7話♀出会い[後編]♀
遊園地をでた後あたしたちは、近くの公園にきていた。
「楽しかったね~」
「えぇ、楽しかったわ」
「………」
「……………」
何ででしょう、会話が続かないわ。遊園地内ではたくさん喋ったのに、何故かここでは続かないわ。
「ねぇ」
「ん、何?」
「えーとね……夕日が眩しいわね」
「そうだね~」
続かないわ! 話しかけても話題が見つからなくて、夕日のことを話しちゃったわ! しかも、眩しいわねって、そのままのこと話しちゃったよ~、恥ずかしい!
「あ! そうだ、マーレ」
「ん? どうしたの?」
「今、欲しい漫画ある?」
「え、たくさん…あるよ…ギャグ漫画のあれでしょ~、ラブコメだけどシリアスなあれでしょ~、アニメ化するというあれでしょ~それから~…」
「アニメ化するやつってまさか…“魔王には下僕がいない!?”っていうタイトル?」
「!? そう、それ! あたしまだ、5巻までしか持ってないんだよ~」
「えぇ~それ、私持ってるよ、全巻」
魔王には下僕がいない!?とは、ただいま1~13巻大好評発売中の学園ギャグ漫画である。唐希南中学校を中心に贈る、切なくても、愛くるしいストーリーである!
「えー!? いいなぁ~羨ましい!」
「ふっふ~♪ どうだ!!」
と、ポッケにある財布を取り出し、中身を探った。すると途中でたくさんのレシートが落ちた。
日がだいぶ落ちて暗くなっていたので、どこに落ちたかどうか分からなくなってしまった。ベンチの下を探している最中にいつの間にかミリがあたしの隣にいた。
「もー、マーレってドジなんだねぇ~」
「…う、うるさい!!」
「はははっ、まぁ怒らないで。怒ると集中力が下がっちゃうよ。集中力が下がるときにこそ、見落としやすいんだよ♪」
「そ…そうなんだ、なんかごめんね」
「いやぁ…こっちもごめん。」
ミリが探してくれたおかげで、だいたいのレシートが戻った。何か心の中の違和感があったが、この頃はまだ分かっていなかった。
そう、恋に反応してるなんて、思いもしなかった。分かったのはまだ、先の話。
「う~ん、だいたい取れたよね?」
「あ、あぁ…うん、十分だよ、もう」
「そりゃあ良かったぁ~」
拾ったレシートを数えてみると32枚あった。元の数が32枚だったので一枚も無くしてなかった、ということになる。これは本当に感謝しないといけないな、ミリに。
「あ…ありがとうね」
「え…あ、そーたいしたことやってないのにね~、あはははは…ちょっと恥ずかしいね」
「あ…街灯点いてる…ってあれ? 7時半…?」
「7時半…? …あ、どうしよう?」
「どうしましょうね?」
レシートを財布にしまいながら、どうしようか考える。
だが、考える内容はほとんど、どう帰ろうか、どういう言い訳にするかなど、怒られないように、どう対応すればいいかなどばかり考えてしまう。この考えは、ミリでもしてると思った。
「あぁ~しまったぁー! …はぁ~」
「あたしもしまっただよ~…」
「夕食何食べようか決めてないよぉ~」
「……え? 今なんて言った?」
「え、だから夕食何食べようかな~って」
「ま、まさかと思うけど…どこかで夕食食べるき?」
「うん、そうだよ~♪」
ミリは違った。思いもしない夕食のことで悩んでいた。でもあたしはそれが新鮮に見えた。
「コンビニでいいんじゃない?」
「!? いいねそれ! 色々あるし、迷わないね♪」
「それじゃあ~…行こうか?」
「よーし、レッツゴー!」
「あ、ゴー…」
と言うことで、近くのコンビニに行った。そこであたしは、メロンパンと缶コーヒー(有糖)をとった。ミリはというと
「マーレは決まった?」
「え…あたしはメロンパンと缶コーヒーに決めたよ」
「うわ早っ! 私まだパン系にしようか、弁当系にしようか、それとも違う系にしようか迷い中なんだよね~」
「そこから!? …ん~なら~、今一番食べたいものとかは?」
「…私、マーレと同じものが食べたい」
