのほうはまだ1割も削れてないみたい、先は長そう・・・・・。
これぞ強敵!って感じで、燃えてくるよね!きっとわたしの顔には笑みが浮かんでるんだろうなぁ……。
熊さんのほうはまた両腕を振り上げてる。ってことはきっと咆哮からの2連打かな?
「グルァァア!!」
予想通りの咆哮から、身体をひねって右腕で薙ぎ払いにくる。残念ながら、熊さん、その攻撃は予想通りなのだ。わたしは全速力で熊さんに接近して高く伸ばされた右腕の下を潜りながら、胴体へ横薙ぎに1発。そのまま後ろに抜けると、熊さんの腕はそのまま空振り。ついでにわたしはがら空きの背中にもう1発。
「グゥウ」
今回のは結構きいたみたい。熊さんがちょっとよろめいてる。追撃といきたいけど念のためにいったん距離を置いとこうかな。1発あたったら即死するかもしれないから、できるだけリスクは減らさないと。どうやらそれが正解だったみたいで、熊さんは空振りした右腕で裏拳みたいに腕を薙ぎながら振り向いた。追撃してたら多分吹き飛ばされてたかも。
それから暫く、ヒット&アウェイで熊さんの腕をよけては攻撃を繰り返して、何とか熊さんのHPバーを残り1割まで削ったけど、もう木剣はぼろぼろで、むしろよく今まで持ったっていう状態で、木盾のほうは最初2回受けた時でお察しくださいっていう感じ。
武器が壊れて素手になるのだけは何とかしたいから、次で決めたいんだよね。もうぼろぼろで役に立ちそうにもない木盾を投げ捨てて木剣を両手で握りこむ。熊さんのほうもどうやら次で決めたいみたいで、2足でたって両腕を真上に振りかぶってるから、両手でのたたきつけに全力を出す感じなのかな?
その状態でお互いにらみ合って、次の瞬間お互いに動き出した。向こうは予想通り思いっきり振りかぶってから両腕でのたたきつけ。それに対してわたしは全力で懐に踏み込んでいく。
全力で木剣を横薙ぎにたたきつけながら、熊の横を抜けていく。ついでズドンと、地面が激しく打ち付けられる音。
両腕を地面に打ちつけた状態で熊さんは少しの間硬直してたけど、ゆっくりとその身体が地面に倒れていった。
「ふぅ~……」
長かった戦いがようやく終わって、思わず長い息を吐き出しました。右手を見ると木剣は柄しか残ってなかった。最後の一撃で粉々に砕けちゃったのかな……。もう少し長引いてたらかなり危なかったかも……。
熊さんがが倒れたところを見てみると、
「うわ、おっきい」
相変わらず???でよくわからないけど、おっきな毛皮が。きっとさっきの熊さんの毛皮だよね。
それからレベルアップのインフォメーションも。これでレベルは5Lv、BPはやっぱりAGIで、SPはトータルで4かな。
それからスキルの方なんだけど、やっぱりいつも通り【剣】【盾】【筋力上昇】【敏捷上昇】の4つが上昇したほかに、今回はなんと【鎧】が上昇したのです!今まで上がってなかったのに今回あがった、ってことはダメージを受けたから、ってことなのかな?
それにそれにキャラクターは1レベル分だけど、スキルがなんと2レベル分も上昇してたり!これはそれだけの激戦だったってことなのか、それとも単純に熊さんが強かったからたくさんあがったのか。きっと両方かな?そこで改めてステータスを確認してみることに。
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雪花 Lv5
種族:ヒューマン
職業:ファイター
-ステータス-
STR: 8[+1, +1]
VIT: 7[+1, +0]
INT: 3
DEX: 3
AGI: 8[+0, +1]
-スキル-
【剣 Lv6】【盾 Lv6】【鎧 Lv3】【神聖魔法 Lv1】【筋力上昇 Lv6】【敏捷上昇 Lv6】
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さっきの戦いで減ったHPバーを【神聖魔法】の初期スペルの【キュア】で回復することに。少し発動までに時間があるみたいだけど、何回か使って全回復です。……思えば今回が初の大ダメージで、ようやく使った感じだよね。もしかしてこのスキル、いらなかった……?
それからそれから何よりも今回の戦いで大きかったのは、【盾】のアーツを入手することができたのです!
……うん、というより上昇したスキルを確認していたらアーツの項目が増えてたから気づいたんだけどね……。とりあえずそれの説明も確認しなきゃ。
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アーツ【盾】:タウント
― 対象を挑発してヘイトを上昇させ、注意をひきつける。
装備制限:なし
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挑発スキルだよね。パーティとかで便利そうかも。ログを確認してみたら【盾】が5Lvになったことで習得したみたい。【鎧】にもあるのかな?
この熊さん、結構経験値がいいみたいだからこのまま続けたいけど、木剣がダメで木盾もダメならいったん帰るしかないよね、ちょっと残念。この壊れたのは両方ともストレージに放り込んでおけばいいかな。
そんなことを思ってたら、左上のほうに何か光るアイコンが出てる。えっと、何だろう。ウィスパーの……許可申請……?
「やばい、忘れてた……」
そういえばログインしたら、ウィスパーで連絡とろうってなっちゃんと話してたのすっかり忘れてたよ……。っていうか、通知来たのがゲーム始まって少ししてからで、えっと今は13時過ぎてるから、ゲーム始めてから3時間過ぎ、通知を放置してるほうも同じぐらい……。これはやばい、結構怒ってそうな気がする……。冷や汗が止まらないけど、ここは出るしかないよね。早速許可をして恐る恐るチャットを送ってみることに。
「もしもし、なっちゃん……?ごめんね、その遅くなっちゃって」
『もう!遅いっていうか遅すぎだよ!どうせ戦闘に夢中になって忘れてたんでしょ?まぁ予想通りなんだけど』
うん、ばれてる。っていうか、予想通りだったのね……。
「あはは、面目ないデス。わたしのほうは、これから一度街に戻ろうと思ってるんだけど、なっちゃんのほうは?」
『そうなの?なら丁度いいかも!こっちも今丁度街に戻ってきてるから、一度合流しよ!』
それから集合場所を決めて、ウィスパーは終了。ついでにいろいろきいたりしようかと思ったんだけど、ついてから詳しくきくからって言われちゃった。なっちゃんはもう街にいるっていったし、少し急いで戻らなきゃ。