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第22話 一番得意な魔法

 光が全て華歩(かほ)に取り込まれ消えた後、フィが彼女へ告げる。


「これであなたは『魔法』を習得したはずよ。<ステータス>……だっけ? こほん、とにかく確認してみなさい」


 一瞬()のフィが出たな。まあ<ステータス>が存在しなかった異世界出身のフィには仕方がない。


 華歩は宙で一点を拡大するよう指を動かし、<ステータス>を表示。

 当然、おれたちには見えないが彼女はその目で確かめているはずだ。


「『上級魔法 豪火炎』……」


「「!」」


 華歩が呟いた言葉に、思わずフィと顔を見合わせる。


「おれが一番得意な魔法だ」


「えっ、そうなの?」


「ええ、そうよ。こいつはそれで、いっつも魔物を焼き払ってたわ」


 華歩は下の方を見つめ、少し考え込んでいる。


「早速使ってみたら?」


「えっ、あ、うん」


 夢里の提案で華歩は杖を構える。“隠し部屋”内の壁に撃つ分には問題ないだろう。

 『魔法』にはそれぞれ詠唱型、口頭型が存在するが、『上級魔法 豪火炎』は口頭型。つまり、その言葉を発するだけで魔法は放たれる。


 それにしても華歩はMPが足りるのか?


 そんな心配をしている中で、ふうと一息をついた華歩は目をキッと変え、杖を強く握る。


「『上級魔法 豪火炎』」


 華歩の杖の先、丸みを帯びた紫色の宝石が紅く光る。周りから見えない“魔気”を吸い取るように集め、光が紅色へ変わっていく。

 やがて光は溢れ、吸収が一瞬止まった後、それは放たれた。


「――!」

「――ぐううう!」

「――いいいい!」


 華歩の杖から放たれた先、壁へと直撃したその大きな紅の炎の球は壁を破壊し、その衝撃がはね返って伝わってくる。フィは風圧に耐えられず、変な声を出しながら後方へと吹っ飛ばされていた。


 MPの心配はいらなかったようだ。“魔導士”補正で消費するMPを抑えられていたりするのかな。

 『魔法』を放った当の本人は杖を前に持ったまま固まっている。


「すごい……これが、『魔法』」


「いやあ、びっくりしたけどほんとすっごいなあ。超当たりじゃん? これ」


「うん、これは良い『魔法』だよ」


 おれたちが声をかけるも、華歩は未だ固まったままだ。


「これ……」


「うん?」


 華歩はぼそぼそっと喋る。


「これ、かーくんの一番得意な魔法なんだよね?」


「そうだよ」


「そっか」


 そう言うと、華歩は少し間を置いて後方を振り返る。

 おれとばっちり目が合った状態だ。


「ふふっ、なんだか嬉しいな」


 ドキッ。

 彼女の心からの笑顔に、自分でその大きな心臓の音が聞こえる。


 可愛すぎる。



「あー! なに顔赤くなってんだよー!」


「えっ? おれが?」


「そうだよ! まったく」


 夢里に言われて初めて気付く。ほんとだ、触ってみると顔が熱い。

 照れているのか?


「こいつ、憎いけど勇者ってのもあって昔からモテるからねえ」


「なんですって?」

「なんだって?」

 

 あれ、なんだか二人の様子が……。

 せっかくの良い雰囲気が、フィの何気ない一言で一瞬にして明らかに怪訝(けげん)な雰囲気に変わる。


「へえ、君って意外とそうゆうタイプだったんだー。わたしのことはあんなに避けてたのに?」


「うんうん、私も意外だよ。あの笑った顔は女の子みんなに振り分けていたんだねー」


「ちょ、ちょっと二人とも? 落ち着いて、落ち着いて」

 

 余計なこと言うな! と目でフィを激しく(にら)みつける。


「てへっ」


「てゆうかさあ、華歩もなに、“かーくん”って。わざわざ翔くんって呼び直すなら、ずっとそう言ってれば? ほら、かーくん、って」


 やばい、華歩に飛び火した。


「べっ、別にそれはいいでしょう! ただの小さい頃の名残だもん。中学生にもなってそんな呼び方じゃ勘違いされるから直してるだけですけどー」


「あの、お二人さん?」


 バチ、バチ。

 おかしい、二人の目から出ている光線が中央で交わって見える。そんな『魔法』はないはずだ。

 フィの余計な一言から始まった女の言い争いはもう少し続いた。




 なにはともあれ、華歩は晴れて初めての魔法、『上級魔法 豪火炎』を手に入れたのだった。

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