9話♀始まった戦い♀
後ろを向くと、空に立っている小柄な少女は怪しげに笑った。漆黒の空を指さし、円を描くように指を回し始めた。
すると、漆黒の空は引き裂かれ―――真っ赤な空が出てきた。
人々は恐怖というものに占領され、騒ぎ始めた。
やがて、漆黒だった空は、まるで血のように真っ赤な空に変わった。
「何?」
あたしたちは制服を急いで着て、もう一度空をみた。
「「何、あの子?」」
ミリと声がそろった。考えてることは今回、一緒だった。
「くくっ…姉さん・・・もうすぐや…もうすぐ終止符がうてる…」
小柄な少女は微笑みながら空をみた。
ザッ―――
「エンビル!?」
あたしたちの真後ろからまた少女の声がした。
「姉さん!どうして此処に!?」
小柄な少女は驚き、喜びを隠せてなかった。
もう一方の少女はとても嬉しそうだった。
「あっちの方の戦いが終わったのよ♪」
「なら、姉さん…また一緒に…暮らせるんやね♪」
小柄な少女は嬉しそうに笑った。
けど、もう一方の少女は笑わなかった。ただ…悲しそうに泣いていた。
「…姉さん?」
「エンビル…あなたは私と・・・一緒に戦わなければならないのよ…」
「な…なんでや!?」
少女は戸惑いながらも冷静に聞いた
「見ての通りこの歪み…半端じゃないわ!」
空に浮かんでる少女は下を指差し、話を続けた。
「この歪みを生み出しているのは‘とある人間’と聞いたわ。そして、その人間を殺せば歪みは消えると言う事も聞いたわ!」
「なら、姉さん…その、人間とやらを殺せば…一緒に暮らせる?」
「そうよ。やっと終止符が打てて、一緒に暮らせるようになるわ♪」
「姉さーん!!」
空を蹴り、小柄な少女は少女に思いっきり、抱きついた。
「あの…ちょっとお忙しい中すみませんが…あんたら誰?…っていうか、どうやって空に浮かんでんの?……全くもって訳わかんないわ!」
手を挙げ、マーレは少女たちに問う。
「・・・は!?お前、人間・・・・あぁ、人間は浮かべないんやな、あたいら…悪魔のように」
「「…あ、悪魔?!」」
あたしたちは驚いた。まぁ、空に浮かんでる時点でもう・・・驚いてるけどね
「あれ待って、悪魔って普通・・・もっと…怖いんじゃないかと思ってたけど・・そうじゃないんだ…」
ミリが悪魔について、怖いとか何とか言ってると、後ろから―――
ダダダダダッ
「…もうちょいこっちだ!!」
「あれだ…あれ!」
違うTV中継していた、スタッフたちが来た。それにつられて、マラソンしていた人や、サラリーマンらしき人がゾロゾロと集まってきた。
「チッ・・・うぜぇ」
「人が話をしているときくらい…静かにしてもらえませんですかね?・・・」
少女二人は思ったことをそのまま口に出したかのように思えた。
そして小柄な少女は手を挙げ・・・静かに降り下げた
「消えろ」
「な・・・な…」
そこにいた人たちは消えた。マーレたちの前で跡形もなく、消えた。残ったのは、あたしたちがその人たちが居たという記憶だけ
「あ~、ちょっと力を出し過ぎやったかな~・・・?」
「そうですわね・・・跡形もなく消えてしまったのですからね・・・」
と、少女たちが言った後、後ろから―――
「ちょ・・・ちょっとまったぁー!!」
ミリだった
「さっきの人たちはどうしたの?!」
ミリはとても慌てていた。だけど慌てるのもしょうがない。だってたった今、人が目の前で消されたから。
それにあたしも正直驚いたのだから
「それはやね〜…」
「…言う必要ないわ」
小柄な少女が言おうとしてたのを、もう一方の少女が阻んだ。
「え…?あ、うん…」
小柄な少女は黙り込んだ。
「うん、まぁ邪魔者がいなくなったから、あなたの質問に答えてあげるわ・・・さぁ、言ってごらん?」
「あ、あぁ…あ〜、それじゃあ・・・あなた達は誰?悪魔ってことは分かったけど」
「…う〜ん・・・まぁとりあえず私の名前というものを教えてあげましょう。」
