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理由

兄との面会を終えて自室に戻った私はドサッと椅子の背凭れに寄りかかって大きく息を吐き出す。

暫く目を瞑ってからゆっくりと身を起して仕舞っていた書類を手に取る。

グランに頼んでいた書類の内容は父、国王陛下の死に関する調査書だ。


兄が父を殺したのではないだろうとは最初から思っていた。

兄は父を尊敬していたし兄の母、セレ様が王宮で孤立する事を何より心配していた。

父に認められる為、母の立場を少しでも良くする為に幼い頃から努力を重ねていた。

父も兄の努力と才能を認め、政権にも深く関わらせていた。

そんな兄が父を殺すとは思えなかった。

ただし人は変わる。

誰しもずっと同じではいられない。

時の流れや取り巻く環境など様々な事で良くも悪くも変化する。

私が学園に出向いてから数ヶ月の間で兄もしくは父に変化があったのかもしれなかった。

何かの切欠でふたりの仲が拗れたのかもしれない。

長年仲睦まじかった家族でも拗れてしまえば関係が崩壊し憎むようになるのはあっという間だ。

その可能性も十分あった。

でも兄に会って、目を見てやっぱり兄が父を殺したのではない、と確信した。


そもそも兄が父を殺した証拠はない。

報告書を何度読み返しても誰が父を殺害したかの決定的な記述も証拠もなかった。

父の死を、兄の犯行を目撃した者もいない。

“誰か”が父の死後すぐさま兄を捕らえるように仕向け、父を守れず死なせてしまった罪悪感で『自分が殺したも同然だ』と嘆く兄を“自白した”として全てが片付けられていた。


『上が黒と言えば黒』


秩序に守られ平和だと思っていたユークレス(ここ)も恐ろしい階級社会(せかい)なんだと思い知らされた。


階級社会(うえ)で一度“黒”となった物を“白”にひっくり返すのは難しい。


でも王女なら?

私はほとんど力を持たない王女だ。

でも王女には違いない。

全ての力を掻き集めれば駒をひっくり返す手助け位は出来るかもしれない。


ふと私はこの為にユークレス(ここ)王女(リラ)として転生したんじゃないかと思った。


元々平凡なOLだった(サキ)

誰とも向き合おうとせず大切に想う人も大切に想ってくれる人も居なかった孤独なあの頃。

(サキ)の人生が終わろうとした瞬間(とき)怖くはあったけど未練も何も無かった。


『やっと終わるんだ』

ただそう思った。


なのに気が付くと新しい人生が始まっていた。

(サキ)の記憶を持ったままリラとして生きなくてはいけないと悟った時は絶望した。

なぜ私なの?

輪廻転生があるとしてもなぜ辛く苦しい記憶を持ったまま生まれなければいけないの?

誰にも話せない絶望を心の奥に抱えて無気力に流されるまま今まで生きてきた。


『もう誰も信じたくない、傷付くのは嫌だ』


そう思っていた筈なのに目を閉じればたくさんの人の顔が瞼に浮かんでずっと閉ざして冷たくなった心が暖かくなる。

守りたい。

失いたくない。

いつの間にかそんな気持ちが心の中にある事に気付いた。


私がここに生まれた本当の理由なんてわからない。

でも、誰にも必要とされず誰も救えないままで終わってしまった人生を今少しでも取り戻す事が出来るなら。

もうとっくに終わった筈の人生なら全てを懸けてみてもいいんじゃないか、そう思えた。

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