旧魔法国での「出来事」
美しい街とここはよく評されていたのも、今はもう昔のこと。
昔、この街は世界でも有数の魔法街であった。観光客は多く訪れ、皆揃って美しいとつぶやいた。皆、荘厳で美しい家に住み、食べるものにも不自由はなく、太っている者が痩せている者より多かった。世界の文化をリードする程でもあった。
今は皆、口を揃えて言う。―――魔法使いは嫌いだと。
魔法使いによって繁栄していた街が魔法使いを嫌うのは矛盾しているが、あの「出来事」があるまでは皆、魔法使いに好意を寄せ、魔法使いは憧れの職業だった。
今、この街を見て昔は繁栄していた、と言っても信じてはもらえない程、街は荒れていた。皆、食べ物に飢え、泥水を飲む、痩せている者しかいない街。見渡して、物乞いの数が目立つ。ごく稀にやって来る旅人に嘘をつき、食べ物や飲み水を分けてもらう、この街の者は皆そういう生活をしている。
食べ物を奪い合い、殺しや裏切りが蔓延するようになったのは。
しかし、皆、旅人にだけは優しかった、嘘はつくが、決して身の危険に関わる嘘は絶対に付かなかった。 皆、嬉しいのだ。こんな国をたとえ通り過ぎて行くだけだとしても、忘れられていない事が嬉しいのだ。
3年前だ、この街が廃れたのは。ある「計画」の的になったのがこの街。
「破壊計画」
主に破壊系の魔法使い達が集まりこの街を突然破壊し始めた。その出来事は、7日という短い期間で終了した。 魔法使い達は探していた書物を見つけるや否や魔法使いたちは、書物を奪い合い始めた。
魔法使いの最終目的は願望の成就、その中でも不老不死は多くの魔法使いが目指している。そのために、必要な書物や植物に花、その書物はこの街にあったのだ。
魔法使いたちはその一冊の書物を巡って最後の一人になるまで殺しあった。
長い、長い戦いだったが、勝者は、次の目当てである「植物」を探しに行った。
その勝者は今は「――師団」のリーダーとして活動している。
おそらく目的は達成され、「彼」は不老不死になった事だろう。
私達のような才能の無い者には理解出来ない。そこまでして……いや、されたから分かるのだろう。
ああ、自分で分かるのだ、私はもうすぐ、死ぬ。 だから、これから生まれてくる者たちに伝えたくて今、本を書いているのだ。
この国で生まれ、この街で育った者として。起こった出来事をありのままに伝えたいんだ。
「――師団」彼らは残虐な者たちの集まり。その――師団のリーダー「ミエル」には特に注意が――。
老衰ではなく、餓死。
彼は走馬灯のように、一人の少年の事を思い出していた。彼の名は「ネイロ」この国の王の息子。彼は音楽の道に進みたいと言い国王である親に猛反対をくらった。 王の後継者は彼しかいなかったからだ。
「私も魔法使いは嫌いだ……」
擦り切れそうな声でそう呟く一人の若者。若者は本の完成と共に息を引き取っていた。
「破壊計画」
かつて青木も参加していた計画。