僕はいつまでも変われない
ポイッ カランカラン----静止。
ポイ捨て、空き缶を捨てたのはチャラついた、というか盛りのついた男達。
見てて嫌になるね、ああいう奴ら気持ち悪い。というか恥ずかしいね。同じ人間として。
見てみぬふりするのも癪だ。一つ警告をしてやろう。
「ねぇ君たち、僕に謝ってくれるかな?謝れば許してあげてもいいけど、どうする?」
素直に謝る確率は2分の1、いやほぼ0か。
「あァ、なに、お前?喧嘩売ってんのかァ!おい!」
誰しも、ゴキブリや蛾が羽ばたく音を聞きたくない。
今はそんな気持ち。
「喧嘩...かぁ一方的な暴力って喧嘩って言うのかな?」
ゴミ虫達はヘラヘラ笑っている。
「じゃあ、始めようか、その喧嘩?」
「ウゴロブェバァ」「ブハッウゴバァァ!」
「うひゃひゃひゃ」
「血を流す者と返り血を浴びる者、僕、青木くんはどっちでしょう?」
いくら路地裏だとはいえ派手にやりすぎた。
いやぁもぅこまったさんだよ。
さっさと、ここから離れよっと、でも、
「ヘヘへ」
楽しかったなあ。
ブルブルル
「ん?」
尻ポケットに入れていた携帯が震える。
「あ、ヨッピー、こんな時間になに用?」
相手はヨッピー...吉田圭、時間はもう12時を回りに回って2時だ。
「今から、簡単な仕事、頼めるか?仕事の内容の割に報酬は高いぞ?」
「で?仕事のその仕事の内容って何さ?」
「不良っぽい奴を3人程殺す、たったそれだけで五百万ほど、な?割がいいだろ?」
「それと、金は山分けな、俺と雫で。」
「ラッキー、たまにはいいことするのも悪くなかったね」
つくづく運がいい男だな、僕は。
「?、なんの事かは知らないが終わったら、後で連絡先送るからそこにかけとけよ。じゃあな」
ツーーーー
この会話も一方的だったな。 今回はやられた方だけど。
早くも連絡先が送られてきた。
「仕事終了っと!」
「僕、青木代は、若干23歳の男の子、いやもう男の子っていう年齢じゃないか」世では男性と呼ばれる。
ちなみに僕は童貞だよ?生殖行為なんて気持ち悪いだけだし。
ブルルルルルル
ん?知らない番号からだ。とりあえず出てみるか。
「はい、青木です」
「........」
会話こそないけれど勘でわかる。
「場所はここから近いなあ」
頭で考えていた事をつい口に出してしまう。
ツーーーーー
たった、10秒程の会話だったが相手の微かな心の声だけは聞こえた気がした。
「助けて....」
そう聞こえた気がした。
まあ、今日は気分もいいし、たまには人助けもやってみよっかなぁ。
「タダ働きは神様への親孝行っと」
昔、誰かがそういう感じのことを言っていたのを思い出した。
「じゃあ、悪党を懲らしめてみよっと」
いや、僕も悪党か。これじゃまるで共食いみたいだ。
どんな味だろうな...
本当は悪党云々よりただ刺激が欲しかっただけなのかもしれない。未知のものへの。
-------------「到着っと」
わりと大きめの灰色の建物、廃墟。
建物から、生気が感じられない。そんな所。
勘がいい奴はもう分かるかもしれないけど、ここに誰か、監禁されている可能性があるんだよねー。
あくまで、自分の勘、断言はできなんだけど。
「さっそく、入ってみることにしよっと、こういう役はヨッピーのほうが似合うのになー」
ブルルルルルル
...噂をしていたらヨッピーから。ヨッピーさん...もう何用ですか。
「なにか用?」
自分でわかる、僕、今少し機嫌悪いよ?
