第5話 模擬戦
「ゴブリンか、この世界でも例に漏れず低級のモンスター的な立ち位置なんだろうな」
「敵モンスターに対しては通常攻撃でも対処する事は出来ます、ただスキルを使用することでより高威力のダメージを与えて効率よく敵を倒すことが出来ます」 「必殺技のようなイメージだな」
「スキルは習得する事で使用可能となります、習得するにはスキル画面を開いて習得したい選択可能なスキルを選ぶことで使用出来るようになります」
「スキルを習得可能にするための条件は?」
「セット中のスキルを継続して使用することでスキルポイントを獲得する事が出来ます、それを消費することが基本的な条件となります。特殊なスキルはそのほか設定された条件を達成する必要があります。」
説明を聞いた通りにスキル画面を操作してみる、今セットされているスキルは武器スキル欄にある片手剣スキルのみ。そこをタッチすると片手剣のスキルツリーに見える画面に移る、選択可能なスキルは片手剣スキルの初級技〈スラッシュ〉のみ。ひとまずはそれを選択してみる。
すると、何かのイメージが急に頭のなかに流れ込んでくる。まるで何かの映像を見ているような感覚に襲われた。
「今、スキルを習得した瞬間に何かのイメージが頭に入ったと思われます。それを自分の身体を使って再現することでスキルと判定され威力が反映されます」
「今のイメージを再現っていわれてもな・・・こうか?」
ひとまずさっきのイメージ通りに剣を振ってみる、しかしなにか変化がある様子もない。確か先ほど見たものではなにか派手な感じに思えた。
「スキルを再現するときにはその精度に応じて威力が前後したりそもそもスキルとして判定されない事もあります、そして再現度に応じて演出としてオーラエフェクトが付与されていきますので、その演出で威力の判定を把握することが出来ます」
「だから、スキル詳細の威力表示に幅があったのか。プレイヤースキルが要求されるのもちょっと興味深い」
それに、スキルを習得しただけでは満足に使えないというのが気になるところだ。スキルの威力のパーセンテージの倍率が少し高く設定されている、通常攻撃でどこまで攻撃できるか分からないがスキルを十全に使えるに越したことはない。
「それでは、スキルの実践もかねて模擬戦を行ってみましょう」
「それでそのゴブリンか、練習台としては確かにちょうど良い相手かもな」
装備した剣を握りなおし目の前のゴブリンに向き直ってからなんとなく構えてみる、そして深呼吸をして集中力を上げていく。モンスターからは攻撃してこないらしい、動きのない敵ならスキルを外すこともない。
「んじゃ、やりますか・・・」
先ほどのイメージをトレースしていき構えから目の前の敵めがけて剣を振り下ろす、その時の刀身が淡く光っていた。
「ギャッ」
スキルとしての判定が通ったのか、剣撃を喰らったゴブリンは断末魔を上げて後ろに飛び倒れた。
「今のは、剣が光った様に見えたけど。あれがオーラエフェクトか?」
「はい、今のは再現率としては30パーセントほどでしょう。再現率が高ければさらに輝きが増していきます」
今ので三割程度、倒されたゴブリンはもう動きもせずそのまま光になって消えていった。
「それでは、チュートリアルはこれで終了となります。目が覚めればゲームが始まります」
「あ、ちょっと待ってくれ。最後に一つだけ」
「はい、ではどうぞ」
まだ色々聞きたい事はあるが、絶対に聞きたい事は一つしかない。
「このゲームにクリアは存在するのか?」
その質問に答えてくれるかは分からない、ただゲームとしてクリアがあるかそれを確認したかった。
「はい、このゲームはグランドクエストが存在しそれを攻略出来ればクリアとなります」
「クリアするとどうなる?」
俺の質問に答えようとする彼女の顔は、俺の目をじっくりと見て微かに笑った。
「グランドクエストをクリアしましたその時には、この世界から解放され現実世界に帰還することが出来ます。」