表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/18

10.従魔と森と動物たちのお話

『それにしても、吹き飛ばされたときはちょっと焦っちゃったよ~。ユキちゃんなら大丈夫だと思ってるけどさ、流石に相手が悪かったかなって』

「……あはは、強くなるってわかってたんだけど、思ったより速くてちょっとびっくりしちゃったんだ。次はもう大丈夫だと思うよ」



 ログアウトして、現実世界のわたしの部屋。ちょっと硬くなった筋肉をほぐそうと軽くストレッチをして、そのままベッドでごろごろとしていたところに、なっちゃんからのお電話です。


 夜の森の動物さんから灰熊さんの戦闘を振り返り。灰熊さんとの対戦は次はもうちょっとうまくやれるはずだと思うんだよね。今回のは、結局のところ狂暴化をちょっと甘く見てたところがあったかも。強くなるよって言われてはいたけど、きっとそこまで変わったりしないんだろうな~っていう。ちょっと気を引き締め直さないとダメかもです。


『それはそうと、最後のほう両手剣もってたじゃん!あれなら最初から盾いらなかった?』

「あれは盾でガードしてもHPがごっそり削れちゃったからだよ。それならなくてもいいかなって」

『それでも、普通ならそんな選択しないって!まぁ、回復職を捕まえられなかったから、変則的な編成だったのもしょうがないんだけどね。こ・れ・は~、そのうち一人でやっちゃうかも?』

「……あはは、どうだろう」


 見事に図星で、ちょっと一人でやってみようかなとか思ってたりするので笑ってごまかすしかなかったり。

 攻撃をきちんと見極められてはいたから、倒せなくはないと思うんだけど、問題は咆哮だよね。前動作があるから、その間に後ろに回ったり、一撃を入れてキャンセルさせたり。それかいっそのことその時だけ盾を使うとかもありかも。これは後から聞いたんだけど、装備品をあらかじめ登録しておくことで、一瞬で切り替えられる補助機能があるんだって。予め説明読んでたのに見落としてました、反省……。ただこれで盾を装備しても、狂暴化したときの咆哮は防ぎきれないから、ショール以外に防具を確保したりする必要がありそうだけどね。


『それとあのポテリスの子、めっちゃかわいかったよねっ。森に返しちゃったんだね。めっちゃ懐いてたみたいだから、ペットにするのかなって思ってたのに~』

「うんうん、返すときなんてひしって指先つままれちゃったりして、もうめちゃくちゃかわいかったよ。……ってペット?」


 なんか気になる単語が、っていうかこうなんか引っかかってるんだけど、なんだっけ。えっと、ペットペットPET……。


「あー!【従魔】スキル!」

『うん、それでペットにするのかなって思ってたんだけど。……ってもしかして頭になかったの?』


 そうです、【従魔】スキルがありました!確か、このスキルで覚えられるアーツで、モンスターを仲間にできるんだよね。ただ、モンスターが仲間になってもいいよーって思ってくれないと成功しないそう。それには戦って倒す必要があったり、食べ物でつったり、一緒に遊んだりと、モンスターごとに条件が変わったりするみたいで、なかなか大変だったりするみたいなんだけどね。


「すっかり忘れてたよ……。泣く泣くお別れしたのに~」

『ユキちゃんらしいねっ。あれだけ懐いてたんだから、また会えると思うよっ。その時は、ちゃんと仲間にしてあげればいいんじゃない?』


 

 それからしばらく雑談をして、通話は終了。なっちゃんは少し休憩したらすぐに狩りに戻るみたい。なんでも、レベルで負けてたのがちょっとショックらしくて、負けてらんない!とかって燃えてました。

 わたしも暫くしたらまたログインして仲間にしこうかなって思ってはいたり。善は急げっていうもんね。とはいえ、今しばらくはだらりと休憩です。



○●○●○



 少し休んでからログインしようと思ってたんだけど、いろいろやってるうちに何だかんだでだいぶ遅くなっちゃって、慌ててログインです。宿題やったりご飯の準備をしたりとかしてたら、後はもうベッドに入ってお休みするだけっていうときに、こうですね、ピンと来たんです。……うん、忘れてたわけじゃないんだよ?

