第12話 表層
おれの盾が【グリーンスライム】の突進を弾く。
「夢里!」
「任せて!」
後方からバキュンッ! と銃撃音が鳴った瞬間、【グリーンスライム】の核が貫かれ、固形を保つことが出来なくなったようにそれが地面に落ちる。
「「ナイスー!」」
お互いの右手で高めのハイタッチを交わす。ここ何日間かで距離も縮まり、パーティーとしての息もぴったりだ。
「いやあ、たった二人で第2層もいけちゃうもんだね」
「夢里の射撃が良いからだよ。それに、【グリーンスライム】が湧いてるってことは第3層もすぐそこのはず」
基本的にダンジョンというのは第2層まではチュートリアルみたいなものだ。下へいけばいくほど魔物を生成する“魔気”が濃くなり、強いモンスターが現れやすい。
第3層からは“表層”という区分けに指定され、第3層付近から【グリーンスライム】のような“強化種”と呼ばれる魔物も湧いてくる。第1層、第2層はダンジョンの全体からすればあくまでチュートリアルというわけだ。
「気になってるんでしょ」
「何が?」
「何がって、そんなの第3層に決まってんじゃん!」
「まあ、気になって……」
いない、と言えば嘘になる。おれの<スキル>があればなんとかなるだろうけど、夢里が心配なのも確かだ。
「どっちなんだよ。おい、おい」
肘あたりをつんつんしてくる夢里に促され、彼女に聞き返す。
「行きたいんだろ?」
「! まあねー。私、表層には入ったことないし」
そうなのか。前にうまくいかなかったと言ってたのは第2層までの話だったのか。おれってやっぱり、強い?
「よし、じゃあ行こう!」
「なんだよ、自分も行きたかったんじゃん! このこの」
気分が良いのでそのまま第3層へ突入することにした。
予想通り、第3層への門はすぐ近くにあった。第1層、第2層とは様子が違った、少し大きく重いその門を開く。
中からはひんやりとした風が吹き込む。雰囲気が明らかに変わった。
「ちゃんと、守ってよね」
「任せて」
その雰囲気に少し呑まれている夢里を後方にし、警戒を怠らないままゆっくりと進んでいく。




