Game 3
Game 3
章弘君またさっさと帰っちゃったな~
末次玲菜は頬杖をつき、帰りのHRを待っていた。
「玲菜~」
どうしよう…。今日こそはって思ったのに…。
「玲菜っ」
追いかけようかな~。でも姉崎が一緒だし…。
「玲菜!」
「は、はい!」
玲菜は思わず立ち上がる。
声が裏返ってしまった。はずかしい。
「何ボーっとしてんの?」
目の前には親友の神埼春が立っていた。
「もしかしてまた田岡?」
「うん…」
春は私が章弘君を好きなことを知っている。
「今日、告るって言ってなかった?もう行っちゃったよ?」
「うん、知ってる」
「追いかけようよ」
「え?」
春の口からは思いもしなかった言葉が出た。
「だから、一緒に追いかけよ。祐輔は私がどーにかするから」
「え、いいの?」
「あったりまえ!」
玲菜は顔を輝かせた。
「じゃ、行こ!」
「うん!」
春が友達でよかった~。でも、断られたらどうしよう…。
そう考えると、また足がすくんだ。
「大丈夫かな?」
玲菜は不安そうに春に聞いた。
「きっとね」
春はかわいらしくウィンクしてみせた。
下足箱に向かう途中、担任とばったり会った。
そこで春が先生につかまった。が、春のおかげで私はここまでこれた。
「ゲーセン行こうぜ」
姉崎の声だ。
いる。
すぐそこに。
玲菜は必死に荒い息を我慢する。
「いいぜ。そういえば最近できたあの店行こうぜ」
今度は章弘君の声。
急に鼓動が早くなる。
ここで行く―?
いや、姉崎が邪魔だ。
せめて春がいれば…。
じゃあ尾行?
うん。それしかない―。
玲菜は決意した。
そして章弘たちがちょうど下足箱を出て行ったあたりに、急いで靴を履き替える。
「急がなきゃ」
そのまま玲菜は春が来るまで彰浩たちを尾行した。
「ここ、ここ」
章弘が大きな店の前で立ち止まり、指を刺す。
何てはでな店なんだ。昼間だというのに、ネオンが光り輝いている。
すると章弘たちはその店に入っていった。
ええ~どうしよう…。こんな店は入れないよ…。
玲菜は春にメールした。
件名:章弘君
本文:尾行していたら大きなゲームセンターに章弘君たちが入って行っちゃった。お願い!早く来て!
【送信完了】と液晶画面に表示されると、玲菜は意を決し、店に入った。
店内は思わず耳を塞ぎたくなるようなうるささだった。
玲菜は一瞬顔をしかめ、章弘を捜す。
章弘君どこ?
きょろきょろしていると、スロットで遊んでいる章弘を見つけた。
だが何だか不機嫌そうな顔をしている。対する祐輔は、上機嫌だ。
章弘君どうしたんだろ…。
「玲菜!」
いきなり肩を叩かれ、玲菜はひゃっという声とともに飛び跳ねた。
「春!」
そこには春が立っていた。
「田岡は?」
「あそこ」
玲菜は章弘のいるところを指差す。
「じゃ私が祐輔をどけるから、その時外に呼び出して、いきな!」
「う、うん…」
またもや緊張してきた。
心臓の音が小刻みに聞こえる。すると、
「あっ、動き出したよ」
春が囁いた。さっきまで章弘がいたところを見ると、いなくなっていた。
「追いかけよ」
春は玲菜の手を取り、歩き出す。
すると、章弘たちは【MUSICAL CHARS】と書かれた部屋に入っていった。
「私たちも行くよ」
春がかけだす。玲菜も続く。
そして春が扉を開けた。
「えっ?」