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18.主と都のお話

「――あわわわ、わ、わしは食べても、お、美味しくないぞい」


 ショコラに案内されて荒野をひたすら進んできてみれば、1m越えのでっかいサソリさんに今にも襲われそうな小さな人が……あれ?人じゃなくて動物?


 見た感じなんだろう、1mぐらいの小人サイズで、2足歩行で歩く、白いひげおひげの生えた……モグラ?ほぇ~、モグラってしゃべれるんだねぇ……。


「きゅぅぴっ!」

「ぁいたっ。そうだった、ぼーっとしてる場合じゃなかったね」

「きゅぴっ!」


 ちょっとトリップしてたけど、ショコラのおかげで目的を思い出せました。というか、そんなことをしてる間に尻尾が狙いを定めて今にも襲い掛かりそう!


「ひぇぇぇ~、お、お助けぇ~」

「せいやっ!それから、【タウント】!」

「きゅっぴっぴ!」


 何とか振り下ろされる前に横から攻撃を当てることに成功。ただ、ガギンってものすごく固い感触が……。これ、またすぐにユリさんにメンテしてもらうことになりそうだよ……。おっと、ついでに【タウント】でターゲットを取ることも忘れずに。ショコラのほうも尻尾にしっかりと【ウィンドランス】を当ててはじいてて、グッジョブです。


「お爺さん、大丈夫?ちゃちゃっと処理しちゃうから、ちょっと離れててね」

「きゅぴ!」

「お、おおう、天の助けじゃぁ。わ、わかったぞい。じゃが、あやつはこの辺の主じゃぁ。き、気を付けるんじゃぞい」

「きゅっぴぴ!」


 さて、お爺さんが離れたところで改めて敵さんに向き直る。急な乱入で向こうもちょっと警戒してるみたいで、手出しされなかったのはちょっとラッキーだったかも。


 この1m越えのおっきなサソリさん。名前は【ロックスコルッピン】っていうみたいで、背中側っていうか外殻が岩でおおわれてます。ただし、名前に【スコルッピン】ってついてる通り、やっぱりデフォルメ調で全体的に丸みを帯びてる。後はもう一つ最大の特徴があって、お顔のところになんとギターを持ってます!それと、地味にお顔にサングラスもかけてたり……。

 さっきの両手剣で足を斬りつけてみたけど、岩でおおわれてるだけはあって斬撃は無理そう。こういう時に打撃武器のハンマーとかあったら便利そうだよね。

 幸いなことにショコラの魔法は結構効いてるみたいなので、私のほうは敵を引き付けることに集中する方向で。


「よし、ショコラ。わたしが惹きつけるから、全力でぶっぱなしてやりなさい」

「きゅぴっ!」


 びしっとポーズをするショコラに火力は任せちゃって、さくっと突撃しちゃいましょう!


「せいっ!」


 両手剣から片手剣と盾に装備はチェンジ。ハサミとか足の関節部を狙って切り付けてみるけど、関節部まで岩みたいにかっちかちなんだけど……。


「キシャァ!キシャシャ!」


 ハサミでパンチをしてくるけど、しっかりガード。追撃とかばかりに盾を叩きつけてあげると、剣で斬ってるよりもちょっと聞いてるみたい。うん、盾は武器だったね。


「きゅっぴっぴ!」

「えいやっ!」


 ショコラの【ウィンドランス】が命中すると、結構ダメージがあるみたいで簡単に怯んでくれるので、隙をついて頭に盾で突撃です!


「キシャァ!キシャァ!」


 ぶつかった衝撃でさらに怯んだみたいだけど、すぐに持ち直して両方のハサミで挟み込んでくる。とはいえ、これはわかりきってる攻撃なので素早く飛んで躱した後に、ジャンプの勢いもつけて再度頭に盾を叩きつけてっと。


 着地と同時に素早く距離を取ると、今度は何やら魔法を打ってくるみたいで、サソリさんの頭の上に岩の球が浮かんでます。多分【土魔法】の最初のスペルの【ロックボール】かな?


「キシャシャ……。キシャ――」

「――きゅっぴ!」

「ナイス、ショコラ!」


 詠唱が終わるかどうかの絶妙のタイミングでショコラの【ウィンドランス】がサソリさんの胴体を直撃です。今の攻撃で大体6割ぐらい削れた感じかな?ということは――


「ギシャァァ!!!!キシャシャ!」


 やっぱり狂暴化するみたいです。目立った変更点は……岩が集まってきて尻尾がおっきなメイスになっちゃった。それはいいんだけど、変化が終わった後にはさみを振り上げたりしてポーズをとってるのはどうなんでしょうか……。


「……ショコラ、やっちゃいなさい」

「……キュピ」

「ギシャァァァ!!!!」


 こんな絶好の機会を逃すのももったいないので、ひたすらショコラに魔法を打ってもらって。そのままあっさりとサソリさんは沈んでいきました。……なんというかちょっと何とも言えない感じがすごいね。ショコラのほうもちょっと微妙なお顔をしてます。