 まぁ、なんとかゲームが夜の間にログインできてよかったよかった。




 そして今、目の前には再びの熊の森です。来る途中にふと思いついて、中央広場の食材屋さんで果物も買ってきてます。従魔屋さんにもビスケット風の固形フードがあってちょっと悩んだんだけど、やっぱり果物のほうが喜んでくれるかもって思ったんだよね。どちらにしろ、森の動物さんたちが食べてくれるといいんだけど。

 お金のほうは、初期の所持金が丸々残っていたのでそれを利用です。すごい今更感があるけど、いろいろもらったり、なっちゃんが払ったりで全く使ってなかった上に、確認すらしてなかったんだよね……。初期のお金が1000で、単位はユン(y)みたい。

 果物のほうはなんだけど、ルモレの実っていう見た目はヘタ無しの黄色いプチトマトで、1個10yだったので50個ほど。食材屋のNPCのお姉さんが、森の動物さんにあげるって言ったら、勧めてくれたのがこれだったのです。

 比較になりそうなので覚えてるのが、初級赤ポーションで1個100yぐらいなんだけどね……。微妙なところだけど、ただの食べ物って考えたら、そこそこなのかも……?


 はてさて、早速ポテリスくん探しにいざ再びの夜の森へ!


 ……なんか忘れてる、気が……。って!【従魔】スキルをとるのを忘れてたよ。あぶないあぶない。SPを4ほど消費するみたいだけど、気にせずに取得。これで残りのSPは4になりました。


 では、改めて。待っててね、ポテリスくん!



○●○●○



「きゅぴ~」


 気合を入れて森に入ったまではよかったんだけど、案の定すぐにもふもふに襲撃されたまでは予想通りだった。森の前でわたわたしてたから集まってきちゃったのかな?

 それはともかくとして、そのどさくさに紛れてちゃっかりと頭の上に鎮座しているもふもふが一匹。


「もう気合を入れたのが馬鹿みたいだよ~。こんなすぐに見つかるなんて」


 襲撃されることまではわかってたから、しばらく歩いていれば来るかな~とか思ってはいたんだけど、流石にこれは早すぎる気がするんだよね……。

 そう、頭の上に鎮座しているのは件のポテリスくんです。入ってすぐにぽてっと頭の上に落っこちてきて、それを皮切りに他のもふもふに襲撃されるという感じで。おまけに頭の上に着地されたときに軽く目線を上げたら、おかえり!って感じでお手々を上げてたり。


「ま、いっか。ポテリスくん、わたしと契約して一緒に冒険しない?」

「きゅぴっ?きゅぴぴっ!」


 頭をぶんぶんしながらお手々をふりふりしてるんだけど、これは大丈夫ってことでいいんだよね。ではでは、【従魔】のアーツであるテイムの出番です。


 早速、頭上のポテリスくんを対象にして発動してみると、一瞬ふわりとポテリスくんが光って、インフォメーションがでてきました。ということは、これは成功なのかな。



------

モンスターのテイムに成功しました。次のモンスターが従魔に追加されます。

―ポテリス

※モンスターのステータスはメニューから確認することができます。


現在のあなたの従魔の数は1です。現在これ以上従魔を追加することはできません。


モンスターに名前を付けることができます。名前を入力してください。

------


 やっぱり成功であってたよ。それはともかくとして、名前の入力がいるみたいだけど、どうしよう。名前、名前……。


「まんじゅ、あいたっ」

「きゅぅぴぃ!きゅぴぴっ!」


 両方のお手々で額をぺしぺしと。ダメージはないけど地味に痛いというかなんというか。


「冗談、冗談だよ~。それじゃぁ、イエヤス。イエヤスはどう?」

「きゅぴぴ?きゅぴ?」

「意味?うーん、とっても偉い狸さんの名前、だったかな?」

「きゅぴっ!むきゅぅ!」


 またもぺしぺしとされちゃいました。灰熊さんとの戦闘中もずっとへばりついて寝てたぐらいだし、図太いという面ではぴったりだと思うんですよ。そういう問題じゃない?うん、そうだね……。


 うーん、いい名前かぁ……。


「……えっとね、ショコラ。これならどうかな?」

「きゅぴぴ?きゅぴっ!」


  お手々をふりふりして嬉しそう。どうやら気に入ってくれたみたい。名前のほうは、単純に色合いから連想したのがそれだったのです。後、わたしが好きなだけっていうのもあるんだけども。ともあれ何とか決まったので、これからこの子はショコラです。男の子だったら大事故だけど、ぺしぺしされないってことは大丈夫なんでしょう、多分……。