「あ、ごめん。メロンパンはこれが最後なんだ…」
「えぇ~……。もう食べるものないや…餓死しちゃうよぉ~」
「ミリ…あたしのメロンパンあげるよ」
「え? 悪いよそんな、もらうのなんて」
「大丈夫大丈夫、他のを探すから♪」
あたしの持っていたメロンパンを無理矢理押し付け、私は違う物を探そうとした。
「ちょっと待って!!」
強引に服を引っ張って、あたしを止めた。
「一緒に食べようよ!」
「え…でも…」
「いいじゃない! マーレからもらったんだから、私が何しようと勝手じゃない!」
「…分かったわ。でも…ミリ、飲み物要らないの?」
「……あ。ん~、レモンティでいいや!」
そしてあたしたちはレジで会計を済ませ、コンビニを出た。
「さて、どこで食べよう?」
「ここでいいんじゃない?」
「でもそれじゃあコンビニ側に迷惑がかかっちゃうよ‥」
「なら…公園に戻る?」
「まあ~そうだね♪」
2、3分程歩き、また公園に来た。そして同じベンチに座った。ベンチは丁度いい冷たさをしていた。
「さーて、いただきまーす」
「いただきます。」
ピリッ…ピリピリピリ
「はい、マーレ。先、半分食べて♪」
「うん、じゃあお先に…」
パクッ…パクパク…
「はぁ~、おいしい~♪」
パクパクパクッ…パク
「あぁ~おいしかった~♪はい、次はミリの番♪」
「早いね~マーレって。では私も食べよっと」
パクッ
「はあ~……うまい!」
パクッ
「うめぇ!」
パクッ
「おいしい!」
パクッ
「うん、メロンパンだ! うんうん」
うなずきながらも食べていく。その食べ姿はとても…とても……
「おいおい! …一口が…小さすぎない?」
肩をたたいて、ミリを振り向かせた。
「え? そう? やっぱり?」
「ま、まさかだけども、ワザと?」
「ん~まぁそういえば…そうかな?」
「なぜゆえに?」
「気分的に…ん、まぁ、その…」
「まぁいいけど…食べ散らかさないでね?」
ミリの周りは街灯の灯りでよく見える。メロンパンのパンクズが…
「あ~ごめん! つい、食べるのに夢中で気づかなくて」
「本当にもうっ! ミリはドジなんだねぇ~はははっ…」
あたしは缶コーヒーを開け、少し飲んだ。もう一口飲んだ後、ミリの方を見るとメロンパンの袋の中は空っぽだった。
「ぷは~、おいしかったわ~」
「あ~おいしかったね~」
「……あ、8時過ぎちゃったわ! どうしよう、そろそろ帰らないと…」
「あ~そうだね♪ それじゃあ帰ろっか♪」
あたしたちは公園を出て、コンビニの前にいた。
「あ、あたしここまっすぐで家なんだ♪ ミリは?」
「私は左に行けば家だよ♪」
「それじゃあここでお別れだね♪」
「縁起の悪いこと言わないの! お別れだなんて、またいつでも会えるよ。学校とかで♪」
「そうだね♪ …あ、そうだ!! 何組?」
「え、私? 私は2組だよ」
「え、偶然!! あたしも2組♪」
「あぁ~気づけば良かったなぁ~」
「でもしょうがないって、中学入って初めての夏休みだもん♪」
「そうだよね♪ でもこうやって話してるって、偶然の巡り合わせだし、これからも仲良く♪」
「うん、そうだね♪」
そういい、あたしたちは自分の家へ帰った。これが初めてミリに出会った時である。
そして、親にはとても怒られました。ミリはというと、親に飽きられました。何度も夜遅くに帰っているからです。
一番遅く帰ったのは、10時頃だそうです。あたしの8時半頃は、よくある時刻だったそうです。
■□■□■
そしてまた、夏休み中に出会った。
「よっ!! また会ったね♪ 久しぶり」
「あ、久しぶり♪」
「今日はマーレん家に行っていい?」
「また、唐突に!? …う~ん、いいか分からないけど…来る?」
「やったーー!!」
「あはは……」
これからどんどん会って、どんどん喋って、喋り疲れるのはまだ知らなかった。
けど、その新鮮さに心惹かれてるのは、分かった。
…いや、分かっちゃった。