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シンデレラ召喚  作者: 桃巴


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シンディ25

 さて、また母上と離れて動きます。

 庭園にどうやら王子が巡ってきたようです。

 二つの人集りができております。


 母上には目配せして、舞踏会場に行くと軽く指差しました。

 母上が小さく頷くのを確認し、庭園へ集まってくる人の流れとは逆方向へと進みます。


「少し、ひとりになる場でもあればいいのだけれど……」


 気持ち悪いのです。

 体調不良でなく……胸元が、蒸れてしまって。嵩増しを一つぐらい取っても大丈夫よね。


 庭園から王城内へと続く外通路の途中で、足を止めました。

 周囲を見回し、人目のない場所を探します。


『リゼ姉』


 どこからか、シンディの声が聞こえてきました。

 視線を動かしますが、どこにいるのかわかりません。


『上です』


 反応して顔を上げました。


「なっ!?」

『騒がずに、視線を戻してください』


 まさかの天上黒装束。それも周囲に同化していて、見慣れた私でないと気づきませんわ。


『ひとりで休める場ですね?』


 コクンと頷きます。

 声でも出して、警護の騎士にでも見つかってしまったら大事ですから。


『通路先、三個目の二階バルコニー下、生け垣の内側に空間があります』


 また、頷きます。


『ご健闘を』


 ……ご健闘?


『では』


 チラッと上を見ました。

 もう、シンディの姿はありませんでしたわ。


 とりあえず、通路を進みます。

 一個目のバルコニーを目視、本来ならその手前で王城に入る扉になります。人がいないタイミングを見計らい、スッと奥へと向かいます。


 バルコニー下には整えられた生け垣が続いています。生け垣裏は確かに少しだけ空間がありますが、休めるほどの幅ではありません。

 上を確認しながら、三個目のバルコニー下に到着。


 そこの生け垣だけ、半円形に刈られていて内側に空間がありました。

 見上げたバルコニーの形も半円形。

 一個目、二個目のバルコニーは四角でしたから、そういう様相美なのでしょう。


「ふうぅぅ」


 気を張っていた身体が弛緩します。


「とりあえず、取ろう」


 胸元の嵩増しパットを手を入れて抜きます。こんなの誰にも見せられないわ。

 休憩室はあるのでしょうが、嵩増しパットを取るなんてことはできないし。


「……だめ、もうちょっと取りたい」


 いつもより多く入れております状態ですから、蒸れに蒸れて気持ち悪いのよ。


 胸元に手を入れて、スポッと……。


「ヤバい……汗でひっついてて片方全部取れちゃったよ……」


 でも、気持ち良し。


「こっちも取っちゃおう。また、入れたらいいし」


 スポッとな……

 リゼ、快感!


「ふふぁあーんっ」


 目を閉じ大きく息が出てしまいましたの。


「おい」

「ひぎゃあぁぁーー」


 突然の男性の声に、ポーンとな……

 嵩増しパットを投げてしまいました。

 それよりも、声の主です。

 いったい、どこからなの?


 周囲を見ても誰もいません。


「なんだ、空耳だったのね」

「上だ」


 ビックンと身体が跳ね上がりました。

 シンディなら良いのに、絶対に違うとわかりますわ。

 ……恐る恐る見上げました。


 ジーザス!


 覗き込んで見ている殿方のお顔……

 その手には、嵩増しパットがムギュッと掴まれております……


 私リゼ、泣いていいですか?


「これは……なるほど……」


 殿方が私を見下ろしております。


 ど、ど、ど、ど、どうする?


 あれね、あれ! シンディが言ってたわ。


「つまり、キューピットの矢が刺さっても大丈夫なのです! どうか、お気になさらずに! これが、ありのままの姿です。べ、別に私は、少しも寒く……いえ、恥ずかしくありませんわ! 自慢のボディです!」


 殿方が私をガン見しています。

 私ったら、何を脈略なく口走ってしまったのよぉぉぉぉ!? 自慢しちゃってどうすんのよぉぉぉぉ!


「掴め」


 あ、返していただけるみたいね。

 なんて、お優しい殿方なのでしょう。


「あ、ありがとうございます」


 殿方がバルコニーから落としてくれます。

 落ちてくるそれを掴みました。


「いいか、そこで待て」


 うーん、良い香り。

 これは赤い薔薇よね?

 ……小首を右に左にと傾げます。

 もう一度、右に左にと。


「えーっと……嵩増しパットは?」


 再度見上げますが、殿方はおりません。


「はあ、ありのままの私で帰宅しなきゃね。別に恥ずかしくないし。母上に帰りを急がせなきゃ」


 生け垣を出ます。

 手には赤い薔薇を持って。

 足取り軽やかに。

 だって、胸が暑苦しくないから。


「……あれ?」


 足が止まります。ちょうど二個目のバルコニーの真下。

 見つめれど見つめれど、一輪の赤い薔薇。


「ようやく、巡り会えた」

「え?」


 よく通る声です。

 赤い薔薇の向こうに、さっきの殿方が見えます。

 ズンズンと歩いて近づいてきています。

 そして、私の前で片膝を立て、跪きました。

 赤い薔薇を持つ私の手に手を添え……


「どうか、私と二曲踊っていただけませんか?」


 流れるよう立ち上がり、赤い薔薇を私の髪に挿しましたの。





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― 新着の感想 ―
き、キューピットの矢が刺さりましたわー! ラブストーリーは突然ね
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