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第82話 真っ向勝負

 両チーム、開始と同時にそれぞれ動き始める。

 となれば、もちろん最初にぶつかるのは(かける)(れい)だ。


 ──カァァァン! 


 翔の【ミリアド】(剣)と麗の細剣【トゥインクル・レイピア】、最高級の剣がぶつかり合い、甲高い金属音が響き渡る。


「うおおお!」

「はあッ!」


四刃の剣グラディウス・クローバー

四点斬撃(クリスタル・アーツ)


 両者、共に放ったのは自身の最高火力を誇る<スキル>。

 <スキル>の輝きを半ば置き去りにしながら、交差する二つの剣が(まばゆ)い色の軌道を描く。


 ガキンッ! 

 前回は受け止めきれなかった麗の四連撃。翔も同じく四連撃の<スキル>を使えるようになったことで、その全てを受けてみせた。


「「「うおおおー!!」」」


 いきなり全開の激しい攻防に、会場はこれ以上ない興奮を見せる。

 今の会場はまさにお祭り騒ぎ状態。


「翔、成長したな」


「それはどうも」


 両者は剣を前に構えたまま、(しば)し様子見を行う。

 共にチームをまとめ上げるリーダーであり、全体を見る必要があるからだ。

 これはあくまでチーム戦。ここからはチームの総合力で上回った方が勝利する。


「『初級魔法 筋力増強』」

「『中級魔法 身体装甲』」


 三年Aクラスチーム最後衛の男子二人が『魔法』を唱える。

 筋力パラメータを上昇させる『魔法』に、仲間の身の回りに物理攻撃を防ぐ簡易結界を発生させる『魔法』だ。

 

 強化(バフ)の効果が乗った麗たちは、『筋力増強』による赤い微光と『身体装甲』による透明な結界で身を(まと)う。


「感謝する!」

「これこれ!」



 麗の少し後ろのに位置する静風(しずかぜ)大空(そら)、中衛の百桜(さくら)妖花(あやか)にも強化(バフ)がかかり、三年Aクラスチームは前に出ようとする。彼女らのいつもの戦法だ。


 が、立ちはだかるのは一人のゴツい男。 


「ふんっ!」


打消拳圧(ディスペル・クラーク)


「ぐっ!」

「何!?」


 豪月(ごうつき)が全身の力を込めた拳を振るい、それによって発生させた風圧が麗たちを襲う。

 特に殺傷能力はない様だが、その効果は確実に表れている。


強化(バフ)が消えてる!」


 見に纏う赤い微光と結界が消えていることに声を上げる妖花。

 麗たちは一気に攻勢に入るつもりが、これには一旦止まらざるを得ない。


「豪月、これを完成させたのはでかいぞ」


 隣に並ぶ翔が、頼もしいという目で豪月を見る。


 この<打消拳圧(ディスペル・クラーク)>は豪月が目指す戦闘スタイルを体現した<スキル>であり、翔のアドバイスをもらいながらも豪月が自分自身で辿り着いて獲得したものだ。


 ゆえにこれは豪月オリジナルの<スキル>。相手の強化(バフ)や、結界などを打ち消す効果を持つ風圧を発生させる正拳突きである。


「やってくれるね」

「足を引っ張る存在ではなかったということか」


 サポートの男子二人もこれは予想外だったようだ。


「でもまあ、関係ないね!」


 若干の劣勢ムードを全て跳ね返すかのように妖花は杖に魔力を込める。

 バチ、バチッ! と音を立て、たちまち雷を無理やり球の形にしたような巨大な『魔法』を出現させた


「わたしだって……!」


 対するは華歩の火の球。日に日に成長を重ね、翔の『魔法』には追いつかないまでも、かなりの大きさの火の球を出せるようになった華歩。

 

 学校内トップクラスの『魔法』使いの直接対決だ。


「面白い、やってみな!」

「負けません!」


 妖花と華歩、二人の意地とプライドがぶつかり合う。


「『上級魔法 豪雷』」

「『上級魔法 豪火炎』!」


 模擬場の上空で巨大な『魔法』の塊が真っ向から衝突する。


「やるじゃないか!」

「まだまだ!」


 互いに一歩も譲ることなく、自身の『魔法』に魔力を送り続け、両者の放った『魔法』の大きさは増す一方だ。

 ここで引いた方の陣営は甚大な被害を被るかもしれない、そんな思いから両者は全く引こうとしない。




 そして当然、その激しい『魔法』の衝突は離れた戦地にまで影響を及ぼす。


「──くっ!」

「──ッ!」


 飛んでくる電撃・火炎に気付いた麗と翔はそれぞれ後方に回避する。

 妖花と華歩が『魔法』をぶつけ合う中で、この二人も再び剣を交えていた。


「あちらも激しいな」


「みたいですね。ですが負けませんよ。華歩も、おれも!」


「それで良い! 来い!」


 剣系<スキル>に体術<スキル>、その他あらゆる<スキル>を使って相手を崩そうとするもやはり両者は完全に互角。

 もはや何らかの外的要因がなければ、両者に決着は着かないと思わせるほどに実力が拮抗している。


 キィン! と剣で互いを弾いて距離を取る。何度目かも分からぬ仕切り直しだ。

 だが、


「!」


 不運にも、翔が下がった先に電撃が襲い掛かる。




 そして、模擬戦というには少々重苦しい雰囲気が漂うのはこの戦場だ。


「僕たちもそろそろ始めようよ、大空さん」


「……やっぱり、もう姉さんとは呼んでくれないんだね」


「呼ばないよ」


「いいわ。来なさい、翼」


──キンッ!


 凪風と大空。因縁めいた二人は言い合いをしていたかと思えば、次の瞬間には武器を交えていた。

 観客席で見ている生徒の中でも、それなりに実力を持った者しか目が追いつかないだろう。

 

 それほどこの二人は“(はや)い”。


 翔と麗の戦いを剣技、華歩と妖花の戦いを威力とするならば、この二人の戦いは()()、それが命運を分ける。


「──ッ!」

「──! ──ッ!」


 両者の速すぎる攻防には口を開く余裕はない。

 高速で動く中で相手の攻撃を見切り、防ぎながら自身の攻撃を出し、その行動に合わせた相手の攻撃をさらに読む。


「ぐうっ!」


 押されているのは凪風。

 凪風が攻防のスピードを上げるごとに、大空はさらなる速度で追い詰める。


(つばさ)、私にあなたの本気を見せて!)


 大空が速度を上げているのは凪風の中に眠る潜在能力を徐々に引き出すため。

 つまり、大空はまだ全力ではない。凪風も手を抜かれている事に気付き、悔しさを表情に出す。


「ナメるな!」


「──! その調子よ!」


「うぐっ!」


 凪風の劣勢は続く。




 再び翔と麗がしのぎを削る戦場。


「!」


 翔が電撃に気付き、斜め上を向いた時にはすでに目の前まで迫っていた。


(間に合わな──)


「……?」


 感電しないことを疑問に思い、咄嗟(とっさ)に瞑った目を開けると、電撃は消えていた。

 代わりに、気のせいか自身の持つ【ミリアド】が微妙に()()()()()()()()ことを感じ取る翔。


(まさか……?)


 翔は【ミリアド】を見つめ、ある可能性を見出す。

 麗さんを倒せるかもしれない、そんな可能性を──。

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