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第1話 世界改変

「おつかれさまでしたー」

 バイト先であるコンビニの裏口から出る、空を見上げるともう真っ暗だった。

3月の夜中はまだ冷えていて、冬物のパーカーはもう少し活躍してくれそうだ。

仕事の疲れを感じながらもこれからの休みにするゲームのことで頭がいっぱいになり、家に帰る足が速まる。

「あー、早く帰ってゲームしたいけど眠い。どうせ休みだから時間はあるけどどうするかー」

 考え事をしながら帰路についているとポケットのスマホが震えた、つい最近やっと買うことが出来たもので仕事先の人以外ろくに連絡先も入っていないというのにこんな時間に誰だろうか?

 着信画面を見ると時雨 愛美と表示されていて思わず眉をひそめた、着信元の人物は同じコンビニで働く女子高生で垢抜けているというかギャルっぽい感じであんまり好きじゃない。絶対に俺のこと陰キャだと思って馬鹿にしていると思っている。

 とても嫌々ながらも渋々電話を取る、スマホからは深夜帯にも関わらず元気な声が聞こえてきた。

「あ、もしもし倉影先輩。ちょっと相談があるんですけど?」

「分かった、ごめん、お疲れ」

 嫌な予感がしてすぐに電話を切った、しかしまたしてもスマホが鳴る。

「ちょっと、いきなり切ることないじゃないですか!?」

「俺、明日から疲れた体を癒やすために休みを取るんだ。もう眠いしお休み、切るぞ」

「ちょっと待ってください、お願いですよ。明日急用があるからシフト変わって欲しいんですよー」

「お前それ何回目だおい、そういう癖して俺のシフトは変わらない奴が何言ってんだ。他に頼め」

「他に頼めないから言ってんるじゃないですか、お願いしますマジで」

「うん、俺マジで無理だからそれじゃ」

そう言って通話を切り、スマホの電源も落とした。

彼女は俺が働いているコンビニに春休みでバイトをしに来た子で、俺が仕事を教えていたのもあって先輩と呼んでくる。

 ここ最近は何度もシフトを変わって欲しいと頼まれていて、最初の方はなけなしの善意で代わってあげたが感謝させることすれそれだけで何もない。それが続いて俺も我慢が出来なくなっていた、それからはなんども掛かってくる彼女からのラブコールは全てお断りしている。始めの方で感じていた相談を断ったときのちょっとした罪悪感もとうの昔に置いてきてしまった。

 家に帰り、軽く風呂と食事を取ったあとベットに横になってしばらくぼうっとしていた。俺以外誰もいないこの家はとても静かで何もしていないと時が止まったように感じる、このことを寂しいと思わなくなってから何年が経っただろうか。

 俺、倉影楓は中学生の頃に交通事故に遭って両親を亡くしてから今までたった一人で生きてきた。バイトをするために学校には通わず色んな仕事を転々としてきた、人間頑張ればなんとかなるものでつらい時期もあったが真面目に働いて今の職場に収まっている。

 そして、暇な時間があればゲームをしてなにも考えないようにする毎日。俺はずっとこのままなんだろうと考え事をしていたら疲れからか目蓋が重くなりそのまま眠りに落ちていった。


 気がつくと光のまぶしさに目を開けていた。ただそこは自分の部屋ではなく、どこまでも白い景色が続く空間であまりの衝撃に呆然としていた。

 とりあえず夢かどうか判別するために頬をつねってみる。「痛・・・くない? ということはこれは夢か」

「いいえ、夢ではありませんよ」

 どこからか聞こえてくる女性のような声、そのありかを探してあたりを見回すと俺の真っ正面にいた。ついさっきまではいなかったそこに一人の女性が立っていた。

「貴方が見ているこの世界は夢ではありません、しかし現実とも少し違います。」

「夢でも現実でもないなら、一体何だって言うんだ?」

「VR、仮想現実の世界です」

 人間本当にびっくりすると声も出ない、今聞こえた言葉が本当なのか一瞬疑ったがこの状況を見て納得できないほど混乱してはいなかった。

「ご理解が早くて助かります、では自己紹介を。私の名前はアイ、この世界のナビゲーターを務めております。そしてこの世界の名はアース。文字通り地球全体に広がっている世界でございます」

 この時から俺の今までの日常は終わりを迎え、また新しい日常が始まった。

「改めまして、ようこそVRゲームワールド【アース】へ貴方様を歓迎いたします」 

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