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嘘と青い光

人は嘘を()く。

保身(じぶん)の為に。

大切な何かを、誰かを守る為に。


俺の爺さんは嘘が()()()()人だった。

“吐かない”ではない“吐けない”だ。

何一つ誤魔化したり適当な事を言うことが出来ずに真実を話すか口にしたくない事は貝の様に固く口を閉ざして黙り込んだ。

嘘を吐けない事で自分も大切な何かも守れなかったからあんな山奥でひっそりと暮らしていたんだろう。


そんな爺さんの血を引くからなのか俺は昔から目を見れば相手の感情が何となくわかった。

表情や言葉とは違う感情を相手の目から感じ取る事が出来た。

山を下りた時に会う人達の表面はつるつるに見えるのに感触はざらざらしてる、そんな感情の違和感と嫌悪感に馴染めなかった。

だから嘘を吐けない爺さんと嘘を吐かない獣しかいない山の暮らしは心地良かった。


爺さんが死んで辛かったし悲しかった。

でも1人が寂しいとは思わなかった。

ずっとざらついた違和感を感じながら誰かと生きる位なら1人でいる方がマシだと思ってた。


なのにあの日、罠にかかった子供に関わるなんて。


猜疑心を(あらわ)にした手負いの獣の様な表情と青い目の奥に渦巻く様々な感情。

サキと名乗った名前も本当の名ではないだろう。

でも嘘でもない、と思った。

サキと過ごした数日の間、不思議といつもの嫌悪感を感じる事はなかった。

もちろん言葉や表情と感情の違いを感じる事はあった。

でもあのざらついた違和感はなかった。


爺さんの持ち物に真っ黒な石があった。

只の黒い石に見えたが光に翳すと内側から青い光を放った。

光の当たる角度で澄んだ青にも深い青にも見える石。

サキの目を見るとあの石の青い光を思い出した。


「王都まで案内してほしい」


そう言ったサキが本当に案内を望んでいるわけじゃない事もわかっていた。


「わかった」


なのにその一言で俺は死ぬまで離れるつもりがなかったこの家から出て王都へ行く事を決めた。

俺はサキの進むその先を見たいと思った。






(わたくし)リラ・ルチル・ユークレスはここに王位継承の執行を求めます」


議会の場で突然そう宣言したサキ、いや王女殿下の表情は13才とは思えない程堂々としていた。


あまりにも突然の宣言に会場は一瞬シンと静まり返り、それからざわざわと騒ぎ始めた。

騎士団員として殿下の護衛を勤める末席の俺にまで不躾な視線が刺さる。


「畏れ入ります王女殿下。殿下はまだお若い。うら若き殿下に重責を負わせてしまう事にもなるのは胸が痛みます。しかも我がユークレスでは女王即位は前例がございません。もう一度よく考えなおされては如何でしょうか」


1人の恰幅のいい男が汗を浮かべながら発言した。

心配する素振りをしているが目には焦りと怒りがありありと浮かんでいる。


「大臣。若さを問うのであれば(わたくし)より第二王子の方が幼いのではありませんか?それに前例がない事を全て退けていては何事も前へ進む事は出来ません。その様な言い方をせずとも私の力量不足を懸念しているのでしたらはっきりと仰ったら如何でしょうか?それとも私が王座に就く事で何か不都合でもありますか?」


穏やかだが強い口調で大臣と呼ばれた男を見据えて語りかける。


「いや…それは…しかし王子殿下には宰相殿や王妃様がいらっしゃいますし…」


男は目を反らし汗を流しながら口ごもる。


「まぁ、大臣は私の母と祖父を御存知ないようですね?私の母は王妃様で祖父は宰相をしておりますの。後ろ楯のご心配には及びませんわ」

にっこりと微笑み怯む事のない態度に男は顔を真っ赤にして押し黙る。


そんな男から目を外し殿下は会場全体を見渡し凛と声を張る。


「私の願いはこの国の平和とこの国に暮らす(みな)が幸せである事です。国王としての力も経験も不足しているとは承知しています。だからこそ今、力を1つにしこの国を守りたい。その為であれば私は力を尽くす事を厭いません」


そこで目を閉じ声を止めて深く息を吸う。

もう一度開いた目には強い光が宿っていた。

決意と覚悟とそしてー。


「そして私はこの平和と秩序を乱そうとする者があれば全力で阻止し、排除すると宣言します」


冷たく刺すような眼差しと全てを見透かした様な声に暖かい部屋の気温がグッと下がった気がした。


「無論この場で結論が出せるとは思っていません。ただ、私の揺るぎない決意を皆に知ってもらいたかったのです」


そう言うと席を立ち冷えて張り詰めた会場を振り返る事なく後にした。


俺は殿下(サキ)の背中を見ながら瞳の奥に見えた“嘘”は何を守る為なんだろうかと考えた。

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