第10話 銃使い
“銃使い”。それは“銃系職業”と言われる職業の一種で、戦闘スタイル上、最後衛を務めることが多い。遠くから敵を狙い打ち、その重い一撃を急所に狙い当てることで魔物を仕留める職業だ。
しかしそんな特性からか、安全なところから弾を打っているだけだ、乞食だ、良いとこ取りだ、などど現状何かと言われてしまう職業でもある。
戦士系や盾役系といった、前衛でパーティーのために命を張る職業に比べれば危険が少ないのは事実であり、世間的にはあまり好かれていない職業であると言えるだろう。
★
「そっか。“銃使い”も大変なんだね」
「そうなのよ。昨日組んだパーティーの成果がイマイチだったこともあって、私が怒られる羽目になったわ」
「パーティーは最大五人までだっけ?」
「ええ。お前の代わりに違う職業の入れた方がましだとか、散々だったわ」
夢里の自嘲するような表情が、翔には少し心苦しく思える。
「今日あなたを誘ったのも、前に一度あなたの戦闘を見てたからよ。利用しているみたいでごめんなさい。私一人だと、どうしても狩りが出来ないから」
翔のことを怪しんでいた夢里だったが、翔の態度から彼女の疑念は晴れ、彼と話す内につい本音を出してしまう。
(まあ、銃を扱う職業が接近されたら何も出来ないよな。第1層にいる【コモドオオカミ】ですらそれなりのスピードがあるわけだし)
「わかった! それならしばらくおれとパーティーを組まないか?」
翔は思い切って夢里を誘う。呑気さと物事をあまり考えていないのは相変わらずだが、元勇者の翔は人思いなのだ。
「ありがとう。それなら他にも人を誘って……」
「いや、大丈夫」
「えっ?」
翔はすくっと立ち上がり、右手の親指で自らを指す。
「おれ一人で十分だよ。心配ならとりあえずこの辺だけで狩ってみる?」
◇◇◇
「これで! おわりっ!」
翔の<二連撃>が決まり、【スライム】はバラバラになる。
「驚いたわ、あなた本当に強いのね」
「へへっ、まあね! 夢里の援護もタイミングばっちりだよ!」
この辺だけといいつつ、あまりにすいすい進む二人のコンビは気が付けば第2層付近まできていた。ダンジョンの仕様上、同じ階層でも奥にいくほど魔物は少しずつ強くなるわけだが、二人はまだ余裕がある。
「まだ奥に進む?」
「ええ、いきましょう!」
翔は女の子とパーティーを組めたことが嬉しく、夢里は嫌な顔一つしない翔に心を許し、楽しくなった二人は狩りを進める。
そしてやがて、ピコンという音と共に翔の前にメッセージが流れる。
≪レベルアップしました≫




