第6話 違和感
時間帯はお昼を跨いだあたり。ダンジョン街でシャワールームを借りた後、家に帰って来た。
装備に関しては<ステータス>内の“ストレージ”という項目へ入れることが出来た。魔物の素材や発掘物についても同様に、“バッグ”という項目から持ち運びが出来るらしい。今回はダンジョンから出た後に聞いたので持ち帰ってきていないが。
改めて、おれは現代のダンジョンについてなんにも知らないんだな、と気付く結果となった。まあ、怪我なく無事帰還ということで今回は良しとするか。
「ただいまー」
「あら、おかえり翔。どうだった? ダンジョン街は」
「ああ、それなんだけどね」
朝出掛けて行く時、心配はかけまいと母さんにはダンジョン街へ行くと伝えていたのだった。
「母さん、翔がダンジョンに興味を持ってくれたことが嬉しくて嬉しくて」
母さんはダンジョン産業に関わっているわけではないが、大のダンジョン好きだ。それでも、おれがダンジョンを疎ましく思っていることから、話題には全く出さないでいてくれた。
「実は、ダンジョンに行ってきたんだ」
「え!?」
玄関を上がった先、曲がり角から顔を覗かせていただけの母さんが驚いた顔で駆け寄ってくる。
「どうして急に!? 大丈夫だったの?」
「うん、ほんの少し入っただけだから。大丈夫だったよ」
やはりこの様子じゃ狩ってきたとは言えないな。
「大丈夫ならいいのよ。それにしても……そうなのね。あの翔が実際に潜るまでダンジョンに興味を持っていたなんて。子の成長っていうのは逞しいものね。お腹空いたでしょう。ご飯食べる?」
「うん」
少し、嘘をついた。
◇◇◇
「うーん」
昼食を食べ、自室にてゴロゴロしながらダンジョンの記事を漁る。
〈カリフォルニアダンジョンにて先遣隊が第50層を突破! ボスを倒したことでこれまでにない財宝が溢れ出てきています!〉
第50層? この型のダンジョンって第80層までなかったっけ。20年経った今でもそれだけしか進んでいないのか。異世界ではたしか、一か月ほどでクリアしなかったかな。
そりゃパーティーが強かったのはあるけど、いくらなんでもかかりすぎじゃないか? やっぱり何か違和感が残るな。
……パーティー、か。そういえば、みんなは元気にしてるかな。
オルディンは今でもみんなの先頭に立っているだろうか。
シンファは故郷に戻ったのだろうか。
サティアは……多分相変わらずかな。
ソシオ、あれからどうしたんだろう。
「まあここで考えても仕方のないことか。疲れたな、昼寝しよう」
懐かしき異世界のパーティーのことを思い出し、瞳には一粒の雫を抱えながら眠るカケルであった。




