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救ったのは……
救ったなんて、きっと君は思わない。公園のベンチでうたた寝――私の肩にもたれかかる彼を見て、そう思う。でも私は救われたんだ。息をするのが窮屈な世界で。周りの人から見れば、つまらないコトで悩んでいたとしても。彼が差し伸べてくれた手、温度、声。その全てに私は救われた。
その目に私だけを映したい。彼は優しいから困った人がいたら、同じように手を差し伸べる。でも一番は私が良い。私じゃなきゃイヤだ。
「笑って欲しかっただけ。その笑顔に俺が救われた――」
寝言で漏れた本音。そうだと思う。次の小説は彼を勇者、私を笑わずの姫に配役して書いてみよう。君は気付くかな?
救われたのは、私の方なんだからね。
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(297字)
第81回Twitter300字SS参加作品
テーマ「救う」でした。
公園でのリハビリの最中。
雪姫と冬希でした。