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8/21は何の日?


某日――。



「Cafe Hasegawaの夏休み企画です!」

「どんどん、ぱふぱふ~」

「ぱふぱふ、ぱふぱふ~」


 瑛真先輩、音無先輩、美樹さんのテンションが高い。ぱふぱふは、なんだか違う。そして、こういう時は、イヤな予感しかしない。


「上川君、夏休みも終盤に差し掛かってきました! 宿題は終わりましたか?」

「えぇ、まぁ」


「クソガキ団って、基本マジメよね。しっかり宿題を終わらせて、それからしっかりイタズラするもんね」


 いや、美樹さん。俺はクソガキ団じゃないからね? 何、しっかりイタズラって?


「さて、来る8/21は何の日でしょうか?」


 あぁ、そういうことか。どうやら記念日に合わせて、店内企画をするらしい。そういう発想は、瑛真先輩も音無先輩も流石だな、って思う。


「献血の日?」

「流石、上川君。1964年のこの日、それまでの売血制度をやめて、全ての輸血用血液を献血により確保する体制を確立するよう閣議で決定されました――って、違う! なんで知ってるんですか?」


 俺は、解説ができる音無先輩がすげぇ、って思うよ。


「それじゃ、プロボウラーの日ですか?」

「下河さん、お見事。1970年8/21のこの日、プロボウラー中山律子さんが女子プロボウラー初のパーフェクトゲームを達成したんです……って、そうじゃない! そうじゃないんです!」


 だから、そこを解説できる音無先輩がすごすぎですって。涙目だけど。


「今日はバニーの日です!」

「雪姫をバニーガールにするとか、絶対にイヤですからね」


 俺は断固拒否をする。だって、ね。他の男子に絶対見せたくないって、思ってしまったから。




■■■





 結論から言うと、瑛真先輩・音無先輩コンビの発想は、俺の発想を上回っていた。兎耳をつけて来店した《《男子》》には、2割引。当然、そんなことをソロ男子ができる勇気があるはずもなく。


「でもさ、俺までウサミミをつけるのは、どうよ?」


 誰得なんだ、って思う。


「まぁまぁ、上川君。雪姫に『ご注文は何にしますか、ぴょん』って言ってみてよ」


 瑛真先輩、満面の笑顔である。

 俺は小さくため息をついた。


「…ごちゅうもんは、なににしますか、ぴょん」


 棒読みだった。

 それなのに、雪姫の表情が真っ赤に染まる。


「ダメ! それ、ダメ! 他の子にやるの、絶対ダメー!」

「上川君の色香が、ヤバいね。これ」


 え? どういうこと? なんで瑛真先輩、鼻血を出してるのさ? 雪姫? ちょっと、落ち着いて、雪姫さん?





■■■





 結局、マスターも含めてみんなが、ウサミミをつけること。そして、それ以外の接客は通常通りで行くことで落ち着いたんだけれど。


「やっぱり、イヤだ。恥ずかしすぎる!」

「でも、空君! 2割引だよ! それと、こんな可愛い空君、永久保存だよ!」



「ひかちゃん、本当に可愛い。いっそタイツも履いちゃう?」

「彩音は僕に何をさせたいのさ?!」



 男の子たちの阿鼻叫喚を所々で耳にするけど、俺は全部スルーすることにした。






「あのね、冬君?」

「ん?」

「他の子のうさぎちゃんになったら、ダメだ……ぴょん」


 真っ赤になって、絞り出すように言う。恥ずかしいのなら、言わなきゃ良いのに。どうやら、他の子にバニーな俺を見せたくないという、そんな意志表示らしい。


「雪姫しか、見てないぴょん」


 だから、そう言ってあげた。途端に雪姫が嬉しそうに、笑みを零す。


「し、し、し、仕事しろー!」


 瑛真先輩。そんなに怒るのなら、こんな企画をしなけりゃ良いのにね。





「うさぎちゃん、また後でね」

 だから俺は、雪姫の耳朶にそう囁いた。

8/21の記念日及び、その内容については

今日は何の日~毎日が記念日~より引用、セリフに変換させていただきました。

https://www.nnh.to/08/21.html

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