perfect world
目が覚めたらそこは、空の上だった。私は
「のわぁぁぁっ!?」
と、声をあげてしまった。
ここはどこだろう?私は、まだ眠りから覚めていないのか・・・?
そういえば今日は何曜日だろう。平日だったらやばい。なぜかって?学校があるからだ・・・。
私は、不安に思い唯一手にしていた携帯電話を開いた。画面をひらいた。
そこに写っていたのは、日付と待ち受け画像ではなく、ただ、何もかもを飲み込むような、闇だった。
電源をつけてみたが、いっこうに画面が明るくなることはない。
「嘘・・・」
(どうしよう。ここは本当にどこなの?今日は何曜日?)
不安の波が私を襲う。
あ、そういえば私の紹介がまだだった。私の名前は、瑠美奈。
今年で高校一年生になったばかりの青春まっただ中人生エンジョイ中だ。これから山場だというのにこんな状況におちいってしまった。
ただそこに立ちつくしていた私のそばに一人の男性が空の上を歩いてやってきた。唖然とする私をその男性は、怪訝な顔をしてみてからこう言った。
「何か俺の顔についているか?」
一瞬私は、その男性が誰にむかって言っているのか分からなかった。なので
「わ、私に言っているの?」
と聞いた。そうしたらその男性は
「当然だろう。お前しかいないんだから」
と、冷たく言い放った。
私は恥ずかしくなってうつむいてしまった。
途端に空自体がゆがんだ。
「な、何!?」
「・・・・・来るぞ・・」
男性はただそう言った。
(どうしよう)
立ち上がらなくては、と、思うのに足がすくんで動けない。
目の前にとてつもなく大きな影が私の姿を隠した。
「おいっ!お前!!!」
パァンッ
気がついたら私はベッドの中にいた。
「ん・・・・ここは・・・」
「・・・・・俺の家だ。」
驚いて顔を上げるとそこにいたのは先ほどの男性だった。
「・・・?なんだかよく分からないけれど有難う・・?」
と言ってみた。また怒られてしまうかと思ったから、すこし、小声で。
ただ、名前が分からなかったので名前を聞いてみることにした。
「「名前は・・・?」」
二人同時に名前を聞いたため、声が重なってしまった。
だから私はぷっと吹き出してしまった。
「・・・何笑っているんだよ・・・」
「べ、別になんでもないです・・・」
「変な女だな・・・名前は?」
「あ、瑠美奈です。山城瑠美奈。」
「瑠美奈・・・おれはタイシだ。」
「タイシ・・・さん」
「あ、あの、ここはどこなんですか?」
たくさん疑問があるのだがそのなかで一番おおきかった疑問をつい口にしてしまった。
「?だから、俺の家だって。」
「そうじゃなくって・・・なんていうのかな・・・この世界?この世界は地球上の中の一つの国です・・か?」
タイシさんは少々ずれているようだ。
「ここは・・・・」
ブッツン
そこで私の目の前は真っ暗やみに包まれた。
「瑠美奈!!!起きなさい!」
(え・・?)
「遅刻するわよ!」
「え・・?」
(お母さんの声・・?)
先ほどの世界は何だったのだろうか・・・。
私は大きな疑問を抱えたまま学校へ向かった。
あれは夢だったのだろうか。
あの不気味な夢の世界での出来事が起きてから3日ほどたった。私は何もなかったかのように普通に楽しく過ごしていた。
その時点ではまさかまたあの世界に連れて行かれるなんて思ってもいなかった。
・・・・そう。あの苦しくて、悲しすぎる出来事が起きるまでは。
「る~~~み~~~な~~><」
(ちか・・・ちゃん・・・?どうしたんだろ・・)
「るみなぁ!起きて!あの鬼教師がやってくるよぉ!><」
(鬼・・教師・・!?)
「えっ!?!?!?!」
「「は?」」
「「何今の叫び声??」」
クラス中が私の叫びで一気に騒ぎ出す。
「る、瑠美奈ぁ?大丈夫ぅ?」
「「おいおいぃ山城かよ~~~wwww」」
「「瑠美奈ちゃん??^^;」」
スパァンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「おいお前らぁ!五月蠅いんだよさっきから!!!他のクラスは授業中なんだぞ!?よく考えろ!」
「・・・・いや・・でも・・・先生のがうるさか・・・」
「なんか文句あんのか?」
「い、いえ、ないです・・・」
この、いま教室に荒々しく入ってきた人が私とちかちゃんが言っていた鬼教師だ。すぐ怒るからこういう名前が付いてしまった。
本名は石崎勝太。外見と声、共にかっこいいので私たちが入学した当初は王子ティーチャー!と女子生徒の間では株があがっていたのだ。なのに授業中うるさかったりふざけていたりすると、怒る。
なんでも、勝太先生は大阪出身らしく普通に話すときは関西弁で、授業中も面白いギャグを言って生徒たちを笑わせながら楽しく授業を進めていく。
しかし、昔は大阪一の不良組、kyoubouという変な名前の組の総長をやっていたらしい。どんなネーミングセンスだ。
授業の質はとてもいいのにもったいないという声もおおい。
「じゃァ授業始めるぞー。教科書150ページ開け―。」
コソっと私がちかちゃんに話しかける。
「なんでせんせいってあんなに豹変すんのかね~~」
「本当だよね~~。マジもったいないよ~~><」
パラパラっ
ページをめくる音がする。
「ちかちゃん、150ページだよね?」
「・・・・・・」
返事がない。
「あれ?無視!?」
「・・・・」
「ぶぅっ・・なんで無視すんのさぁ><」
「おい、瑠美奈。」
「ハイ、なんですかおにきょ・・勝太先生・・?」
「おにきょって何だよ。まぁいいや。お前俺の事もう忘れたか。馬鹿だな。」
何を言っているのだろうか。私は毎日この鬼教師に会っているのだから忘れるわけないのに・・・
「はい?先生?何言ってるんですか?」
「・・・これで分かるか・・・」
パンッ
「あ・・・・・」
「っけ・・・なんで俺があんなののふりしなくちゃならないんだよ。おい瑠美奈、帰るぞ。」
(は?帰る?私の帰るべきところはここなのよ?何言ってるのこの人・・・・?)
