あぁ、もう、笑うしかない
――――突然ですが、今、空を舞っています。
俗に言う胴上げ、それを今、体験している。
「よかったっ!わざと追い詰めるような聞き方してよかったっ!怖い声出してよかったっ!」
空はは涙目…というか泣きながら話している。一応、確認しておくが、ここは公園、最初来たときは真昼間だったが今は夕方4時すぎ。
つくづく思った、夕方で良かったと……。なんせ大声で泣いてるんだからな。
と、まあ私自身、客観的に見れば冷静そうに見えるかもしれないが、かなり戸惑っている。
思考を巡らせている間にも、胴上げは続く。…これ結構楽しい。
もともとジェットコースター好きということもあってか、落ちる瞬間のあの感じが…癖になる。
――――――とはいえ、いつまでもこのままという訳にはいかない。
「ちょ、ちょっとお、降ろしてよ」
体が浮き、沈みを繰り返しているせいで言葉が途切れ途切れになった。
しかし、意は伝わっただろう。
「よいしょっと!」
声は届いていたようで、私の申し出はすんなり通った。
マッチョ…いや徹は私が空中から落下したのを巧みに抱え地面に下ろす。
「ほら、立てるか?」
手を差し出す久。
久…お前はいつも紳士だな。
モテる理由は顔だけではなかったんだな。
「空、説明して貰えるかな?」
今も、泣いている宮藤に頼むのは申し訳なかったが、マッチョと紳士はさっきの息を切らしている。何時間胴上げしてたっけ。
とにもかくにも、宮藤に話を聞かねば進まないのだから、困ったものだ。
―――――10分後
完全に泣き止んだ空に再度問うてみる。
「空、私に隠れて何をやっていたのか教えてくれ」
安直だがこれ以上の言葉は見つからなかった。
言いにくそうな空。
そうだ、もう空も泣き止んだと同時に体力バカ二人も正常運転になっている。
こちらにも話を振っておこう。
――――つまりこういう事らしい。
「自分の本心から望んで口に出さないとその理図高校には行けないらしい」
あくまで、噂だけど、と、空が言った。
しかし、空が言っていた本心がどうのこうのーというのは気になった。
「本心で望むってどういうこと?」
「そのまんまの意味だよ。本当に理図高に行きたいと望んでそのことを声に出す。それだけ」
テヘッとさっきとは打って変わって笑う空、ああ、この笑顔を見ただけでもうどうでも良くなってくる。そんな笑顔。昔から変わっちゃいない。
「あ、あの、いいでしょうか?」
不意に後ろから声がした。
「あっ…」
声を出してしまった。
そこには、ここまで案内してくれた新島さんが立っていた。
「あ、あのもういいでしょうか?」
意味は簡単に推測できた。
帰ってもいいか?という意味だろう。
それを言うために律儀に待っていたのか…いい子だな。素直にそう感じた。
ここに居る全員そう思ったことだろう。
「そういえば岬は?」
疑問を口に出した。
「ああ、岬なら、家の用事があるからってお前以外に言って帰って行ったぞ。」
聞いてないのだが…もしかして私、嫌われてる?
ああ、そうか、私は…嫌われていたのか。
昔は良かった。一緒にお風呂に入ったり、覚えたての魔法陣をかいてみたり…そういや今年もチョコくれたな。
よほど急いでいたのだろう。なんせ、学校の先輩から告白された時も真っ先に私に相談してきたくらいだから。
そうに違いない。幼馴染だしな、嫌いな筈がない。
こうやってストーカーが生まれていくのかなぁ。
気持ちが少しだけ分かった。
「送っていくよ」
そんな事を脳内で考えていても現実での話は進行する。
言ったのは久、新島さんは遠慮してたけど、家の方角も同じということもあり送って行くことになったようだ。
時間はちょうど午後4時40分
今日のところはこれで解散で、また、明日ここに集まる事になった。
私は携帯での連絡でいいと言ったが宮藤曰く
「大事なことは直に話したほうがいい」
らしい。
明日か…。
――――暇だったので久々に深夜徘徊をしてみることにしよう。
深夜徘徊なら1時が一番いい時間。
何がいいかというと面白そうな奴が一番多い時間でもあるからだ。
長い長い夜の一部、ワクワクする。
深夜徘徊はホントワクワクする。
深夜徘徊ドキドキしますよね?
でも、職質は怖いです。