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旅立ち

「私を王都まで連れて行ってもらえませんか」

私はまだ痛みの残る右足を庇いながら古びた椅子に座り黙々と弓の手入れをするライと名乗る男に近付いて切り出した。


助けてられてから2日間油断せずに冷静に観察して(ライ)は敵ではない、と判断した。

ひとりで暮らす猟師の様だった。

暗い顔で無口だけど罠にかかった私を助け、食事と薬を与えてくれた。


ライを観察しながらも一刻も早く王都に行くにはどうしたらいいのかを考え続けた。

ここを逃げ出して王都へ向かう事は出来る。

隙を見て必要な物を盗んでここを出ればいい。

今の私は13才の王女だけど前世の記憶があるから痛む足で歩く事も粗末な服を着る事もほとんど味のしない食事も我慢出来る。

でも知らない土地で追っ手を警戒しながらひとりで王都に辿り着ける可能性はどれくらいあるんだろう?

助けが欲しかった。

でも王女だとは明かせない。

助けを求めても怪我をしていたから仕方なく助けただけの小娘に付き合って王都まで道案内をするはずはない。

断られるだろう。

その時は同情を引いて必要な物を貰ってここを出よう。

盗むより巻き込むよりそれが1番いい。

そう思っていたのにライは表情も変えずにポツリと呟いた。


「…わかった」


助けが欲しかった。

なのに喜べなかった。


同情を引こうと考えていた言葉を飲み込む。

『なんで…?』

頭が混乱する中かろうじて言葉を引っ張り出す。

「…よろしくお願いします」

まだ名前を告げていなかった私はサキと名乗った。

適当な偽名(なまえ)だと呼ばれても直ぐに反応が出来ずに怪しまれるかもしれない。

また前世(まえ)の名前で呼ばれる事になるとは思わなかった。



「但し足の傷を治してからだ」

ライは作業の手を止めずに言った。

足の傷は随分良くなったけど痛みはまだ残っている。

本当は今すぐにでも出発したかった。

母は弟は無事なのか。

王都は、王宮はどうなっているのか。


黙り込む私にライは手を止め深いため息を吐く。

「王都へ行った事は無いが最低3日はかかる。その傷で無理をすれば時間がかかるだけじゃない、命取りになるぞ。王都に行きたいのならまず傷を治せ」

手は止まっているが私の方を見ずにライは淡々と言った。

ライの言ってる事は正しい。

傷を負ったまま旅をするのは危険だ。

追われていて無関係なライを巻き込んでいるなら尚更だった。

頷くしかなかった。


それから私達はいくつかの決め事をし、3日後の夜明け前王都へ向けて旅立った。

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