 ポテリスくんっていってたじゃないか、っていわれそうだけど、なんとな~く語呂がよかったんだよね……。


 それはさておき、ショコラのお手々をつまんで握手握手して、


「改めてよろしくね、ショコラ」

「きゅぴっ!」



○●○●○



 あっという間に森での用事が終わっちゃったので、せっかくなので森の中を散策することに。

 それとなんと!もふもふたちの襲撃なんだけど、ショコラにお願いしたら少し控えめになったのです!おかげで飛び込んでくるのは減ったんだよね。逆に、よじよじと登られたりとかへばりつかれたりするのがちょっと増えた気もするよ……。

 行先は全てショコラにお任せしてるんだけど、これが結構楽しかったり。勝手知ったる森の中とばかりに、あっちあっちみたいに頭上で指さして案内してくれるんだよね。とってもキュートです。いろいろ案内してくれたんだけど、これが綺麗な花が咲いてたりするところばかりを案内してくれるのです。


 スミレぐらいの色とりどりの小さなお花が咲いているお花畑だったり、かといえば今度はわたしと同じぐらいの背の高さの花が咲いてるところがあったり。はたまた、背は低いんだけどラフレシアみたいにおっきなお花がぽつぽつと咲いているところだったり。

 背が低いお花のところでは、もふもふさんが寝転がったりしてすごい気持ちよさそうにしたり、逆に背の高いほうではアトラクションのように飛んだり跳ねたりして遊んでて、見ていてすっごく和みます。

それから咲いてる花なんだけど、薔薇のようなんだけどひまわりみたいにまっすぐピンと立って咲いてたり、チューリップのようなんだけどお花の部分がわたしよりも大きかったり、はたまた一面の鈴蘭のお花畑かと思いきや、花の部分が桜の花びらみたいだったり。見たこともないお花ばっかりで、さすが不思議の世界!って感じです。後でなっちゃんたちにも教えてあげたらすごいよろこびそう。


 それから、持ってきたルモレの実なんだけど、小川の流れるちょっと開けた場所を見つけたときに、そこでみんなに配ったんだよね。これが結構好評だったみたいで、ついてきてたもふもふさんたちは、どの子も幸せそうにしてました。

 肝心のお味のほうなんだけど、最初噛んだ時に果汁がじゅわっと溢れてくるんだけど、それがレモンみたいにものすっごく酸っぱいんだよね……。ただ、すぐ後にそれまでの酸っぱさが嘘みたいな、さわやかな甘さがふわっと広がって、結構不思議な味わいです。ショコラとか周りのもふもふさんたちも、最初の酸っぱさにびっくりしたみたいで、目とかギュッとつぶって、口元なんてバッテンになってました。ただその後の甘さで、ふにゃぁってとろとろに蕩けた感じになってたんだ。

 それからはもう争奪戦みたいに、もっともっと!ってなってたんだけど、大体1匹当たり2個ぐらい上げたところでなくなっちゃったんだよね……。ごめんね、また持ってくるからねってなんとか宥めました。


 それから今度は、先ほどまでと一転して果物探しになったんだ。みんながそれぞれ好きなもののところを案内してくれて、いろいろな果物を食べ歩きです。

 収穫したものは、自分で食べたり周りのもふもふさんたちに配ったり。そこでもいろいろ変わったものを見つけることができて、楽しくもありおいしくもあり。例えば、大きさがソフトボールぐらいのイチゴは、とっても甘くて周りのもふもふさんとか、ショコラも凄い顔がとろけてました。

 それから、見た目がどうみてもマスカットなんだけど、食べるとほのかな甘みと口の中でしゅわしゅわと炭酸みたいにはじけるものあったんだ。こちらは、もふもふさんたちの中でもびっくりした子がいたみたいで、目をぱちくりさせながら両手をぱたぱたさせてたのもいました。ちなみにショコラもその中の1匹だったり。


 そんな感じで楽しいひと時を過ごして、街に戻ってログアウトしたんだけど、現実に戻って時計を見たら日付が変わる頃でした、ちょっと反省……。

 それはさておき、ショコラも仲間になってくれたことだし、明日はもっと面白いことがあるといいなと思いつつ、今日のところは夢の中へ。

お読みいただきありがとうございます。


名前考えるのってとても難しいですね。


次回更新は日曜辺りを予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