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つないだ手
するっと、繋いだ手が離れた。
「ひちょりで、ありゅけるもんっ!」
舌っ足らずな声で、そう言い張るのが懐かしい。
「ちょ、ちょっと待って――」
ここは、車の通りが激しいのだ。自立心は良いが、親の心配は別だ。俺は慌てて追いかけて――。
車のエンジン音で我に返った。
「冬君」
背中越し、大きくなった娘を――若い二人を見やる。繋がれた手。指が搦んで。離さないと主張して。
「ちょっと、待って」
くるっと彼が振り返った。
「置いていっちゃダメでしょ?」
当たり前のように、そう言える子だ。
「仕方ないなぁ」
娘の片方は彼の手を。もう片方で俺の手をつなぐ。
久しぶりに繋いだ、娘の手は暖かくて――そして、大きくて。
どうしてか、目頭が熱い。
X(Twitter)で開催中の
毎月300字小説企画に今月も参加させていただきました。
第10回目のテーマは「つなぐ」でした!




