三人の魔法使い
「はははっ!もうどうにでもなれ!」
今、彼こと青木圭は学校で大暴れしている。
発端は少し時を遡り―――――――ー。
「どうも。青木です。よろしくお願いします。」
無難な挨拶。
これでよし。青年はそう思った。
自己紹介終了。
もともと、教師の真似事なんて死んでもやりたくなかった彼にとってはさぞ楽しくないだろう。
教える事は魔法の制御について。
青木は今、新入生へ魔法の基本を確認していた。
「魔術師と魔法使いの違いは分かりますね?」
基本中の基本をまず問う。
「じゃあ、そこの君。いいかな?」
表向きはにこやかな表情。しかし、中は真っ黒。
「魔術師と魔法使いの違いはいわば才能の違いです。魔術は誰でも使えますが魔法は才能のあるも…
さえぎる。
「はい。よく出来ました。満点です」
あくまで、にこやかな表情。
そう、魔術師なんて世に腐るほどいるが、魔法使いはそうはいない。
「で、話を戻しますが、力の制御は魔法の最初の壁と言われる程難しいです」
「そそ、難しいのよね~制御って」
「ちょっと、オーデ、声が大きいよ」
小声で注意を促す少年、彼もまた魔法使いとしての才能はあるようだ。
「まず、お手本を見せましょう」
あの青木は自分が破壊系の能力だとは言わずにいた。
「魔法使用中に物を触ると自分の能力を相手に見せることになります。気をつけましょう」
イライラ、イライラ。
青木は気になっていた。自分と同等、もしくはそれ以上の魔法使いが2人この場にいることが。
誰だ? あの、冒頭にしゃしゃり出てきた奴か?
仮に奴が一人だったとしよう。それでは後一人は誰だ?
完全に気配を断ち力の痕跡すらもわからない。
「まず、物を掴み、それから魔法を使います」
もう、我慢の限界だ。
代は基本、短気なのである。
「先生と戦いたいものは手を上げて下さい」
いきなりで、皆驚いている。
「は~い。一番ゲット」
「ちょっとオーデ、いいの?」
「大丈夫だって、実戦経験は多いほうがいいのだよ」
問題なく入学できてご機嫌なオーデ。
「じゃぁ、僕もヤッテみよっかな」
今気づいた、バイルがそこに居た。
さっきとは違い気配も垂れ流し状態のバイル。
「ストーキングしてたんだけど、青木と戦えるなら満足だよ」
バイルは誰かを気に入りつきまとっている。
気に入られた者は不幸だろう。
「じゃあ、グラウンドに出て下さい」
最後まで穏やかな表情を貫く代。ここまでくると尊敬してしまう。
二名、席を立ちそのまま昇降口まで階段を降りてゆく。
無言。緊張。代の傷はまだ塞がっていない。
「僕からの提案なんだけどいいかな?」
バイルが無言をあっさり壊し話す。
「三人で乱闘しようよ。それが一番公平だよ」
公平かどうかはさておき、代とどちらかが一人ずつ戦うのは代が二戦することになる。
「私は別に構わないよ」
オーデは同意する。
「そうだな、僕も別に構わない」
露骨にニヤニヤするバイル。
グラウンド到着、それは、乱闘の開始の合図でもあった。