第30話 覚醒職
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母さんに国立探索者学校を目指すことを認められてから数日。
変わらず、いや、より一層気合の入った三人は今日もダンジョンに潜る。
「ハァ、中々、難しい、ね……ハァ」
「<三点バースト>。これ、わたしには必須<スキル>だ。絶対に習得しなきゃ……ハァ、でも一旦休憩ー!」
翔が華歩と夢里に<スキル>を教えている。彼女たちの「厳しくお願い!」という頼みもあり、それなりにスパルタだ。もしかすると、翔は二人からスパルタに勉強をさせられている腹いせ、というのもあるかもしれない。真偽は不明だ。
「おっけ。それなら一旦休憩にしよう。おれが見張っておくから二人はそこの安全地帯で」
「うん」
「はーい」
二人は壁を背にしてもたれかかる。特定の階層とダンジョンの入口を繋ぐ転移装置近くには不思議な電波が張られており、魔物が湧くことはない。そこが通称「安全地帯」だ。
「翔は体力ありすぎー」
「かーくんはすでにトリガーを分かっているから、引けば後は身を任せるだけっていうのもあるかも。わたしたちはその動きを自分で頑張って再現してるわけだし」
二人は翔の方をちらっと見る。
「剣やら杖やら銃やら。ほんっと器用だねー」
「あはは。そうだね」
翔はそれぞれ杖、銃を持って<スキル>を発動してみせ、それを華歩と夢里に真似させる形で<スキル>を教えていた。
本来ならば<スキル>とは、自身の武器で何らかの条件を満たした時にたまたま手に入るものである。それをトリガーと<スキル>発動時の動きを直接教えることで、<スキル>の形を体に覚えさせ、強制発動を試みている。正解の動きと完全一致した時に、晴れて<スキル>獲得というわけだ。
これは数多くの<スキル>のトリガーと動きを知る翔ならではの伝授法だろう。
「ん? なんだこれ、“覚醒職”?」
女子二人が休憩している中、銃を持っていた翔の目の前にはあるメッセージが浮かんでいた。
≪“覚醒職”が発現しました≫
(一体なんなんだ?)
全く身に覚えのない単語に翔は首を傾げる。
「なになにー、アルティメット……ジョブ? って言った? なにそれ」
「夢里ちゃんでも知らないの?」
夢里が知らないことに翔と華歩は驚きを隠せない。
「でもまあ、ジョブって言ってるなら<ステータス>関連じゃない?」
「ああー、確かにそうだな」
「せっかくだしわたしたちにも見せてよ!」
二人に従い、翔はパラメータのみの<ステータス>をパーティー内で共有した。
<ステータス>
天野 翔
覚醒職 “多種武器使い”
アビリティ:全武器種の潜在能力を引き出す。レベルアップ時全パラメータが上昇。
レベル:3
HP :121/121
MP :18 /18
筋力 :9
敏捷力:9
耐久力:8
運 :18
魔力 :16
「「「“多種武器使い”!?」」」
三人は一斉に驚きの声を上げる。
「なんだこれ」
「職業には“詳細データ”があるわ。かーくん、押してみて」
「お、おう」
翔は華歩の言う通りに職業の欄をタップ、同時に他の二人にも情報が展開される。
≪“多種武器使い”:多種多様の武器を使いこなし、数多くの武器系<スキル>を持つ者に授けられる“覚醒職”≫
「多種多様の武器、数多くの武器系<スキル>……」
(納得出来なくはない。書いてあることは一応当てはまるし)
「……なるほどね。まだ推測の域は出ないけど、なんとなく分かったわ」
「華歩?」
頭の切れる華歩が自分の考えに納得がいったようだ。彼女なりの見解を話す。
「おそらく、かーくんが元々無職業だったのは事実よ。パラメータも1から始まったわけだし。だけどかーくんには一つ、普通の人にはありえないイレギュラーが発生した」
「異世界転移?」
「そう、かーくんはそこで様々な武器種を試して色んな武器系<スキル>を学んだでしょ。そしてこの現代に帰還した。本当はその時点で認められていたのよ。でも、現代で多種の武器を使いこなしてはいない。剣しか使っていなかったから」
少し難しい話に翔は少々困惑している。夢里はなんとなく理解しているようだ。
「つまり?」
「つまり、この職業になる条件は二つ。多種の武器を使いこなすことと、多くの武器系<スキル>を持っていること」
翔はようやく理解したようだ。
「てことは、おれは異世界から帰還した時点で“多種武器使い”だったが、華歩の言う条件の一つ目を満たしていなかった」
「そう。そして今日、わたしたちに指導してくれるためにたまたま杖と銃を使った。その時点で正式にこの現代ダンジョンに認識され、いま発現したという形になった」
夢里も翔の<ステータス>を見て何かに気付いた。
「だからこの“アビリティ”なんだね。本来なら自分の職業に適したパラメータしか上がらない。だけど今の翔は、多くの武器を上位職業クラス以上に潜在能力を引き出せるから全パラメータが上昇するんだ」
「な、なるほど」
夢里の言葉に華歩がさらに補足をする。
「かーくんは無職業のまま、現代のダンジョンに興味を持たぬまま異世界転移をしたことで、色んな武器種を一から試した。変に知識を持たなかったのが逆に良かったのかもね。私だったら異世界でも絶対、杖を使ってるよ」
「わたしも銃を使ってるかなあ。もしかしたら無職業だからこそ、多くの武器で努力を重ねた翔だからこそ発現した、まさに“覚醒職”だね!」
「おれが、そんな……」
勇者だから、もう誰も死なせたくないから、と翔は異世界では必死に足掻いた。
(それがこんな形で報われるとは)
翔は思ってもみなかった。
<スキル>に“覚醒職”、現代に帰還してなお翔の中に残り続ける異世界の人々の結晶。翔は改めて感謝するのだった。
―――
(まるで昨日の事みたいだ。あれから半年、おれたちはかなり強くなった。待ってろよ、国立探索者学校!)
「早く早くー、翔も<ステータス>共有してよー」
「わかったよ、今するって」
翔は<ステータス>共有を受理した。
<ステータス>
星空 夢里
職業 “銃使い”
アビリティ:急所へ攻撃が命中した時のダメージが上昇
レベル:15
HP :350/350
MP :36 /36
筋力 :70
敏捷力:47
耐久力:22
運 :72
魔力 :11
<ステータス>
小日和 華歩
職業 “魔導士”
アビリティ:『魔法』の消費MP軽減、威力増加、範囲拡大
レベル:16
HP :241/292
MP :105/260
筋力 :19
敏捷力:30
耐久力:29
運 :49
魔力 :102
<ステータス>
天野 翔
覚醒職 “多種武器使い”
アビリティ:全武器種の潜在能力を引き出す。レベルアップ時全パラメータが上昇
レベル:13
HP :318/420
MP :60 /60
筋力 :56
敏捷力:67
耐久力:50
運 :56
魔力 :64
これにて第1章参戦編は完結となります。
この作品は本当にたくさんの応援をいただき、こうして無事に第1章完結を迎えることが出来ました。皆様には大変感謝をしております。改めてありがとうございます。
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翔、夢里、華歩の挑戦は続きますので引き続き応援して下さると嬉しいです。
今後とも応援よろしくお願いいたします!




