11話♀始まりが来た♀
赤面する二人の少女がいた。
その名はミリとマーレという。
少女たちはある二人を見ていた。真っ赤な空を背景に、ある二人は抱き合っていた。
ある二人とは、スピンルとエンビル、姉妹である。スピンルが姉で、エンビルが妹である。そして、悪魔である。
一件落着したかのように、スピンルとエンビルは手をつなぎ、ミリたちの方を見た。
「…さぁ、とある人間とは誰かしら?」
「そうや! 誰や!」
急な問いかけに驚いたのか、ミリたちは唖然としていた。
「・・・知らないの?」
ミリたちは頷いた。
「本当にそうなんか?」
「知らないよ。私が起きた時にはもう歪んでいたから」
「ふ〜ん…」
「エンビル、次の場所へ行こ?」
「…分かった、姉さん。早く見つからないかな~」
スピンルたちは地面を蹴って空に浮かんだ。そしてこちらに一礼をした。その後、指パッチンをして消えた。
スピンルたちが消えた後、ミリはまるで抜け殻のようにへたり込み、空を見た。
「…なんで空はこんなに赤いんだろう?」
「さぁね。でもこういう空もたまにはいいんじゃないかな? ミリって青い空ばっかり見てるし」
その一言でミリはあぐらをかいて、マーレの方を見た。それに続いて、マーレも座った。
地面に生えた芝生は、夜の芝生なように少ししなっていた。
「えー!? そんなことないよ~。白い雲もしっかり見てるって〜」
「へー。まぁ、そんなことは別として・・・」
「待てーい!」
手を前に突き出し、ミリは話しを強制的に止めた。
「どうしたの? まだ話しは途中だったけど…」
「いやいやいや、ツッコミ入れてほしかったよ〜」
悲しい表情で、いや・・・涙目でマーレに訴えた。だがそれは上手い具合に避けられた。しかしそれは避けたのではない。
マーレの涙目が可愛すぎて、マーレが直視出来なかっただけである。
それと、ツッコミを入れなかったのも、ミリが可愛くて好きで、大好きで、逆にいじめたいという気持ちがあったからである。
「…可愛すぎるん」
「え?」
ボソッと言った言葉はミリには聞こえていないらしく、首を傾げていた。
「いや、独り言だから気にしないで」
「そう言われると気になるな~」
ミリはゆっくりとマーレのほうへと顔を近づけていき、マーレの耳を甘噛みした。
「ひゃ…っ!?」
マーレは少し身震いを起こし、赤面した。ミリはそれを見て、クスリと笑った。
「ななな…な、なに笑ってんにゃ・・・か、噛んだ…」
「…くすっ」
ミリはマーレの見えない方へ向いて、笑った。
「わ、笑ったな~もー…」
赤面がようやく引いたかと思えたが、今度はそれを上回る真っ赤な赤面がでた。
その時、マーレの平均体温が1度くらいあがったような気がした。
「ふふっ…可愛いーなー、マーレは」
その言葉でマーレはノックダウンした。
実際、人ってこんなにも鼻血が出るんだなってくらい、鼻血が飛び散った。そしてその鼻血は脱ぎ捨てた制服にも飛び散った。もちろんマーレたちの下着にも飛び散っている。
そして鼻血とともにマーレは芝生に倒れ込んだ。
「ミリ……それは禁句……」
「……え!?」
ミリは驚きの形相でマーレを見下ろしていた。
■□■□■
~学校周辺~
「そういえば私、今日誕生日っス……」
この少女、その名はビュリラ・守賀という。ビュリラは隣にいる友人のハル・際豆に話しかけていた。
「へ~、そーなん?」
ハルはチラリとビュリラを見た後、手に持っているたこ焼きを食べ始めた。
「……なんでそんなに冷たいっスか?」
ビュリラが喋った後、ハルは不思議そうな顔をした。
「ほんまか? このたこ焼き、まだ冷たないけどな~。あっ、証拠に食べる? ほら、アーンして? 冷たくないから」
ハルは話しと同時進行に、たこ焼き一個をつまようじ2本で刺し、落ちても大丈夫のように手を下に添えた体勢をとっていた。
それにはビュリラも断りにくく、ちょっと頬を赤く染めてたこ焼きを食べた。
「……おいひい」
ビュリラが目を大きくして、ハルの持っているたこ焼きを見た。何かを疑っているかのような眼差しを、たこ焼きに向けて放っているように見える。
「そうやろ!? このたこ焼き取り寄せてんねんで~地元から。でも冷凍じゃないで。ちゃんと小麦粉から青のりまで全部取り寄せてんねん。あ、ついでにこれな~全部私の手作りやねん!」
熱く語るハルは、たこ焼きの話しか頭に入っていない。逆に言うと、たこ焼きの話しか入っていないので、周りのことは気にならないどころか、まず、その周りさえも気にかけていないのだ。
しかしそれはただ単に気にかけないだけである。たこ焼きの話以外。つまりたこ焼きに関する話なら気にかける、いや、かけ過ぎてしまうのだ。
それはとても危険だったのだ。