新入生の小手調べ 前編
カツカツカツ
階段を物凄い勢いで駆け上がって来る音が聞こえる。こんな速さで駆け上がれるのはオーデくらいだろう。
ガラーーー
教室のドアが勢いよく開けられる。
「どうだった? 私凄かったでしょ」
エッヘンと胸を張り、称賛を求めるオーデ。
教室には私一人しか残っていない。他の皆はタキシードの方へ行ってしまった。
「凄かった……でも、怖くもあった」
素直に自分の思ったことを言う。恐怖という感情は自分が生命の危機がある時に出てくる感情だと思う。
オーデに殺されるとは思わないが、昨日までオーデに対して抱いていなかった感情が「ある」のも確かだった。
「助手なんだから――この程度で怖がってたら続かないわよ」
ため息をつくオーデ。オーデは自分が怖がられているとは思っていないだろう。
「それより、あのタキシード見てみ」
オーデは例のタキシード男を指差す。人だかりの中、静かな音色がグラウンド中に響いている。
他の「ブルーメン」達も演奏を辞め聴きいっている。
タキシードは目をつぶり演奏している。演奏している姿さえも美しいと感じてしまう。
「オーデ、あのタキシードは何か強力な魔法でも使ってるの?」
「いや、魔法は使っているけれど、他のブルーメン達と同じ魔法よ」
「おそらく、生まれ持ってのカリスマ性と単純な血筋でしょ」
音楽は血筋が重要視される。歴史が古ければ古いほどその血筋は神格化され、世間からもてはやされる。彼の家は音楽家系なのだろうか?
「そろそろ終わりよ、この曲」
オーデはこの曲を知っているのだろう。私は音楽全般に疎いので分からない。
――音が止んだ、今まで静止し、静聴していた生徒達がざわつき始める。
タキシード男は軽く会釈し、ゆっくりとその場から立ち去った。他の「ブルーメン」達もついて行くかのようにグラウンドを後にした。
カリスマ性……偉大なり。人を惹きつけるという事ならバイルも負けてはいないだろう。
入学初日から、色々な出来事があった。
時刻は一時すぎ、新入生の能力検査とクラス分けは私たちのクラス以外終わっているだろう。
今まで我を忘れていた生徒がそそくさと教室に戻ってくる。教師の青木先生はどこかに行ってしまったし、誰がこれから脳r特検査やクラス分けを指導するのだろう。そう考えていると、廊下から一際大きな足音が聞こえてきた。
足音は教室の前で止まり一寸開けてドアが静かに開かれる。
大男。 ひょっとして、一般的なタンスを3個あまし積んでもなお大きいだろう。
大男は咳払いをし
「俺は吉田だ。吉田圭。青木の代わりとして臨時派遣された者だ」
よろしく頼む、と続けて話す。
「まず、いきなりだが能力検査を受けてもらう」
よく通る大きな声でそう言った。
能力検査か……ドキドキするな。もしかしたら、すごい能力かも。と期待する反面、あまり期待はするなとささやく自分がいる。
能力検査ってどんな事をするんだ?まあこれは後に分かる事だけど。
とても短いです。
これで一話って事でいいのか?
挿絵とか描けたらなっていつも思います。