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シンデレラ召喚  作者: 桃巴


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24/30

シンディ24

 もう、最終日になりました。

 夜の部に向かう準備中です。


「……本当は、夜会など出ずにベッドに倒れ込みたい」


 本心です。


「グエッ」


 ギュッと腰回りを締められました。


「シァ……ゥッ、ちょっと締めすぎよ!」

「だって、ドレスがちょっと緩くなっていましてよ」


 シアが『指二本分』と背後で言いました。


「そりゃあ、三日間昼に夜にと多忙だったからね」


 少し痩せたみたい。


「まさか、こちらまでもその影響が出ているなんて……私シンディの目測誤りです」


 シンディが嵩増し量を増やします。

 そうやって、見事なまでの……謀りボディが完成しました。


「そういえば」


 助っ人のベーレン夫人が口を開きます。


「聞くところによるとね。赤い薔薇はまだ誰も手にしていないみたい」

「そのようね。確実な情報よ」


 アーデルン夫人も続けておっしゃいました。

 確実と言えるのは、王城事務方のトルクさんから聞いたからなのでしょう。


「夜の部に至っては、薔薇一本たりとも渡されていなくて、装飾花と化しているみたい。皇太子殿下は(がん)として誰一人とも踊らず、誰一人にも薔薇をお渡ししていないのですって」

「だから、最後の夜会ではダンス要員として、第二王子と第三王子もご出席されるそうよ。両王子ともに赤い薔薇の唯一を選んでいないから、最後の夜会に期待しているのかもね。……本人らでなくて、周りが」


 アーデルン夫人とベーレン夫人が、状況を教えてくれました。

 私たちは忙しかったから、王城から漏れ出る情報に疎かったもの。


「じゃあ、今夜誰が選ばれるのか見ておかなきゃ。それから、社交がどう動くのかも」


 慶事によって、社交の流れが変わるもの。

 (きさき)が流行の最先端になるから。


「メインホールよりもコソコソできる場の方で、重要情報は密かに伝わっていくものよ」

「おのぼりさんでいたら、気づかないわ」


 アーデルン夫人とベーレン夫人が息の合った会話をしながら、髪飾りをつけてくれました。


「視界は中央でなく四隅ということですね」


 光る場は目眩まし。

 薄暗い場でことは起こる。


「そ。では、御三方行ってらっしゃいな」


 アーデルン夫人にそんな言葉で見送られ、母上と私リゼ、シンディは王城に出発しましたの。




「すごい熱気」


 夜会場に入る前から、すでに人混み酔いです。


「本当に」


 母上がハンカチを口元に当てました。


「会場は、舞踏会広間、立食部屋、庭園となっております! 殿下方々は、会場を巡ります。殿下からお声がいただけましたお方は、桃色の薔薇を髪飾りに舞踏会場で一曲踊ってください!」


 そこかしこで役人が声をあげています。


「殿下から、赤い薔薇をいただけましたお方は、二曲続けて踊ってください! 選ばれし赤い薔薇の御仁はおひとりのみです!」


 ……なんか、興ざめだわ。


 ハーレム夜会、

 俺の女を決めるぜ夜会、

 なんて、シンディが言っていたわよね。同感よ。


「あの人集りから離れましょう。そうすれば、人は少なくなるでしょうし、四隅の方が何か耳にできることがあるかもしれないわ」


 人集りの中心には、きっと王子たちがいるのでしょうから。


「そうね。庭園に行きましょう」


 母上がおっしゃいました。

 人混みから逸れて、庭園に向かいます。


「では、私は茂みで着替え、影に扮します。後ほどまた」

「ちょ、えぇ!?」


 シンディがサッと動き、瞬く間に姿を消しました。

 母上と顔を見合わせます。


「「……シンディだしね」」


 頷き合って終了です。


 夜風で涼みながら進みました。

 ライトアップされた庭園が見えてきます。

 そこも、もちろん人集りがあります。王子のひとりがいるのでしょうね。


 きゃああああぁぁぁぁ


 突如、歓声が上がりました。


「桃色の薔薇が見えますね」と母上。

「集団が動きますね」と私リゼ。


 ただただ眺めてお見送りです。

 そして、静かになった庭園で母上と分かれ活動開始しましたわ。


 ーー

 ーーーー

 ーーーーーー


「それでは、よろしくお願いします」

「こちらこそですわ。どうぞ、当店にお任せくださいませ」


 営業成功しましたわ。

 着付けと髪のセット、お化粧を任せられました。

 地方から出てきた名家のご婦人で、毎年シーズンは王都で過ごすそうなのだけれど、お抱えの侍女が手首を痛めたそうで、社交の身支度にひと苦労していると話されていてね。


 お声がけしましたの。

 怪我が治るまで、メイトレン家第二店舗でお支度することに決まったわ。


「シーズンに毎年王都に行くからと、五人も押しつけられたのよ。全く、迷惑だったわ。三日間連続王城通いだったもの」


 ご婦人が愚痴をこぼします。

 王子様を夢見るお嬢さん方を引き連れて、王都に来たのだそう。

 その身支度のせいで、侍女が手首を痛めたの。

 そりゃあ、ひとりでご婦人と五人分の身支度担当はきついでしょう。


「いつもは王都で短期の侍女を雇うのだけど、この会のせいで人手不足になっていてね」


 ご婦人の愚痴は続きます。

 それに相槌を打って、ご婦人の不満の捌け口になりました。


「でも、良かったわ。あなたに巡り会えて。安心して社交に向かえますから」

「私の方こそですわ」


 今シーズン満足いただければ、きっと来シーズンもご利用いただけるかもしれないわ。

 短期で侍女を雇うより、安価で気軽でしょうから。


「母上にご紹介致しますわ」


 ご婦人を、少し離れた場で話の花を咲かせている母上へと促しました。

 母上も何か得たようですね。





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