「たいし・・・さん・・・?私の帰るところはここ日本ですよ・・?ここここ。」
「ふぅン・・・?馬鹿だと思っていたけれど施しようのない馬鹿とまではいかなかったようだな。てか、お前馬鹿じゃねぇの?ここじゃねぇよ。お前の帰るべき場所は。」
「馬鹿じゃないです。そんなことどうでもいいですけど・・なんで!?私の帰る場所はここでいいの!!て言うかまずここ以外にどこがあるのよ!?ないでしょう!?ねぇ?・・お願い・・答えて・・・よ・。」
「本当は分かってんだろ。わざわざ言わせんじゃねぇよ。」
「・・・」
「・・・行くぞ。」
ブォン
黒い入口が現れた。その入り口は、私の心を見透かしているようだった。
だって・・・・・
その入り口は、巨大な瞳の形をしていたから・・・・
分かってる。この瞳の中に入ったら、もう、この世界には戻れないってこと。
分かってる。行こうが行くまいがどちらに転んでも、結果的に、私はこの世界にいられないことも。
分かってる。私がもうこの世界の住民ではないことくらい・・・・・。
すべて、分かっている。
分かっている上で、私は・・・・・
この瞳の中に・・・・・・・・・・
入っていく・・・・
第2章:perfect crusher
どこまで歩いても、真っ暗な、闇。
「ね、ねぇ・・・タイシさん。私たち、どこに向かっているの・・・?」
先を行くタイシに話しかける。
「・・・・」
歩く速度が速くなっただけで、返事には答えてくれない。無視か・・・。むかついてくる。
「ねぇ、聞いてるの?」
返事はない。靴音が、響く、だけ。ただ、それだけ。
「ねぇっ!」
ザンっ
「!?」
頬を、温かな液体が垂れていく。一瞬にして、理解した。
温かなそれは、私の体を流れる、赤い赤い、血 だという事が・・・。
「きゃ!?」
ビュンッ
とっさによけてはみたものの、飛んできたものが何だかわからない。
「タ、タイシさん!?何すんのよ!?」
「・・・」
相変わらずタイシからの返事はない。そのかわり、得体のしれないものが飛んでくる。
「タイシ・・・・さん・・・・?」
ぐちゃっ ぼたぼたっ
酷い腐臭がしたと思えば目の前のタイシが溶けて崩れていった。
「な、なによこれっ!?!?」
今さっきまでそこにあったはずのタイシさんの肢体は面影を失くし、その肢体は大剣へと姿を変えていた・・・・。血に染まった大剣・・・。
「どうしちゃったのよ・・!?!?」
瑠美奈は腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
しかし、容赦なくその大剣は瑠美奈を切りつけてゆく。
「なんなのよ・・・・」
ザシュッ
「うっ・・・」
肩を切りつけられた。瑠美奈はその場に倒れ伏せた。
「ったぁ・・・うっざい・・・」
瑠美奈の瞳に影が生まれる。真っ暗な、闇が・・・・。
目前に刃が迫る。それを間一髪のところでよける。
「私の事怒らせるなんて・・・・大したものじゃないのよ・・・」
瞬間、瑠美奈の体がその場から消えた。
「行動がおそいんじゃぁない?まぁ剣だから仕方がないか♪」
剣の上に、影ができる。一人の少女の。
「うらぁっ!!!!!」
天から、足が降ってくる。
どっしゃぁ
「ふぅ・・・甘く見ないでほしいよね・・・?」
血の滴る大剣を、踏みつぶし、自らの手で握る。
ぐしゃっ
「・・?なんだ・・・案外もろいじゃない。」
ぶしっ
「!?んっ・・!?」
血が吹き出る。大剣から。大量の血が。
「よくもまぁここまで出来たな。」
後ろから声がする。
振り返ると、そこにはタイシがいた。
「タイシ・・・さん??」
「オツカレ。今のは検査みたいなもんだ。あっちの世界で過ごしていく資格があるかどうかの。」
「え・・・・?」
自分の手から滴ってゆく、真っ赤な水。
「ーーーーーー・・・・?」
タイシは、今彼女が口にした言葉に、耳を疑った。
だって彼女は、
(なに・・・・これ・・・・)
と、言ったのだ。信じられない物を見たような目つきで、彼女は自らの右手を見つめた。
「お、おい、お前今なんて言った・・・?」
「・・・・・っへ・・・?な、なにが・・?」
なにが?っていうか何よこれ。
そういう彼女の体は震えていて。
___嗚呼、本当に彼女は何も覚えていない、わからないんだな、と、思ってしまう。____
みてくださってありがとうございます☆まだまだ続くので、興味がわいた方は、これからも読んでいってください!