「あんなのもいるんだねぇ」

「きゅぅぴぃ~」


 この【ロックスコルッピン】、岩を纏っているだけあって防御力がかなり上がってるみたいなんだけど、その分動きの遅さは相変わらず。おまけに大ぶりの攻撃をした後、ちょっとポーズをとったりすることがあって。そして最後はごらんの通りというありさまなんだけど、ボスというより珍キャラって感じな気がする。


「あいや、あやつを倒してしまうとはのう……。おかげさまで助かったぞい」

「あ、お爺さん。無事だったんだね」


 離れたところで様子をうかがってたモグラのお爺さんが戻ってきました。どうやらちゃんと無事みたいで、よかったよかった。


「ほんに感謝感謝じゃぁ。何かお礼をせねばならんのう」

「いえいえ、困ったときはお互い様だから、気にしないで大丈夫だよ」

「きゅぴっ!」

「そういわれても命の恩人じゃからのう……。そうじゃ!見るからに旅をしておるんじゃろう?よければ我が家でもてなさせておくれ」


 そういってぜひにぜひにといってくれるお爺さん。ここは御呼ばれしちゃおうかな?ショコラももてなしと聞いて、お目々がきらきらしちゃってるもん。


「それなら、ちょっとお呼ばれしちゃいます」

「期待してくれていいぞい。おっと、自己紹介がまだじゃったのう。わしは土の精霊に連なるもので、タルピ・グラン。みなからはタル爺と呼ばれておるぞい」

「どうもご丁寧に。わたしは雪華、みんなからはユキって呼ばれてます。後この子はポテリスのショコラ」

「きゅぴっ!」

「おお、ユキにショコラじゃな。では、改めて案内するぞい」


 そういって歩き出すタル爺さんを先頭に、のんびりとその場を後にするのでした。というか、土の精霊ってもしかして結構凄いモグラさん……? あ、ちなみにこの方、NPCみたい。名前の表示が緑色なんだよね、今更気づいた感じはあるけども……。

 さておき、いったい何が待ってるんでしょう。


○●○●○


「うむ、到着したぞい。ここが我ら土の精に名を連ねる土竜族の都アスレイじゃぁ。歓迎するぞい、かわいらしい旅人たち」

「きゅぷぁ~……」


 そうしてタル爺さんに案内されてきた場所は、洞穴(?)の中にありました。


 荒野をタル爺さんの先導で進んでいくと、大きな岩が転がってる場所に出てきて、その中の2つ向かい合った大岩の向かい合わせの側面に穴があいてたんです。それでその洞穴を進んでいった先は、なんと地底湖になってたんだけども、ところどこに木々が生えていたり、畑があったりと緑豊かなのと、家畜のような1動物たちがのんびり過ごしてたり。またあちらこちらに1mぐらいの大きなキノコ生えていて、扉が付いているところから、この洞穴に住む住人達のお家になってるみたいです。それから、地底湖の中心には光り輝く実をつけた1本の大きな木が生えてます。


 流石に荒野にある洞穴の先がこんなことになっていたら、誰だってびっくりすると思うんだよね。ショコラなんて口をあんぐりとあけちゃって、ふさがらなくなってるみたいだし。


「……ここ、洞穴ですよね?動物さんもいるし緑いっぱいだしで、とてもそんな感じしないんだけど……」

「うむ、初めて来る者は皆そのような反応をするのじゃよ。洞穴に違いないのじゃが、一つは地底湖の中央に大木があるじゃろう?あの木のおかげで、この辺りは比較的植物が育ちやすい土地になっておったんじゃよ」


 なんでも湖中央の大木は、精霊樹とか呼ばれるものに入るらしくて、そのおかげで周辺環境が非常に豊かになってたんだそうです。それから、たまたまこの土地を土竜族のご先祖さまたちが発見して、移り住んでいろいろ開拓していった結果、今の豊かな都になったんだとか。


「きゅぴぃ~」

「うんうん。みんなすごいんだね~」

「ふぉっふぉっふぉ。そういってもらえるとうれしい限りじゃぁ。せっかくじゃから、いろいろ見て回ってみようかの?ちなみに、それぞれの体験ツアーもできるぞい」

「ぜひお願いします!」

「きゅっぴ!」


 それから、タル爺さんの案内でアスレイを見て回ることに。あちらこちらでタル爺さんと同じようなもぐらの見た目の小人さんが仕事をしてます。


 最初に案内されたのは農場でした。結構現実世界と同じようなお野菜がいっぱい見たいです。ただ、どれもサイズが1m越えというちょっとお化けお野菜なんだけどね。ここでは、採れたて新鮮なお野菜をいただいちゃいました。自然の恵みって感じでとっても美味しくて、ショコラもすごいもぐもぐしてて、ほっぺたがぱんぱんになっちゃってた。


 次は併設されてる牧場で豚さんや牛さん、羊さんを見て回りました。こっちも全体的に1mぐらいで、丁度もぐら人さんと同じぐらいのサイズです。それから、もぐらさんたちの足代わりらしい1mぐらいのミニダチョウさんに、長い毛におおわれたカバさんみたいな子もいました。ショコラもすぐに仲良くなったみたいで、動物さんたちと鬼ごっこしたりして遊んでました。


