第34話 実現
「今日はダンジョン行くー? 直行バス通ってるけどー」
「うーん、どうしようかな。今日は結構疲れてるし。かーくんはどうする?」
「そうだなあ」
登校初日の帰り道。華歩と夢里と並んで歩く。
国探では放課後にダンジョンや模擬戦を行うことを推奨されているため、普通の学校よりも早く終わる。その分授業はかなりハイペースで進むらしいけど。
そして今日は、初日にも関わらず色々な事があった。
まずは豪月との模擬戦。結局おれが入試一位とかいう情報の詳細は知れなかったが、あれから教室でもよく話しかけられた。話しかけられすぎて名前を覚えきれてない。ちゃんと確認しておかないとな。
また、校舎内もだだっ広いことから、今日は各施設紹介などのオリエンテーションで一日が過ぎたわけだが、明日からはちゃんとした授業が始まるようだ。
「今日はこのまま帰るよ。おれも疲れた。それに、明日はいきなりあれがあるみたいだしな」
「あれねえ……」
「翔と一緒だと心強いんだけどなー」
あれ。おれたちがそう呼ぶのは、明日行われるダンジョンドームでの“3対3パーティー戦闘”の授業のことだ。パーティーは明日発表され、即席でのチームワーク、ならぬパーティーワークを求められるそう。
すでにおれと豪月は多少バレているが、これでクラスの連中の大体の実力、立ち位置が判明する。二人も気合いが入っているみたいだ。
「そうだね。今日はわたしも帰ることにするよ。明日にも備えなくちゃだし!」
「そっかー、華歩もか。わたしは寄りたい店あるからダンジョン街だけでも覗いていくね」
「じゃ、ここまでだな。また明日な」
「またねー夢里ちゃん」
「うん、また!」
そう言い残すと、夢里は東京ダンジョン直行のバスへ向かって行く。
「帰ろっか」
「そうだな」
それからは二人っきりで放課後デート! ……とはならず、普通に一緒に帰って、普通に家の前でばいばいした。
くそう。
◇◇◇
「さーて、お前ら準備は出来たか? ぼちぼち始めんぞー」
「「「はい!」」」
先生の指示で全員【模擬戦用装備】を装着して、ダンジョンドームに集合している。朝一番、おれたちがあれと呼んでいた授業。
いよいよ本格的に国探での生活が始まる。さあAクラスの実力はどんなもんだ?
「では第一模擬戦を始めるパーティーを発表する。パーティーはそれぞれ前衛・中衛・後衛が一人ずつになるよう組まれている。さっと話し合った後、すぐに模擬場で待機しろ。行動とパーティー把握の早さはダンジョンでも役に立つ」
今回の模擬場は、サッカー場ほどの広さに、大きめの岩や瓦礫が転がった足場の悪いダンジョン設定。身を隠せる分、夢里のような後衛が鍵となるかもしれない。
「では第一模擬戦、パーティー1、天野 翔、豪月 闘、七色 彩歌」
! 豪月と一緒か。この編成なら豪月が前衛、おれが中衛、七色さんが後衛かな。
ちらっと見た豪月の顔はにっと笑い、こちらに手でグッジョブと示してくる。やっぱ良い奴かも。
「パーティー2、小日和 華歩、凪風 翼、星空 夢里」
「「!」」
まじかよ。
この学校に来る以上いつかはこうなるかもと思っていたが、もう実現するのか。華歩と夢里と戦う日が。
「翔ー、悪いけど手加減しないよ?」
「こっちも全力だからね」
発表後、列からこちらに顔を覗かせて煽ってくる二人。
こいつら、闘争心剥き出しにしやがって。まあ、そうこなくちゃ面白くない!
「望むところだよ」
発表後、他生徒は上の観客席に、今から模擬戦を行う生徒はこの場に残る。
「七色、だったか? お前は何が出来る?」
短い作戦会議の時間で豪月が切り出す。サラサラの明るい赤髪で目が隠れている七色さんに役割を聞いた。
「私は強化と回復……それから――」
「それだけ出来れば十分だ! あとはおれたちがやる。なあ、兄弟!」
豪月がおれの背中をバシバシ叩いてくる。
「誰が兄弟だよ! まあ、そうだな。一応確認だけどおれたちのスタイルは知ってる?」
七色はこくりと頷く。おれと豪月の模擬戦を見ていてくれたようだ。
「それと七色さんの武器は?」
見たところ、彼女は防具のみで武器らしき物を持っていない。
「大丈夫。私はこれで戦えるから」
彼女は胸の前で手を包んだ。意図は掴めないが、今はあまり時間が無い。
「わかった、信頼するよ。じゃあ、初めて……ではないけど大事な一戦には変わりはない。絶対勝とう!」
「おう!」
「ええ」
声を掛け合ったおれたちは、各々話し合った位置に着く。
豪月を最前衛としておれがその少し後方、七色さんがさらに後方で身の隠しておれたちのサポートをしてくれる形だ。
「それではこれより、第一模擬戦を開始する。両パーティー、はじめ!」




