Game 1
Game1
蒸し暑い―。
もうじき夏が始まろうとしているという頃にこの暑さだ。
夏が来るのが恐ろしい。
「クソ。暑すぎて勉強なんかできねぇよ」
明日に控える中間考査のために、田岡章弘は机に向かっていた。が、もともと集中力に欠ける章弘に、さらにこの暑さが加わると、勉強などできるはずもなかった。
「あーも。やめだやめ!」
握っていた鉛筆を机にほうり投げ、大きく伸びる。するとそこに携帯の着信音が鳴った。
「誰だよ…こんな時間に…」
時刻は午前2時。
液晶画面を確認すると、【田中絵里】と表示されていた。
「もしもし?」
「あっ。章弘?私だよ。絵里。」
「ああ。で、何?こんな夜遅くに」
章弘が迷惑そうに聞くと、
「そろそろ章弘の集中力がなくなる頃かと思って」
と能天気な声で答えた。
余計なお世話だ!
「それで、俺に電話したの?」
「うん。エールを送りに」
「そうか…。ありがと。でも俺もう寝るから」
章弘は大きくあくびをする。
「そっか。じゃあまた明日ね。ばいばい」
「じゃあ」
章弘はたまらず大きなため息をついた。
絵里とはつきあって5ヶ月になる。おせっかいだが、なかなかいいやつだ。
章弘はとぼとぼと歩き、電気を消す。そしてベットに入った。布団を羽織ったが、熱くてたまらず蹴り飛ばす。そして、何度か寝返りを打ち、眠りについた。
これから恐ろしいゲームに巻き込まれることも知らずに…。