 それから、街の中央の広場に並ぶお店とかを見学させてもらったり。なんと鍛冶場もあるそうで、採掘された鉱石なんかを日用品とかに加工してるんだそうです。思えばここって洞穴なんだよね。鉱脈とかもあるそうで、掘りに行ってる人がいるっていうのを聞きました。そこで思い出して、鉱石が欲しいっていう話をしたら、後で採掘を教えてもらえることになったんだ。最初はいくつか分けてくれるって話だったんだけど、どうせならってことでこれで採掘指導になったんです。ともあれ、これでユリさんへのお土産はばっちりだよね。


 最後に訪れたのが地底湖です。真っ青でとっても綺麗な上に、すっごい透明度が高くて泳いでるお魚さんとか蟹さんとかが丸見えでした。たまたま漁をしてるもぐら人さんがいて、タル爺さんのはからいで、獲れたて新鮮のお魚をその場で捌いていただいちゃいました。とってもとっても美味しかった~。ショコラもあまりの美味しさにふにゃぁってなってました。

 後、間近で見る精霊樹さんはとっても綺麗でした。灰熊さんのところの大木と比べると高さが低い代わりに、ものすごく太い感じでした。後は、あちこちに生ってる光る実がとっても幻想的です。


 それから、わたしたちの歓迎パーティとかもやってもらっちゃったんです!なんでもタル爺さんを助けてくれた恩人だとかってことで、それはもう盛大に。ここに住む人々はどの人もいい人ばっかりで、歌って踊っての大盛り上がり。ショコラも盛大にはしゃぎまくってます。


 わたしもちょっとはしゃぎすぎちゃって、その辺でお休み中です。すると、そこにタル爺さんがやってきて、


「どうじゃい、この街とここの人々は。とってもいい人ばっかりじゃろう」

「ほんとに、とってもいい街だと思うよ。美味しいものはいっぱいあるし、みんな親切だもん」

「そうじゃろう、そうじゃろう。我ら土竜族はのんびりおおらかでなぁ。皆、気のいい奴らばかりなのじゃぁ」


 その辺でごろんと横になってる人たちや、コップ片手に肩を組んで歌ってる人たち。中心で踊ってる人たちなど。どの人たちもとってもいい笑顔です。まさか荒野の下にこんな所があるなんて、ほんとにびっくりだよね。


「きゅぷぃ~」

「おかえり、ショコラ。楽しかった……って、寝ちゃってる……」

「踊り疲れたんじゃなぁ」


 ふらふらっと戻ってきたかと思ったら、ショコラはそのままぽてっと寝っ転がって寝始めちゃった。街を見て回ってるときも凄いはしゃいでたし、その上踊りまわってたからだいぶ疲れちゃったみたい。


「寝顔が笑っちゃってるから、楽しい夢でもみてるのかな」

「そうだとええのう。だいぶ楽しそうじゃったからなぁ」

「ふふ、おやすみ~、ショコラ」


 床じゃかわいそうなので、抱っこしてあげて。本当気持ちよさそうに寝てます。


「……あっ!」

「なんじゃぁ、そんな大声をあげて」


 ショコラの寝顔で思い出して恐る恐る時計を見てみると……。うわ、もう深夜じゃん!これは早くログアウトしないと明日がまた大変だよ~……。


「どうしたんじゃぁ、そんなに慌てて」

「ごめんなさい!急いで街に戻らなくちゃ!」

「街ってどこの街じゃぁ?都とはついているが、ここも街だぞい」


 タル爺さんの一言ではっとして、メニューを見てみると……。なんとここでもログアウトできるみたいです!あうぅ、慌てたのが馬鹿みたい。よくよく考えれば確かにここも街なわけで、セーフティエリアならログアウトできるっていう条件にぴったり当てはまってるよね……。


「あはは、そうでした……。と、盛り上がっててちょっと申し訳ないんだけど、一旦お休みしないといけないんだよね……」

「なんじゃぁ、そういうことかい。そういやユキらは旅人さんじゃったのう。それなら、次戻ってきた時にまたわしに声をかけてくれれば、すぐ採掘に行けるようにしておくぞい」

「あ、よろしくお願いします。それから、ありがとう」

「このぐらいお安い御用じゃぁ。それじゃ、しばしのお別れじゃなぁ。次に来るときをまっておるぞい」

「うん、それじゃまた来きます」


 というわけでタル爺さんにお別れの挨拶をして本日はログアウトです。危うく睡眠時間を削ってタートの街までダッシュするところだったけど、気付かせてもらえて本当にラッキーだったかも。採掘も教えてもらえるそうだし、いったいどんな鉱石がでてくるんでしょう。次回ログインがちょっと楽しみです。

お読みいただきありがとうございます。


暫く㏢~㏣程度での更新になりそうです。

申し訳ありませんがよろしくお願いします。


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