もう遅い桃太郎
『もう遅い』はもう遅いだって!?
そ、そんな……!!
_(´ཀ`」 ∠)_
昔々、あるところにお爺さんとお婆さんがおりました。
お爺さんは夜にもかかわらず芝刈りへ行きます。
「もう遅いから明日にしなされ……」
お婆さんに止められ、お爺さんは眠りに就きました。
お婆さんは朝、川へ洗濯へ向かいました。最新式のドラム式で洗い残しも無く、お婆さんはスッキリと洗濯物を干しに取りかかります。
「しまったわい! 柔軟剤を入れるのを忘れたのじゃ!」
今更気づいてももう遅いお婆さん。既に洗濯は終わってしまいました。打ち拉がれるお婆さんの後ろを、大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れて行きます。
「む! あれはなんじゃ!?」
お婆さんが気づいたときにはもう遅く、桃はかなり流され、足腰の弱ったお婆さんでは追いつけませんでした。
暫くして、桃は別な老夫婦に拾われました。
「包丁で割ればええんのぅ?」
お婆さんが包丁を取りにシステムキッチンへと向かいました。
「包丁……包丁……あれ、どこやったかのぅ?」
「おーい! もう遅いわい! 桃から子どもが出て来てしもたわぁ!」
土間からお爺さんの声が聞こえました。待ちきれなくなった桃太郎は、痺れを切らして自力で出てきてしまったのです。
桃太郎は優しい老夫婦の下で、元気に育ちました。そして、二十歳になった日のこと、桃太郎は鬼退治へと向かうと言い出したのです。
「お爺さん、お婆さん。今日まで育てて頂きましてありがとうございました! 私は鬼退治へと行って参ります!」
「何を言ってるだ? 鬼なら裏の三瓶さんが退治しちまったぞい?」
「んだ。もう遅いべ」
桃太郎は腰に手を当て、スンと鼻息を鳴らしました。
「今日からまた宜しくお願いします!!」
桃太郎は引き続き老夫婦の下で幸せに暮らしましたとさ…………