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シンディ17

 ーー事業計画書ーー


 なるものを、シンディから見せられたのは、緊急会議の三日後でした。


「『レンタルドレス』事業の計画書です」


 シンディは二枚のドレスを私たちの前に披露しましたの。

 メイトレン家に残っていた超古めかしいドレスをリメイクしたようです。


 何げにメイトレン家には古式ゆかしい年代物ドレスがありますの。

 ……買い取りもされないようなドレスです。

 ちなみに、私たちの物でもなく、先祖の物でもありません。

 あの父上が、金策に走るちょっとした程度の知り合いから頼まれ、お金を融通する代わりに譲り受けた物です。

 こっちだって事業が傾いていた頃だったのに。

 そして、そのちょい知り合いは行方をくらますという顛末を迎えましたわ。ま、予想はしておりましたけれど。


「今回のハーレム夜会には」

「ちょ、ちょっと待って! ハーレム夜会って」


「成人未婚女性をわんさか呼んでこーいの会、の方がよろしいでしょうか?」

「その表現もどうかと……」


「じゃあ、俺の女を決めるぜ夜会、では?」

「もっと悪いわよ」


「じゃあ……乙女にひとときの夢をの夜会、という案が最後ですよ。もう、これ以上私シンディでは表現できませんから。ハンッ」


 なぜに、そんなにキレ気味なのよ、シンディ。


「そ、そうね。王子様にひと目会えるなんて、乙女の夢よね」


 同意しておきます。

 だって、シンディがきょわいから。


「乙女の夢夜会よね。ウフッ」


 母上に倣い、場の雰囲気を汲んでみましたわ。


「ふ……」


 鼻で笑われてしまいました。リゼ姉は小っ恥ずかしいわ。


「それで、シンディ。二着のドレスだけでレンタル事業をするの?」


 シアがごもっともな意見を口にしました。


「これはデモンストレーション用です」


 シンディが二着のドレスを手際よく……分離しましたの。


「上下分かれるセパレートドレスです。これによって、二着のドレスが、四着の装いになります」


 ほおほお。

 元々ふるーい時代には、豪華なセパレートドレスはあったけれど、今はハードコルセットもボリュームを出すパニエもワイヤーも廃れちゃったわ。

 座りづらいし、動きづらいから。


「数少ないドレスで、幾通りもの装いが可能になります」


 なるほど。


「数回開催される夜会で、装いが被ることがないようにできます。『あれ? このドレス、前も見たなあ』などと周囲(おうじ)に悟られないわけです」


 シンディは二着のドレスのスカートを入れ替えました。

 確かに、違ったドレスに見えるわ。


「ねえ、アーデルン家と競合になってしまわないの?」


 シアが訊きました。

 私もそれが気になるわ。


「アーデルン家は、ドレスを購入できる方々相手。このレンタルドレスは、アーデルン家の安価なセット販売でさえも手持ちが少なく購入できない方々に、サービスを提供するのです」


「素晴らしいわ!」


 母上とアーデルン夫人が部屋に突入してきました。

 お二人は私たちのドレスを打ち合わせ中でしたの。


「ご拝聴いただきありがとうございます。加えて、アーデルン家で売れ残ってしまったドレスも、このレンタルドレス事業に回せます」


 パチパチパチパチ


 母上とアーデルン夫人が拍手しております。


「基本は、アーデルン家の店舗で、購入断念した方々にのみこちらをご紹介いただくという流れでどうでしょう? メイトレン家はアーデルン家のおこぼれにありつきたいと」


 シンディがアーデルン夫人に会釈しましたわ。


「ええ、とても素晴らしいプレゼンでしたわ」


 シンディの先日の『ニマッ』はこういうことでしたのね。


 アーデルン家紹介でのレンタル事業にあえてしたのは、アーデルン家の競合にならないためだけじゃなく、需要を捌ききれないからよね。

 これから、リメイクに取りかかって準備できるドレス数は限られるから。


「旦那様に伝えておきましょう」

「ありがとうございます」


 話は上手くまとまり、この日からシンディのリメイクドレス作りが始まりました。

 家事の一部をラルクが担ったことで、少々……大いにバタバタとした日々を過ごすことになりましたが。




 さてさて、シーズン完全突入です。

 王家主催のシーズン始めの夜会が粛々と開催されました。

 それは、もうなんというか……気の抜けたような夜会だったと耳にしております。急ごしらえのようであったとも。


 それはそうでしょうね。

 本当は大々的に婚約相整いました発表をする予定の絢爛豪華な夜会の予定だったのでしょうし。


 夜会担当役のご苦労はいかばかりかとお察しするわ。

 それに、まだ発表されておりませんが、件の夜会の準備で大変でしょうね。




 ……と、慮っておりましたが、メイトレン家も大惨事が待ち受けておりましたの。





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