第309話 本物のはるねーちゃん、求められるはるねーちゃん
・・・・・あまりに理不尽だ
最も出来の良かった12体を順に載せていった遥
どの遥像も奇っ怪な動きで襲いかかってくる
幸いにして強いものではないから落ち着けば誰でも対処が可能なようだ
壊せばすべて粉になって消えていくからまだましかな・・人一人の大きさって結構幅を取るし、壊れたかどうかわからない状態の遥の像に警戒し続けるなんて怖い
関羽さんは一体目が動いて拳が顔に入った、でも少し驚いただけでダメージは無いそうだ
更に5体ほど像を破壊し、遥がキレた
「何なのよ、もー!!」
「もしかしたら、です」
「ミーキュちゃんどうしたの?」
「本人があそこに乗れば良いかも?なの、です!」
「「「それだっ」」」
早速台座に向かった遥かだがすぐに踵を返して戻ってきた
「皆離れてね、奈美、これ持ってて」
「重い!?」
「私も操られたりするかもだからね」
遥は私に長柄の武器を渡してきたがこんなの持てるはずがない
代わりに隊員さんに持ってもらって収納袋を預かった
「拘束しとこうか」
「そうね、私が皆に襲いかかったら遠慮せずに止めるように言ってね」
「わかった」
遥かの手首とガムテで十字に止めてロープで腕と足と腰を繋いで隊員さんに持ってもらう
像と違って遥が敵に回るのは恐ろしい
「行くよ」
「「「はい」」」
少し緊張した面持ちにもなってしまう
しかしここでの問題のポイントははるねーちゃん、つまり遥だ
子供の頃の遥像のことを指しているのなら答えにはならないけどこれは元々本人を連れてこいという問題だったのかもしれない
ただ、回答がこの場に用意されていない問題など不適切すぎる
小さな段差程度の台座に、本人がのった
が、何も起こらなかった
「< ク ソ が っ !!!!>」
台をふもうとした遥だがすぐに何もない場所を踏みつけ、手首のガムテープを腕の力で引きちぎった
バリバリと残ったガムテープを外してプンプンしている遥
「ごめんなさい、です・・・」
「ミーキュちゃん悪くないからね、可能性潰してくれてありがとうね、はるかも問題の性質に怒ってるだけでミーキュちゃんに怒ってるわけじゃないから」
「はい、です」
服の裾をつまんで謝ってくるミーキュちゃん
遥にはガムテの音で聞こえてないだろう
「でもこうなると・・やっぱり子供の遥かな?ミーキュちゃんはどう思う?」
関羽さんによればこの子も2神の加護を授かってるだけあってとても賢いらしい
このダンジョンではまともな問題とまともな答えは望めないけどそれでもこの世界でのセオリーを知っている人がいるのは心強い
「もしかしたら・・いえ、なんでもない、です」
片眼鏡を指にかけて部屋を見渡したミーキュちゃん
だけど答えは返ってこなかった
一体ずつ遥像を確かめていき似ているものや子供の頃の像は全て破壊された
少しずつ似ていない遥像を破壊していく、遥本人はかなり怒ってきていた
「ねぇミーキュちゃん、もしかしたらって言ってたのは何だったの?」
「でも、間違ってるかも、です」
「うん、間違ってるかもだけどこのままだと遥が疲れちゃうからね、間違ってても大丈夫だから教えてくれる?」
「でも、でも、合ってたら、すごく怖い、です」
ん?合ってたら怖い??
「遥ー!怒ってたら顔にシワ増えるしミーキュちゃん怖がってるから一旦休憩しよー!」
「なんで違うのよ!?え、あ、ごめん」
「怖がらせたらダメだよ遥」
「ごめんね、ミーキュ、ちゃん、ミーキュちゃんに、怒ってたわけじゃ、ないから」
息を切らしている遥、さっきまで一体運んでは打撃で破壊していたからね
長柄の武器、ハルバードってのでブンブン壊したりしていたけど刃が悪くなるとかでソバットで腹を貫いたり胴回し回転蹴りで首をもいでたから結構疲れたんだろうね
よくあんなに重い遥像をひょいひょい運んで削岩機みたいにガンガン壊せていたと思う
「間違ってごめんなさい、です」
「ミーキュ、ちゃんは悪くないよ」
私はミーキュちゃんをちゃん付けで呼ぶけど遥は呼び捨てとちゃん付けが定まっていない
遥は男勝りだしレアナービルに来る子供の対処があまりうまくない
元杉神官には自由に振る舞っていたがその接し方で迷惑をかけていたこともあるらしい
あまり泳げない元杉神官と別の島まで泳ぎに行って捜索されたって話を聞いた時は元杉神官に同情したものだ
「もしかしたら、です」
「間違ってても良いから」
「あっちのやつが正解、かも、です」
指さしたのは整理したときに明らかに違うと外された遥の像
その中でもミーキュちゃんがなにかしていたものが数体ある
それよりも残ってる遥像の方が可能性は高い気がする
「これを見る、です」
「これは・・・この国の王様だよね?」
「そう、です」
出された絵はピンクの髪の王様、とても賢くて偉い人らしい
纏められた遥像の髪もピンク色だ
え?どういうこと?
「『はるねーちゃん』は頼れる存在、です」
元杉神官にだよね?
そうだよね
遥と元杉神官の家族、お義父さん達はもともと親友で隣人
兄弟のように育ったらしいし元杉神官にとって5つ歳上の遥は頼りになる存在だ
「聖王は自分を『はるねーちゃん』と誤認させようとしてるのかも?です」
遥像のそれなりに似ているものよりも聖王と遥に近いものを選んでおいてみた
―――――・・・・次の扉は開いた
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