少女は地上に降りた。もう一方の小柄な少女もそれに続いて地面に着地した。そして、少女は一呼吸した
「私は、スピンル・ティラ。それで私の妹の―――」
「エンビル・ティラや」
「私たちの名前を聞いて、あなたたちの名前も聞かないのはちょっと不公平だし・・・教えてくれる?あなたたちの名前」
「あ、うん。わかった。私、ミリ・レンチャ。それで、親友の―――」
「あ、あたしマーレ・トレスっていいます」
「ふ〜ん・・・あぁそうそう、私たちは双子なのよ」
「それとあたいたちは、上級悪魔やで!ハハハッ」
エンビルは自慢げに胸を張った。
「じょ・・・上級悪魔?」
「なに?・・・上位に立ってるってこと?」
「まぁ・・・簡単に言えばそうやな」
「私たちはこの人間界の真逆から来たのよ。そして私は、悪魔界から厳選された悪魔の一人。エンビルは知らないけど・・・私はビィフィル・ニュマという、悪魔界の中で最高権力を持ち、一番強い奴に“ある人間を殺すんじゃ!!その人間がこの歪みを作り上げてるんじゃ!!”っていわれたのよ」
しみじみとスピンルは話した。
スピンルが話し終わった数秒後に、スピンルの後ろから荒い呼吸が聞こえてきた
「はぁ…はぁ・・・はぁ…」
「どうした?」
スピンルはエンビルの声が聞こえる方に振り返った
そこには、内股で、少し赤面したエンビルが、上目遣いでこっちを見ていた
「ね…え、さん。あたい・・・トイレ…」
「ト…トイレ!?あぁ〜ちょっとあなたたち!!ここら辺にトイレないの!?」
スピンルはとても慌てていた
「トイレなら…あそこにあるよ」
指を指した方を見ると、真っ白な色の壁が特徴のトイレがあった
「あ…ありがとう。…えっと・・・ミリ」
そういい、エンビルは浮かんで、空を蹴って、トイレへ急いだ
十分後
「…遅いわね」
スピンルはイラついていた。
イラつきなのか、いつの間にか腕を組み、うろちょろしてた。
それと同時進行に、ちょこちょこと、トイレの方を見てるけど、出てくる様子が全くない。
エンビルはなにしてるのかしらと、思いながらも、待った。
二十分後
「遅いわ」
いくら何でも、かなり遅い。
スピンルはミリたちにまで届きそうなくらいに、凄いオーラを発しているように見えた。
しかし、実際は全く見えていない。でも、とてもイラついているのがよく分かった。
だって表情怖いんだもん。何か、ポニーテールが空に浮かびそうな、気迫が分かったから
そんなこんな思っていると、トイレ側から、水を流す音がした。
「ふぅー、ちょーすっきりしたー!」
エンビルがやっと出てきた。
すると突然、ミリたちのちょうど右側から、鼓膜がどうにかなりそうなくらいの大きな声がした。
「おっそいわよ!!いつまで待たせる気!?」
スピンルの声は凄く、凄ーくうるさかった。
少し離れた右側でとてもうるさかったってことは、エンビルの方―――つまりトイレに近い場所でも、かなりうるさいだろうと、思った。
「姉さん。あたい―――」
耳に手をかけ、何かを取った。
それは予想外なものだった。
「トイレするときは…耳栓するんやで。忘れてた?」
「――っ!?…忘れてたわ」
赤面し、そっぽを向く。
私が恥ずかしいのを察したのか、エンビルは抱きついては来なかった。
おかしいわ。
いつもは、トイレとか、帰ってくると抱きついてきたのに、抱きついて来ないわ。
――ズキン
あれ?痛い
でも―――どこが?
「……心」
ま、まさか…心?
ありえない!
絶対ありえないわ!
私に心?いや、悪魔たちに心は無いもの。
ならなぜ痛むの?
「…それは恋よ」
ささやき程度の声が突然後ろからした。
「え…?」
咄嗟に振り返った。
そこにはマーレがいた。
マーレはスピンルの隣に座り、もう一度、ささやき程度の大きさで言った。
「それは恋よ」
「なによ、それわ?」
私は当然、疑問に思い、聞いた
「あなたが今感じた痛みが恋よ」
恋、ねぇ~。
待って待って、おかしいわ。
なぜそんなこといえるのかしら?
