15.花園と確認のお話
「ほらほら、みんな一列にせいれーつ!」
座った状態でぱんぱんと手を叩きながら声をかけると、綺麗に目の前に一列に並んでくれるもふもふさんこと、モフッビとポテリスたち。ショコラはわたしの横で枝をふりふりしながらきゅぴきゅぴいって、みんなをきちんと並ばせるお手伝いをしてくれてます。
「はい、どうぞ。ゆっくり食べてね。それじゃお次の子~」
「きゅい~」
1匹に3個ずつのルモレの実をわたしてあげると、嬉しそうに鳴いてにっこりとしてくれたり、ちょこんっとお辞儀をしてくれたり、もうこの子たちかわいすぎだよ~。
ここは前回ショコラや、他のもふもふさんたちに案内された中にあった、背の低いお花が一面に咲いた広場です。
寄り道してもいいかな?って聞いたら、みんなもう帰るだけだから大丈夫ってことで、夜なんだけどピクニックに。灰熊さんのでる大木の広場から森に戻って、もふもふさんたちに案内を頼んでいろいろとお花が咲いているところを見て回ったんだよね。
その時の反応なんだけど、ユリさんとなっちゃんは、
「綺麗ねぇ~」
「ほわぁ~、すっごいねっ」
といった感じで、色とりどりのお花や、おっきなお花にそこで遊ぶもふもふさんたちを見て、感動したりほのぼのしたりしてました。
そしてドラコさんのほうは、
「ほう、このような場所があったのか……」
といって立ち尽くしたり、花々を目を細めて眺めていたり。
熊の森にこんな場所があることを3人とも知らなかったようで、それぞれ感動してたようでなかなか楽しんでもらえたみたい。
そして今、それぞれもふもふさんを抱っこしたりなでなでしたりして遊んでます。なっちゃんだけは、もふもふさんたちと一緒にごろごろしたりはしゃいでるんだけどね。
と、そうこうしてるうちに列もなくなったので、ようやく全部配り終えたみたいです。全部で30匹から40匹ぐらいはいたかもだけど、いっぱい買っといてよかったね。どの子も幸せそうに実をもぐもぐしてるもん。
しばらくすると食べ終えてだらーんてしてる子が増えてきたので、はちみつの瓶も2つ投下して、っと。
「ほら、みんなはちみつもあるよ~。仲良く食べなきゃ、めっ!だからね」
「きゅいきゅい!」
ぐでーんとしてた子たちも、我先に!って感じではちみつに群がってきたんだけど、わたしの一言で落ち着いたみたいで、みんな仲良くはちむつを分け合って舐めはじめて。うんうん、仲良しが一番だよね。……ショコラもちゃっかりみんなに混ざって舐めてるんだけど、まぁ楽しそうなのでいいかな?
それはそうと、丁度いい機会だしなっちゃんにショコラの成長に関してアドバイスをもらっちゃいましょう。スキル関連ずっと放置だもんね。
「なっちゃん、ちょっとショコラのことでアドバイスがほしいんだけど」
「ショコラっていうと魔法関連かにっ?何でも聞いてっ」
「実はSPが余ってて、何か魔法関連でとっといたほうがいいのとかあったら、って感じなんだよね」
「ふっふっふ、このあたしに任せなさいっ。まずこのゲームの魔法っていうのは――」
モフッビやポテリスと一緒にごろごろしてたなっちゃんだけど、魔法関連のアドバイスといった瞬間ガバッと跳ね起きて、目がきらきらしちゃってる。
そして始まったなっちゃんの魔法職講座です。結構細かく説明してくれたんだけど、細かすぎてよくわからない部分もあったり……。
結局のところわかったのは、魔法関連を強化してくれる【杖】と、【体力上昇】か【敏捷上昇】のどちらか、それと【鎧】あたりの防御系は抑えといたほうがいいって感じ。
後は、相手を弱体化させたりする【暗黒魔法】っていうのがあるそうなので、この辺をショコラには覚えてもらえばいいかなって思ったり。
【鎧】に関しては、従魔屋さんで見てみればいいかな?それとも最初からドラコさんに頼んじゃうのもありな気もする。
「なっちゃん、ありがとう。参考になったよ」
「それならよかったっ。また何かあったらどんどん聞いてね!モチはモッチャンっていうからねっ」
さてさて、これでショコラのほうは一段落です。というかなっちゃん、それを言うなら餅屋じゃないのかな……。
まぁ横に置いとくとして、ついでなので気になってたスキルの確認もしちゃいましょう。Ⅱに上がった上昇系と剣関連と盾、後は上がった従魔あたりざっくりチェックしとけば大丈夫かな。
まずは上昇系から。
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【筋力上昇Ⅱ Lv9】
