10話♀謎の男は重要な男♀
それは少し前。
何かが落ちる音がした。
ボクは壊すのを一旦止め、音が聞こえた方へと体ごと向けた。
そこには、
「…何・・・?」
「…お嬢さん。ごきげんよう」
黒髪でショートヘア。右目が白い眼帯のようなもので隠れてる人がいた。
体系は男。顔もみる限り男。いわゆる世間で言う、イケメンな男子と言ったところである。
あと服は、黒いボロ布。所々に血がついている。
それとあと一つ。
空に、浮かんでる?
「お嬢さん。何かお困りかな? そんなにも血塗れで。それにハンマーなんて持って…」
男は今にも笑いそうな口調で言った。
咄嗟に彼女の口から言葉が出た。
「おめぇには関係ない…」
「おぉー・・・そんな事言わなくても・・・! そうだ! とりあえず降りますよ」
そう、男は彼女の言葉を覆い被すように言葉を言い、ゆっくりと歩きながら降りてきた。
それと同時に彼女は男を見て、ポッケから何かを取り出すような仕草をした。
「…ふっ!!」
――ブン
彼女のポッケからカッターが取り出され、男に向かって一直線に投げられた。
が、男はそこにはいない。
「…お嬢さん、スキだらけ」
――ッツ
「…って! おめぇ何すんだ!」
ボクは左手で首を触った。
触った感触はというと、血のような感触がした。
ふと、手を見てみると少し黒色が混ざった赤色が見えた。
すぐさま彼女は男の方を見た。男は待っていたかのような表情で、
「…我はただ、歪みを少し、お嬢さんの首の近くで作っただけだよ」
意味不明な言葉を話した。
「…は!? 意味わかんないんだけど」
男の意味不明な話に、首を傾げた彼女。
分からないのもしょうがない。
「我はね、この世界中の歪みを作り出した、張本人なのさ。だから、歪みを作るなんて一瞬」
この男が歪みを作り出したのだから。
「…ホントか? おめぇみたいに空を浮ける奴が歪みを作ったなんて…ありえないでしょ。っていうかまず、空なんか浮けるのか?」
彼女は正直、信じていなかった。
けど、彼女の顔は興味ありげな表情を浮かべていた。
それに気づき、渋々続きを話した。
「…はあ。我は空に浮かんではいない」
「…は? なら何で空中に立ってたんだ!?」
「浮いているのは歪み。我はただ、その上に立っていただけのこと」
「・・・」
よくわからないので彼女は首を傾げたと同時に、少し後ろに下がった。
男は彼女の考えたことを瞬時に判断して、結論を口に出した。
「よくわからなかった?」
「…はぁ」
彼女の答えに対し男は微妙な微笑みをみせた。
男は同時に彼女の方にゆっくり近づき、座った。
「お嬢さんも座りなよ。我がもう少し詳しくお話しをしたい」
「…はぁ」
男の言うがままに彼女は座った。
「では・・・あぁ、まずはお茶を用意しなくては」
男は右手を、肩の後ろらへんから前へと振った。
歪みが振った所に集中した。
すると男は歪みを触り、広げ、中から何かを取りだした。
それはなんと、お茶の缶だった。
「おっと、コップがないな…」
男は床に右手をつけ、素早く手を挙げた。
すると、床が持ち上がった。
そしてまた、歪みを触って広げた。
「…これこれ、ペットボトルの水(2L)!」
そしてさらに男は、右手でまるを描いた。
男はそのまるを描いた所に、お茶の葉を全部入れた。
さらに、ペットボトルの水をそこに全て投入した。
なぜたか、まるい形に水とお茶の葉が浮いていた。
「どゆこと?」
「ん? ん〜、こゆこと」
男は右手を右膝に置き、さらに左手を左膝に置いた。
「??」
「我の両手は歪みを作れる。実際、空間を歪めてるのだから・・・正式に言うと、空間を歪めることができる」
「え…空間ってなに? ここら辺の事?」
ボクは全く理解してなかった。
この男の言ってる意味が。
「“この世”の全てだよ」
「・・・え!?」
目を点にして、彼女は驚いた。
それに対して男も目を点にして驚いた。
「…そういえば我はもういかねば・・・」
突然男はそう言い、ゆっくりと立った。
男が立ち上がった後に彼女が、
「…どこに?」
問いかけた。
「果て…かな」
「・・・え」
男は一言残すと、右手を一直線に振った。
それと同時に、左手で空に何かを描くように動かした。
すると男は階段を上るように空を上り始めた。
彼女はポカンと口を大きくあけている。
「我はここで失礼する。…3日後にまた来るとしよう」
そう男は言い残し、滑り台で滑るように空を滑っていった。
男は等速直線運動をしながら滑っていった。
男が滑っているのは、摩擦が少ないか、無いか、空気抵抗が少しか、無いか、それとも両方か。
そして彼女はまだ、ポカンと口を大きくあけていた。