第1話:タイプ
この1話で登場する主な3人(?)は後の話でも多く登場します。
意味の分からないところが多いと思いますが、どうぞお許しください(笑
飯沼咲姫(さき)。
親からもらった極普通な名前。
あたしはこの名前で17年間過ごしてきた。
今までつき合ってきた男は、5人。
キスは100回以上。
エッチは無し。
いたって普通。
━━だと想う。
「ねぇ咲姫のタイプってどんなん?」
肘を机に着いて、ポテチのこんそめ味を頬張りながら、憂に問われた。
「どんなんってなにがよ?」
ストロー付きのカフェオレを音を立てて吸う。「男に決まってんじゃん。どうゆう系が好きなんってこと。」
そして憂が教室にいる男達を次々に遠目で見ていく。
マジメのオタク系、スポーツマン、いたって普通系、着崩しのヤンキー系。
咲姫をチラチラと見ては、
「あ〜ゆう系?」
「意外にアイツ?」
「もしやアレか?」
「いやいやコイツ?」
と、ふざけた笑いを浮かべている。
「あたしタイプなんかないし」
冷めた様子で憂から目をそらす。
「えーっ、嘘やん。じゃあ別にオタクでもヤンキーでもどっちでも可?」
「あ、オタクは勘弁」
咲姫は苦笑いを浮かべて、憂に返した。
憂は
「だろうね」
と言って笑っていた。
咲姫はまだ口の開いてないポテチに手を伸ばした。
「まぁ咲姫的につりあうのはヤンキーって感じやね。咲姫マジメやないから」
憂がにんまりと言った。
それを聞いて咲姫は少し戸惑って、
「それどういう意味さね。あたしヤンキー系もあんま好きでないよ」
ツンと口をとがらせた。
咲姫の返答に憂は驚いた。
なにせ咲姫が今までつき合った男は全部ヤンキー系だったから。
「なしてね?」
「ヤンキーはチャラ男が多いきね。そんなんヤダ。」
「それ偏見さね。ヤンでもチャラ男じゃなき男もおるがね」
憂は、思い出したかのようにある男をみた。
一人、机に座って携帯をつついている。
そして時折、窓の外を見ては、また携帯の画面に視線を戻している。
憂はソイツを指さして、
「あの藤原とかね」
と、咲姫に訪ねた。
咲姫は一瞬だけ藤原に目を向けて
「チャラ男っぽい。」
と、首を振った。
「何いうてんのん。藤原めちゃくちゃ女に人気あんだよ。外見イカついくせに一途で優しいって」
「何で一途ってわかるとね」
「だって藤原中学の時、3年間も片思い続けたらしいし」
「で、結局フられたと?」
「いや、それがね。その片思いの相手ね、病気で亡くなったらしいんよ。でも噂ではまだ想い続けてるらしいんけどね」
「へぇ〜……」咲姫は興味なさげにポテチを口に含んだ。
藤原は、今時系の目立つ存在だった。
髪は赤茶のオールバック。
耳には2つのピアス、右手の中指と人差し指にはDiorの指輪をはめている。
目はつっていて、鼻筋がよく、一言で言えば【クール】という印象をもっていた。
だが、顔とは裏腹に人への愛着もよく、優しいと評判だった。
でも、咲姫にとってはそこらへんにいる男と変わらない存在でしかない。
無論、喋ったことすらなかった。
「……咲姫って男に興味なさげだよねー」
からかうようにして笑いながら、憂が咲姫を見つめた。
「うん、今はね。そういう憂は彼氏とラブラブやんか」
咲姫がプウと頬を膨らませて、憂に舌をベッと出した。
憂は照れたように笑いながら、
「なは。でも咲姫が1番好き〜っ」
と、甘えたように咲姫に抱きつく。
咲姫は呆れた顔をして
「ハィハィ」
ぽんぽんと憂の頭を撫でた。
「まじだよ?なんならチューでもする?憂のキス超うまいよ。んぅ〜」
そう言いながら咲姫の方に唇を寄せる。
さすがの咲姫もこれには笑ってしまった。
「分かったから。やめぇアホ」
憂も声に出して笑った。