― 10+(スキルレベル×1)%、STRが上昇する。(最低保障値[+1])
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こんな感じでした。敏捷も同じだったので、きっと進化前までの上昇分が加算されて算出って感じみたい。
お次は武器関連と盾なんだけど、こちらは説明が結構ざっくりしてたんだよね。
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【両手剣 Lv9】
― 両手剣使用可能。
両手剣使用時、対象に与えるダメージ上昇(スキルレベル×2%)
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両手剣がこんな感じで、片手剣はそこが置き換わっただけでした。
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【重盾 Lv7】
― 重盾装備可能。
ガード成功時、ダメージと衝撃を軽減(スキルレベル×5%)
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重盾はこんな感じ。元々盾で攻撃を受けると、大幅にダメージを軽減、または場合によっては無効化できるみたいなんだけども、それの効果が引きあがるって感じなのかな?後はノックバックし難くなるって感じみたいです。ちゃんと調べたら詳しくわかりそうなので、後で調べてみてもいいかも。
それからなんと!いつの間にかアーツが増えてました。効果から見ると、多分剣をマスターした前後ぐらいな気もしたり……。
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【スラッシュ】
― 素早く鋭い一撃で敵を攻撃する。
使用制限:刺突剣、短剣を除く剣
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こんな感じでした。ピンとこないんだけど、強い一撃を与えられるよーってことなのかな?そのうち使って試してみたいところだけど、きっと忘れそう……。
そして最後の従魔なんだけど、
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【従魔Ⅱ Lv1】
― モンスターを従えられる。
従魔数:1/2
― ショコラ
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何か変わってるかな~って思ったら!なんと、もう1匹従魔を増やせるようになってます!これだけでもスキルを確認した甲斐があった感じがするよね。追加の1匹もまったりと考えていきましょう。面白い子がいたらいいんだけどね。
とりあえずざっくりだけど確認が終わってよかったよ。今後はちゃんとその時その時に詳細を見るようにしましょう、うんうん。……いや、それが普通とかいわれそうだけどね。
それはともかくとして、もふもふさんたちははちみつも食べ終えたみたいで、あちらこちらでお腹を抱えてたり、寝転んでたり、お座りしてたり。中にはそのまま寝ちゃってる子もいるみたい。当然のごとくショコラもそうなんだけどね。それはそうと、結構お口とかお手々とかべたべたになっちゃってる子が多いみたい。お腹はまだしも背中とか尻尾にもついちゃってる子がいるんだけど、どうやったんだろう……。
う~ん、ベタベタのままだとちょっとあれな感じがするので、とりあえずみんなをきれいきれいにしちゃいましょう。ちょうどこの前小川がある広場もあったから、あそこに行けば万事解決するはず。とりあえずなっちゃんたちにも伝えたらあっさりおっけーだったので、もふもふさんたちを集めなきゃ。
「ほらほら、みんな起きて起きて。こっちに集合だよ~」
ぱんぱんって手をたたいて声をかけると、寝てた子もちゃんと起きだして、お目々をこすりこすりだけどもなんとかみんな集まってくれました。ちなみにショコラは普通に寝てます。首根っこをつかんでぷらーんぷらーんってさせても起きないので、いつも通り頭に乗せてっと。
「それじゃ、みんな移動するよー」
「きゅい~」
きゅいきゅい鳴きながら、ちょこちょこと後をついてきてくれるもふもふさんたちを先導しながら小川の広場まで。これはちょっとアヒルさんの気分がわかりそう。
「到着~。はちみつついちゃってる子は小川できれいにしましょうね~」
「きゅっ」
