近すぎても怖い、離れても嫌(EP93周辺読了推奨)
すーっと穏やかな寝息を立てている冬君の髪を撫でる。
(冬君のバカ……)
どれだけ心配したって思っているんだろう。痛々しい、右肩のギブスを見ながら、思う。
ずっと思っていたことだ。
――近すぎて、怖い。
脅えているワケじゃない。
ただ、貴方がいつかいなくなる。きっとそんな日が来る。それが怖かった。
私は冬君がいないと呼吸ができない。
そう思った時があった。
本心だけど、また前の生活に戻るだけ。きっと、呼吸はできる。ただ、息をするだけなら。ただ、生きているだけなら。
それが、生きているって言えるのなら。
冬君の頬に触れる。
その頬に、唇を寄せて。
ズルいなぁ。
本当にズルい。
私がどれだけ、冬君のことを好きなのか知っている?
知らないでしょ?
だって、私自身が知らないんだもん。
冬君のことを好きだって思っていたのに。
冬君が「好き」って言ってくれて。本当に嬉しかったのに。
その好きに、底がない。
日々、募って。重なって。高まって。
抑えが効かないの。
「冬君のバカ」
あなたが、幼馴染たちに遠慮しているの、知っているよ。バカだよ、本当にバカ。冬君以外の人にこんな感情を抱いたことなかった。あなたが私を外に連れ出したクセに、ふとした瞬間にいなくなろうとする。
散々、痛感したんだ。
――近すぎても怖い。離れても嫌。
嫌だ。離れたらイヤ。絶対にイヤだ。ちょっと離れただけで。ほんの少し連絡ができなかったあの夜。私がどれだけ、苦しかったのか、冬君は知らないでしょ?
私は冬君に依存している。
自分でも分かっている。
冬君中毒だ。
ちょっとしたことで、禁断症状になっちゃう。
こんなに好きだって思うのに、この感情に底はなくて。
そもそも、蓋をして感情を閉じ込めるということが、無理だった。今さらながらにそう思う。でも、蓋をする必要なんか、そもそもなかったんだ。
あなたが不安になったら、何度でも「好きだよ」って言ってあげる。こんなことを言う性格じゃなかったのにな。本当に、冬君は私を狂わせる。
「冬君が好き。大好きだよ」
そう耳元で囁いて。
――近すぎても怖い。離れても嫌。
だって好きだから。冬君のことを誰よりも好きだから。ほんのちょっと、離れただけで不安になる。誰よりも、あなたの傍にいたい。あなたを失う日が来るとしたら。そんな想像するだけで怖くなってしまう。そんな矛盾していて、反発しあう感情が溶け合って。撹拌して、そして一つの感情になる。
目を覚ましたら、どんな言葉から紡ごうかな。今から、そんなことを思ってしまう。
だってね、冬君。
きっと、あなたは私のことを過小評価してるから。
あなたのこと、どれだけ好きなのか証明しなくちゃ。
次の呼吸ができないくらいに。
息継ぎなんかできないくらい。
溺れちゃうくらい。
そんな言葉じゃ、全然足りないくらいに。
冬君のことが好きなんだよ?
だからね――。
息継ぎなんか、させてあげないから。
Twitterの診断メーカー
「お題ひねり出してみた」で出たお題
「近すぎても怖い、離れても嫌」が
ゆっきのイメージだったもので、なぐり書き。




