戦いの激化
はじめに仕掛けたのは、バイル。
「ホラッ」
ポケットに入れていたナイフを代めがけて投げつける。
青木代は微動だにしない。それもそのはず、彼の円の中に入ったものは木っ端微塵に砕け散るのだから。
「いいよ、いいよぉ」
バイルの声はものすごく抑揚がある。高くなったり低くなったり。奇人。
青木はあっという間に、グラウンドの真ん中に到達した。
次に攻撃したのは、オーデ、ターゲットはバイル。
高速で何かを唱え、バイルの方向へ向かって、炎が迫る。
また、炎とは別に地面へ無数の種をオーデは撒いた。
「ボク狙い?ボクは簡単には落ちないよ」
以前、声は変わらぬまま。高く、時に低く。
観客は大勢いた。教室の窓から。職員室から、また、音楽室、生徒指導室からも。
生徒全員が観客のようなものだった。
それぐらい、3人とも、異質な空気を流している。殺気や狂喜などが混ざる不思議な空気。
「バイル、今日でお前ともお別れだァ、殺す!」
青木が声を荒げる。
響く、よく響く声、さっきとはまるで別人かのような、純度100%の殺意をバイルに向ける。
「ああ、いいよぉ、その殺意、惚れ惚れする」
これほどの殺意を向けられているにも関わらずバイルの声は変わらぬまま。
ものすごい速さでバイルの懐に潜り込む青木。
「代の先天的な能力って破壊系だったよね、ボクは創造系、正反対だね、エヘヘヘェ」
ドスッ、鈍い音が周囲に漏れる、同時に最初の攻撃のヒットでもあった。
「ウハッ、痛いってェ、」
脇腹をおさえながらそれでも笑みをたやさないバイル。
「血の契約を思い出せ、我が使い魔よ」
低い声でそうつぶやくオーデ。
オーデは後ろへ退き、
「気あるモノは集え!」
大きな声で叫ぶ。
次の瞬間、腕の長さ程の黒いモノ達はオーデを囲む様に現れた。
それでも、一際大きな人が、おそらくオーデと同じ程の大きさの刀を持った少女が横に並んでいる。
状況は察してあるのか、刀を抜き臨戦態勢に入っている。
「攻めてきなよ、攻撃してきなよ」
挑発。
乗ったのは青木、青木は 円 の中にあるものなら相手にもよるが自由にできる。
バイルは言葉を放った次の瞬間には吹っ飛ばされていた。
…バイルは円の中に居たのだ。
青木は容赦無い。
吹っ飛ばした後もものすごい速さで追撃を打ち込む。
?!
青木は後ろへ退く。バイルは確実にダメージをくらっているはず、血を大量に流しながらも笑いながら、立っていた。
バイルは笑いながら多種多様な形色のナイフを懐から取り出す。
「反撃、行くよ」
目が変わった、おそらく本気。
殺気のぶつかり合い、しばらく、5秒程睨み合いの状態が続き、動いたのはオーデ。
バイルめがけて、オーデを中心に使い魔達は一直線に、進む。
明らかな自殺行為。今のバイルに近づくのは危険だ。
バイルは血を地面に流しながらも向かってくるオーデを睨みつけ、ナイフを幾本か投げつける。
オーデの使い魔がナイフを刀で弾き落とす。
青木は機を見計らい、バイル達から距離を取る。
バイルはナイフこそ投げつけるが…いやそのナイフの投げ方がぎこちない。まるで重い鉄球を腕にぶら下げてるかのように。
「発動条件は撒いた地に血を浴びせる事、それが、拘束魔術の発動条件、さっきの種は魔方陣の代わりよ」
冷たい声でオーデは話す。
「私の勝ちね」
右腕にバイルの投げたナイフを持ちそうつぶやく。
―――――――その瞬間
「?!」
オーデの右腕にナイフが刺さる。
オーデがバイルから距離を取り右腕からナイフを抜き取る。
バイルは笑いながらも先程までの声の抑揚はない。
青木は察しがついただろう。バイルの能力は創造系、生み出せるんだ。武器を。