そのまま小川の近くまで行って、ベタベタになっちゃってる子を洗ってあげると、何匹かが真似して洗いっこし始めて。そのままどんどんエスカレートして、最後には水遊びになっちゃった。
尻尾やお手々で一生懸命水を掛け合ってるのがいれば、わたしたちの体を登って、小川に向かってダイブする子がいたり。はたまた、ぷかぷかと浮かんでるのがいたり。ちなみになっちゃんは一緒になって水を掛け合ったり、小川に向かって放ってあげたりして仲良く遊んでます。
仲間はずれもかわいそうなので、ずっと寝てたショコラをむにむにして起こしてあげた後、地面の上に降ろしてあげて。まだちょっと寝ぼけてるみたいで、お目々をこすりこすりしつつ、足元が少しふらふらしちゃってる。……あっ。
「ぎゅぴっ!」
バシャンと音を立てて水におっこっちゃった……。でも、そのおかげで完全に目が覚めたみたいで、みんなの輪の中に入って一緒に遊び始めてます。
「なんというか、学校というか幼稚園というか、そんな気分になってくるな」
「そうねぇ。園児と先生といったところかしらね」
「それをいうなら、なっちゃんが年の近いお姉さんで、他は近所の子供たちって感じじゃない?」
「……うむ、確かに。我らはさしずめ、公園でそれを見守るお年寄といったところか」
「そうね……。きっとこんな感じなのかしらね……」
ショコラも起こして遊びの輪に入ってったので、離れたところに座ってるドラコさんとユリさんのところにいったらしみじみとそんな会話が。とってもとってもほのぼの~って感じで和みます。
「ユキちゃんっ!ユキちゃんもこっちに来て遊ぼっ!それに、ユリさんとドラコさんもっ!」
これでお茶だったり縁側だったりがあったら、完全に老後って感じだなぁとか思ってたら、なっちゃんからのお呼びがかかっちゃった。
「お呼びか、皆行くか」
「ええ、精一杯遊んじゃいましょ」
それからみんなで、なっちゃんともふもふたちに合流して水遊びです。さっきまでの雰囲気はどこへやらって感じで、ユリさんもドラコさんも当然ながらわたしもだけど、物凄いはしゃぎまくっちゃった。
モフッビたちを放って突撃させたり、ポテリスと一緒に盛大に水をかけたり。また、もふもふさんたちを放って爆撃して、盛大な水しぶきを上げたりと、終わるころにはもうみんなびしょびしょな上に、へとへとになってました。VRだからすぐ乾くのと、このゲームにスタミナなんてパラメータはないから疲れて動けないとかないはずなんだけどね……。
それから少し休憩した後に、もふもふさんたちと別れて街の門まで帰還です。もふもふさんたちは森の出口までお見送りに来てくれて、一斉にお手々を振ってくれました。もうそれだけでまた来たくなっちゃう。みんなもそれぞれ従魔取ろうかなぁとかって言ってました。あのかわいさは反則だもんね……。
「いやー、なかなか面白い一日だったねっ」
「うむ、ホワイトベアが出たときはどうなるかと思ったが、倒してしまったものな」
「そうね……。綺麗な景色とかモフッビたちと遊んだりね」
「うんうん、楽しんでもらえたなら寄り道したかいがあったよ」
本当一時はどうなるかと思ったけど、どうやらピクニックも楽しんでもらえたみたいでよかった。そのまま少し雑談して、今回のパーティもここまで。
目的である灰熊さんの素材を使った装備品に関してだけど、ドラコさんが何か要望があったら言ってもらえれば対応するってことと、何もなければ勝手にやっちゃうってことだったので、とりあえずお任せしちゃいました。何か思いついて完成までに間に合いそうだったら、その分ちょっと弄ってもらえればいかなって感じ。
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「はふ~。今日もお疲れ様~ってね」
そのままログアウトして、現実世界の自分の部屋へリターンしてきました。……げっ、もう深夜じゃん……。明日は学校があるから、さっさと寝なきゃ。
そのまま明日の準備をして、ベッドに潜り込んで。そこでふと浮かんだんだけど、ログアウトしてるときの従魔って何をしてるんだろう。その辺りをふらふらしてるのか、それともやっぱりプレイヤーが入ってくるまで消えちゃうのか……。うーん、謎だよ……。でも一人ぼっちだったり、もし消えちゃったりするんだったらかわいそうだよね。何かそういう専用スペースとかあるのかな?
っとと、あんまり考えすぎてさらに寝る時間が遅くなったら大変だから、今日はこの辺でおやすみなさい。
お読みいただきありがとうございます。