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甘い記憶ならもう溶けた
甘い記憶ならもう溶けた。当たり前のようにもらって、甘いチョコートを頬張って。お返しのコトなんて何も考えていなかったら、妹に怒られた。季節は巡って。昨日と同じような日常が来ると信じていた。でも、そんなコトあり得ないと知るのは、もう少し大人になってから。あの時、ああすれば良かった、こうすれば良かったと思っても、結局はもう遅い。あの子の作ったチョコレートの味も思い出せない。あんなに、甘かったはずなのに。少し、甘ったるい気きらいはあった。あの子は今、彼しか見えていない。そもそも、僕のことなんか見えていない。そんなことは、とっくに分かっていて――
「ひかちゃん、はい。チョコレート」
その声に甘えそうで――。
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文字数:300字