当然ながら、私は聞いた
「…何でそんなこといえるの?」
「私も恋してるから…ミリに」
これは意外だったわ。
!!いいこと思いついたわ
「告白……したのかしら?」
マーレは赤面した。
手足をもじもじさせながらも―――
「したよ」
答えた。
そしてそのまま話を続けた。
「でもまだ返事はもらってない。けど、多分ダメ。だってミリは好きな人いるから…」
話し終えたマーレは悲しそうな表情を浮かべていた。
私はその表情が嫌だった。だから私は違う方向を向いて、この空気を変えようと頑張った。
「そう……あなたも大変ね…」
あれ、待って。
空気はこれで変わったということにしておいて、私の“恋”を忘れられてるような…気がするんだけど・・・気のせいかしら?
まぁ、聞いておきましょうか、私の恋って妹なのか。
「ねぇ…私の恋って、妹なのかしら?」
「妹さんの目…見れる?」
え…たったそれだけなの?
私、普通に見れちゃうわよ
私はあっちに立っている妹の目を見た。
だけどすぐに逸らしてしまった。
「な…ぜ…」
「それが恋…なのかもね。あたしもある時から全然見れなくなったから…。じゃあ、あたしはこのへんで」
そう言うと、マーレは立ち上がり、ミリの方へと歩いていった
「何話してたの?」
「秘密秘密」
仲が良さそうだわ。
あんなに仲がいいって事は恋も芽生えるわな。
でも私たちなんてたまにあうだけ。
話すのも少しだけ
でもなぜ?
抱きついてこないだけで痛むの?
あぁー分からない!
「エンビル〜ちょっとこっち来て〜。いつまでもそっちにいるんじゃなくてさ」
「あ、はーい。姉さん」
分からないからとりあえず、とりあえず妹を呼んだ。
「で、姉さん。なにかよ―――」
ギュッー
「姉さん…いきなり……何や?」
「―――分からない」
本当に分からない。
だけど無意識のうちに妹を抱きしめていた。
するとなぜだか安らかな気持ちになった。
「え…姉さん、分からないって―――」
「だから分からないの!!……でも抱きついてこなかったから痛いの!!…体じゃない、心が―――」
「……姉さん。悪魔たちは心が無いって知ってるよね?でも、心は作れるんや。そう―――恋愛によって」
思いがけない言葉が妹からとんだ。
その瞬間、私は気づいた。
「エンビル…まさか……」
妹は私から一歩下がり、こう言った。
「姉さん。あたいは前から姉さんが好き…大好き!あたいでよければ……付き合ってくれない?///」
妹は赤面した。
それに負けないくらい、私も赤面したと思う。
その次の瞬間、私は無意識のうちに言葉がでてた。
「私も好き、大好きよ…エンビル♪付き合いましょ///」
「姉さん…大好き」
「私も…大好きよ」
ゆっくりと近付き、また抱き合った。
今度はしみじみと。
そして、顔を近付けていき、唇と唇を合わせた。
妹は見かけによらず、強引だった。
妹から舌を入れ、姉さんの舌に絡み合わせた。
クチュクチュという音が、この騒然とした中、静かに聞こえる。
姉さんの舌はほんわか温かく、優しい味がした。
妹の舌は、体型から見ても分からないほどの大人っぽさが出ていた。
舌と舌が離れるとき、唾液の糸が引かれ、切なく切れた。
「はぁ……はぁ…」
「姉さん…あたい……夢だった……こうやって恋人になるのが……」
妹は私の恋人になるのが夢だったらしい。
私は呼吸を整えながらも聞いた
「エンビルって…いつから私を……好きになったの?」
妹は恥ずかしながらも答えた
「昔…あたいが転んで泣いていたとき、姉さんがこう言ってくれた。“転んで泣くのは一人だけ。転んで笑うのは二人だけ。だからエンビル……笑って♪私がいるから笑って♪”って言ってくれた時、あたいは姉さんが好きになった」
「…あの時なのね。これから一緒に住もうって時の前日」
「あの時の言葉がなかったら…あたいは此処にいなかったかもしれない。」
「私もあなたがいなかったら壊れてたかもしれない。来る日も来る日も…命令命令命令…あなたがいなかったら……考えたくもないわ」
少しの間沈黙が続いた。
何か言おうと考えたら、この言葉が最初に浮かんだ。
だから私はその言葉を言う
「「ありがとう」」
妹も同じ言葉を…!?
驚いた。
けどその前に、やっておかなければならないことがあるの。
だから私は驚きの言葉を言わず、違う言葉を言った
「エンビル…この命令が終わったら……デートしよ?」
「姉さん…綺麗な夜景の見える場所がいいな」
「分かったわ。じゃあ約束」
「約束や」
私たちは互いにうなずいた。
本番はここから始まる