幼馴染との再会
もう…どうすればいいか...このままでは、このままではいけないのはわかってる
手元に置いてある白い袋の中からオレンジ色の錠剤を取り出す。
医者に落ち着かない時やイライラしたときに飲むように、と言われているこの丸い錠剤。
薄暗い部屋の中、私は薬を飲みかけてあった水で飲んだ。
……落ち着かない。
悩みの種は誰しもが一度は通る道、高校受験。
それが、心を支配している。
「オーケー落ち着け私、今の現状をまとめてみよう」
まず、不登校で引きこもり状態...そのうえ学力は皆無、きっと内申点なんかも最悪だろう。
高校には行きたい。
漠然とだがそう思っている。
誰かに相談しようか……相手は限られてくる。
学校の教師共は親身には相談に乗ってくれないだろう。
……となると相手は幼馴染である「空」しかいない。
いざ、電話をかけようとすれば、緊張や出てくれるのか?という不安に押しつぶされそうになる。
勇気を振り絞り、埃の被った携帯携帯電話へと手を伸ばす。
着信0
受信メール0
分かってはいたが現実は非情、迷惑メールの一通や二通来ていてもいいものだが。
ブルルルルルル
マナーモードにしていた携帯が震える。
いきなりの着信にビクッとした。
これが第一印象。
「着信か...久しい」
なぜか格好をつける私。
こんなことしてる間にも携帯は律儀に震え続ける。
「早く出ないとな」
心を落ち着かせ携帯を手に取る。
とりあえず電話に出よう。
「もしもし」
「百合式くん?」 声を聞いただけでわかる、新谷さんだ。
新谷とは中学で知り合った。
私が学校へ登校しなくなった後プリントなどを持ってきてくれたり、色々と世話になってる子だった。
彼女に電話番号は教えていなかったはずだけどな。
疑問が湧き上がるのに場所は問わない。
「急に電話かけてごめんね。驚いた?」
「今ちょうど寂しかったところだからむしろ嬉しいよ」
嘘ではなく本心だった。
驚きはしたがまだ自分にかまってくれる人がいることが嬉しかった。
ずっと一人で居ると、それが普通になると涙腺が弱くなるのかな。
心なしか目がにじんできたような気がする。
「今、中央公園へ来れる?」
部屋に居ても仕方がないし気晴らしに外に出るのも悪くないかもしれない。
「すぐ行くよ」
ハンガーに引っ掛けてあるコートを羽織り、マスクをつける。
「この格好で店に行くと怪しまれるんだよなぁ」
まぁ公園へ行く程度なら気にすることはないけど。
どうも人目が気になる。
繁華街だからだろうか。
今は真昼間で人通りは多い。
それでも、何か別の種類の視線を感じる気がする。
人混みのなかで、特定の視線を見つけるのは困難。しかし、今日ばかりは容易に発見できた。
あそこのマッチョ野郎とスーツ姿の奴か……。
遠目でしか確認できないが両方ともこちらを凝視している。
何なんだよ?!顔になにかついているのか?!
心の中でそう叫ぶ。
「もう嫌だ・・・帰りたい」
この言葉を家から出てすぐつぶやくことになるなんて。
もう末期かもしれない。
中央公園へはあと2分くらいで到着できるだろう。
中央公園到着
すごい達成感だ。
辺りを見回すと新谷さんは正面の入口に立っていた。
安堵感。そして
なぜか新谷さんが来ててくれたことが嬉しく思えた。
「遅くなってごめん。」
後ろに2人見覚えのある人影が新谷さんの後ろに我こそはと言わんばかりに押し合いながら隠れている。
「ううん、私もさっき着いたばかりだしそれにゆ…」
「百合ちゃん元気だった?」
新谷さんの後ろ…いや押し合っていた二人の後ろからちょこんと出てきた一人の少女が言葉を発する。
時間は真昼間からやや遠のいた昼間。
相変わらずこの公園は人が多い、遊具の種類が充実しているせいなのか、子供連れが突出して多い。
その他にもこの中央公園は待ち合わせの場所にも使われることが多い為、中高生や大学生らしき人物達もチラホラ確認できる。
後ろに隠れていた2人も空が発したと同時に隠れるのをやめて、私の正面に向き直る。
「で、揃いも揃って私に何の用事だ?」
「キョロキョロしすぎやったでぇユリ」
「だな、外出るくらいビクビクしすぎだぜ」
頭を働かせさせ一つの答えに辿りついた。
「もしかしておまえらずっと見てたのか?」
「心配やったんや、事故に遭わないか、ひきこもってたやろ?やからさぁ」
……グサッと来た。できれば、引きこもっていたことは話に出さないで欲しかった、が事実。
「大切な話いいかな?」
神妙な面持ちの空、大切な話?
「百合ちゃん高校のことどうするの?」
先程までの和気あいあいとした空気が一変した。
それに今悩んでることをダイレクトアタックで突いて来た。
自分と歳が一つしか違わないのに根本的に空達には負けている。
いつも、小さい頃から3人の後ろを付いて行っていた事を思い出した。