表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンデレラ召喚  作者: 桃巴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/30

シンディ21

 二人の着替えが済み、皆で夕食となりました。


「本当に感謝致します」


 修道女さんが言いました。

 いえ、侍女ね。


「このお方は、エルラ姫でございます。……先日、婚約解消となりまして、帰国の途についておりましたが」


 そこで侍女が顔を歪ませる。

 何度か薄く口を開け閉めして、どう続けようかと悩んでいるみたいね。


「命を狙われたのですか?」


 シンディが言いました。

 二人の息がヒュッと止まります。


「はい……」


 エルラ姫が小さく答えました。


「誰に?」


 率直な疑問でしたから、口をついて出ました。


「母国の王妃(ままはは)にでございます」

「継母……ですか?」


「はい」


 応えたエルラ姫が続けます。


「私の実母が亡くなり、父上は新たな王妃を召しました。召す前に、私を次の女王、皇太女だと決定して。ですが……三年前に王妃が男児を出産されて、状況が一変しました」


「なるほど、お決まりのコースですね」


 シンディがここでもズバッと言い切ります。


「フフ……確かにお決まりのコース、言い得ておりますわ」


 乾いた笑いとともに、エルラ姫が肩を落とします。

 そして、侍女に目配せして続きを託したみたい。


「嫡男を推す声は日増しに高まり、エルラ姫の、いえ……皇太女殿下の不遇が始まりました。信頼する者は王妃(ままはは)に罷免されたり、配置換えされたり、殿下の周囲が私以外には王妃の息のかかった者だけになりました。それからは、立場が逆転し侍女が殿下を蔑み、召使い扱いするような日々……」


 侍女が唇を噛みます。


「そこに、この婚約が浮上してきました。王妃が殿下を排斥するために動いたのでしょう。ですが、殿下にとっては渡りに船でございます。この婚約で不遇生活を脱せられるのですから。それなのに……」


 婚約解消となり帰国するとなれば……言わずもがな。

 

「私の居場所はもうどこにもありません」


 エルラ姫が項垂れました。


「フン、居場所は自分で作るものでしょうに。甘チャンですね」

「シンディ! 言葉が過ぎますよ」


 母上が慌てて諌めますが、シンディはどこ吹く風。


「女王ルートも与えられ、不遇ルートもされるがまま、婚約ルートで逃げようとすがりつき、いつも誰かに与えられたルートに身を置くだけ。反骨心のない者に国など任せられませんから、今の状況がお似合いでは? あんたさ、ひとりで何ができんの?」


 辛辣……過ぎるけれど、確かに言われてみれば、その通りかも。

 エルラ姫に国を任せられる気概を感じない。私がひと言で現すなら、エルラ姫は弱虫。


「ああ、できることはあるか。召使い経験があるものね。まあ、それも与えられてやったことだけど。ちゃんと身についているかは未知数。で、どうする? 自分で決めなよ」


 シンディは辛辣口調を止めないわ。


「姫、こんな不敬な物言いは許容できません。お暇致しましょう」


 侍女が憮然として言いました。


「出ていく判断も人任せなんだ。そりゃあ、女王なんてなれないし、王子妃だって務まらないか」


 エルラ姫は拳を強く握り締めてスンスンと鼻をすすっております。

 侍女がエルラ姫を促します。

 よろよろと立ち上がりました。

 一歩踏み出すかと思いきや、ギュッとスカートを掴んで、首を横に振りました。


「……ここで、働かせてください!」


 突如、叫びましたの。


「姫!?」


 侍女がびっくりしています。


「ここで働かせてください!!」


 エルラ姫が頭を下げました。


「姫、そのようなことはお止めください!」


 侍女がエルラ姫を起こそうとしますが、何度も働かせてくださいと言っては、頭を下げています。

 侍女が母上に助けを求めるように、視線を向けます。

 きっと、母上が、


『エルラ姫にそんなことはさせられませんわ、気の済むまでご滞在を。私たちがお世話致します』


 そんな言葉をかけてもらいたい、と視線が物語っています。

 頭を下げて懇願しているエルラ姫からも、それをそこはかとなく感じます。……第二王子に縋った状況と同じでは?


「エルラさん、その服がおいくらか知っておりますか? この夕食がただではないということも」


 母上は穏やかにおっしゃいました。

 姫、とは呼ばず。


「お供のあなたも、このメイトレン家を紹介してもらい、おんぶに抱っこの予定でしたか? なんとかしてもらえると?」


 侍女の方にも母上はおっしゃいました。


「そ、それは……」


「失礼ですが、お二人とも姫でも侍女でももうないのでは? 姫であり侍女でありたいのなら、母国にお帰りなさいませ」


 エルラさんもお供もハッとします。


「お二人は今現在、無職の宿無しの者なのです。唯一手を差し伸べてくれたであろうトルクさんの気持ちを、無碍にしたいのですか?」


 シンディの辛辣指摘からの、母上の心に沁みる説きです。

 お二人の表情にやっと意思が生まれます。

 現実を直視できたのでしょう。


「ここで働かせてください。エルラと申します」

「ここで働かせてくださいませ。ドリと申します」


「シンディ、どう?」


 母上がシンディに判断を仰ぎます。

 シンディは頷きました。


「リゼ姉、シア姉、新人(ひよっこ)にお言葉を」


 シンディったらニッと笑っています。

 本当に人の尻を叩くのがお得意ですこと。私たちだって、そうだったもの。

 今度は私たちがその役目よね。


「メイトレン家へようこそ!」と私リゼ。

「お二人とも歓迎するわ!」とシア。


 こうして、メイトレン家に新たな家族が増えましたわ。






 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