「?用も何もお前連絡したか?依頼主に」
「.....テヘッ」
「.........」
「ほらっ僕って昔から憶えるの苦手だったでしょ?だからさ。けっして完全に忘れてたって訳じゃないんだからね!」
「.......言い訳はそれだけか?」
怖いです、ヨッピー。名前と声のイメージが正反対ですよ。ヨッピーさん。
「認めるよ、忘れてた。今から連絡するから。」
「この会話が終わったらすぐに、だぞ」
ツーーーーー
んあああああああああ、非を認めるのって胸くそ悪りいいいいいい。
忘れないうちにかけておこう
「もしもし、青木です。仕事?ええ終わりましたよ。死体もそのままの状態が条件でしたね。そのまま今から言う場所に殺して置いてあるんで確認に行ってくださいね。場所は------」
はい、電話終了っと。
3分程の連絡だったが、こっちにもやらなきゃいけないことがある。
「5分で助けだしあげるよ」
建物への侵入成功。
どこにも落書きが見当たらないことから、人の出入りは少ないことがわかる。
「さてー、ソテー、ルソー」
自分でも何言ってんだって思う。
さすがに監禁されている場所の特定は勘ではできない。
しらみつぶしに
ブルルルルルル
全く、今日は着信が多い日だ。
誰だろ、
見てみるとまたもや知らない番号。
それに電話番号が199244444111。
長い、第一印象。
興味がある。どんな奴なのか。
「はい。青木です。」
「進みますか?.退きますか?」
「...何がだ?」
「進みますか?.退きますか?」
ああ、いたずらか?それでも僕はなぜか
[進むよ、退くのはかっこ悪いからね」
理由はそれだけではなかったが、なぜか大真面目に答えた。切ることもできたのに。
[進めば死亡率80%.退けば0%ですがそれでも進みますか?」
間を開けずに答える。
[ああ、構わなよ、ちょうど刺激が欲しかったしね。進むよ。」
少し間が空き
「ふふっ、あなたになら任せられます。どうか、あなたに神のご加護がありますように」
ツーーーーー
電話が切れるとほぼ同時に大きな音、いや爆発音が建物中に響いた。
ここではない、どこかで爆発があったのだろう。
死亡率80%か....この事だったのか。
「さあ久々に本気を出すとしようか、今日は運も良いみたいだしね。」
整理しておこう
ます、目的は監禁されている人の救出。
しらみつぶしで探すしかない。
いや、またいつ爆発するかわからない。悠長に探す時間はない。
「勘、当たってくれよ!」
-----走る、走る、階段を駆け下りる。
ゲームのボスやお姫様は一番奥っていうのが相場だろうッ。
ただそれだけの理由。自分でも鼻で笑うレベル。自分の命も懸かっているのに、ワクワクする。
ツッ?!
腕を見ると深い切り傷があった。
原因は何かを確かめたいが、振り返る時間はない。
脇目もふらずに駆け降りる。
---------「ハァハァハァァ」
着いた。
長く薄暗い廊下に、終わりなんて無いように、そんな気さえする、そんな廊下。
高そうな赤い絨毯が敷いてある廊下、この先に誰かがいる。そんな気がする、いやそうであって欲しい。
走ってはいけない、なぜかそんな気がして、一刻も早く先に行きたいのに走れなかった。
コツコツコツ
自分の足音が廊下に響く。こんな時にいうのもなんだが
「いい音だ」
結構好みな音だった。
コツコツコツ
進展はない。
どこまで続いているのかもわからないこの廊下を歩いて行く。
コツコツ
結構な距離を歩いた。おそらく直に終着点にたどり着くだろう。
コツ
扉が見えた。まだ遠目でしかみえないが綺麗な扉だった。
「どうしようか」
開けるか、開けまいか。
答えは既に出ているしかし...
ガタン
扉の中で何かが落ちた音がした。
まさか------
ギィィィィィン
「......」
薄暗くてよく見えないが小柄な...女の子がその体躯に不釣り合いな大きな羅針盤を持って座り込んでいた。
暴行された形跡は全く見受けられない。
一安心。
「あなたの名前は青木代、歳は23、身長は170,5センチ、食事は一日一回睡眠は不規則、趣味は深夜徘徊という変態さん。」
「ちょっと待ってくれ、いきなり何なんだ。当たってるよ! 変態ってとこ以外合ってるよ!」
okだんだんと暗闇に目が慣れてきた。
相手は黒髪のショートカットで和服をきている。
「いきなりだけど私をここから連れだして下さい」
上目遣いで見上げてくる。
少し可愛い。いや、決してロリコンだという訳ではないが守ってあげたくなる。
「理由は知らないが最初からそのつもりだから安心して」
監禁されているようだし、そのまま置いて変える訳にはいかない。
それに...さっきから抱きか抱えている羅針盤の事も気になる。