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ヴァンパイア

私はQちゃんに話しかける。


「おトイレに行きたいんですけど」


Qちゃんはパタパタとドアまで飛んでいくとロックを解除してくれた。


ドアをあけて廊下に出るとQちゃんもパタパタと後ろについてくる、勿論(もちろん)、私の監視だ。


「Qちゃんは外で待っててね」


私はトイレに入ると、トイレの窓を確認する。

この階の窓には全部鉄格子がはまっているのだが、ここの窓は小さくて、鉄格子の本数も少ない。


鉄格子は1本だけ残して、全て溶断した。


(魔法って便利よね)


お腹からシーツを取り出すと、切り裂いて繋ぎあわせ簡易ロープにする、それを格子に巻きつけた。


私は窓から身を乗り出し、壁をそろりそろりと降りて行った。


地面に着地すると、ほっと息つく。


「何処へ行くのかしら?」


「ですよねー」


可能性は考慮してたのだが、リーゼロッテに見つかってしまった。


私は逃げようとしたが、体が動かない。


拘束(バインド)呪文(スペル)だ。


「お仕置きしなくちゃいけないわね」


私の肩にリーゼロッテの手がかかりそうなその時、その手を振りほどいて後ろに飛びのいた。


拘束解除(アンチバインド)を発動したのだ、リリスが使えるなら私にも使える。


「人間が拘束を逃れるなんて……えっ! そんな! 体が…動かない……」


リーゼロッテはしばらくその場で固まっていたが、数秒で動き出した。


「さすがね」

と私はリーゼロッテに向かって言った。


「嘘……人間が私に無詠唱で拘束(バインド)をかけたなんて、さすが聖女見習いって所かしら」


とリーゼロッテは勘違いしている。


「あ、私ってそっち方面の力、全然無いんで」


「貴女、危険だわ、今すぐ始末する必要がありそうね」


「え?」


(ちょっと調子に乗りすぎたかしら……)


「は…話し合いましょう……誤解よ、誤解」


リーゼロッテはジリジリと間合いを詰めてくる。


私は後ずさりするが、城の壁際まで追い詰められ、後が無くなった。


「最後に言い残すことはあるかしら」


私はコクコクと首を縦に振る。


「聞いてあげるわ、言ってごらんなさい」


私は深呼吸をするとその言葉を口にした。


魅了(チャーム)全力全開(アンリミテッド)




リリスは焦っていた、エリスと連絡が取れないからだ。

おそらく魔術的な結界の張られた場所に監禁されている可能性がある。


「どこに居るのかしら……」


その時、声が聞こえた。


「リリス助けて!」

どうやら結界の外に出て助けを求めているらしい。

エリスの声は切羽詰まっていた。


「エリスなの!? すぐ行くわ、持ちこたえて!」

結界の外ならばパートナーの位置もわかる。


リリスは羽根を展開すると大空に飛び立った。




―― 古城にて ――




「ねぇエリス、説明してもらえるかしら」

「リリス助けてー」


リーゼロッテは、エリスの腰を足でカニ挟みにしつつ、両腕で胴体にしがみついていた。

だいしゅきホールドと言われる技である。


「ご主人様があきらめるまで離れないですぅー!!」


「それでどう言う状況なの?」

ああ、リリスの視線が痛い。


「ちょっと魅了を使ったら(なつ)かれちゃって」


「そうだと思ったわ」


「ヴァンパイアと契約しろと迫られてるのよ」


「すればいいんじゃない?」


「血とか吸われないの?」


「それはヴァンパイアが下僕を作る場合よ」


リーゼロッテが会話に割り込んできた。


「勘違いしているようですが、私がご主人様の下僕になるだけで、特にデメリットはありませんデース」


それならいいかな、契約しないと離れてくれないみたいだし……


「わかったわよ、契約するから離れてくれる?」


「了解しましたご主人さまぁ」


だいしゅきホールドを解除するとスタっと地面に降り立つ。



- リーゼロッテと契約しますか? -

 

 1.契約する

 2.断る



私は1を選んだ


リーゼロッテは突然自分の手首を鋭い爪で切り裂いた、手首から血がしたたり落ちる。


「ちょっと貴女、何をやって……」


リーゼロッテは手首を口元に持っていき、自分の血を口に含むと、いきなり私に抱きついてキスをした。


口の中に血の味が広がる。


ゴクン


(あ、飲んじゃった)


リーゼロッテはキスをしつつ舌を絡めて来た。


(ちょ、それは儀式と関係ないよね!)


「んんーんーんんん!」


私は抵抗するが、逃れられない


長い時間が過ぎて二人が唇を離したとき、唾液の糸が銀糸のように光った。


「これで私は、ご主人様のものです!」


と言ってうっとりとしている。


プロフィールが私の頭の中に流れ込んできた。

なんかもう好感度MAXで攻略済みになってるし。


「この身をご主人様に捧げます、さぁ欲望のままに私を凌辱してください!!」


私はリリスに話しかけた。


「ねぇリリス、この娘、以前よりポンコツになってるんだけど」


「精神汚染を引き起こしているみたいね、貴女やりすぎたわ」


「もう戻らないの?」


「戻らないわよ」


リリスは何を今更と言った態度で私を見ている。


リーゼロッテが契約の効果を説明をしてくれた。


リーゼロッテとその眷属(けんぞく)への命令権は勿論の事だが、それ以外に特殊能力が付与される。


私に与えられた能力は肉体の再生能力と、()()()な不老不死らしい。


不完全な不老不死と言うのは、飛躍的な寿命の長期化と、人間なら即死する損傷を負っても死なないと言う事だそうだ。


なお痛覚は遮断できると聞いたのでちょっと安心した。


「私がヴァンパイアになったわけじゃないのね」


「ご主人様は人間のままですよ」


「太陽の光で灰になったりしない?」


「何を言っているんですか?、ヴァンパイアにそんな弱点なんて無いです」


「え、貴女、夜だけ活動してたじゃない」


「お城に引きこもってたので、夜型の生活習慣が身についただけですし」


単に夜型のヴァンパイアなだけだった。


リーゼロッテに聞いてみたが、前世でのヴァンパイアの弱点がひとつもない。


そう言えばお城の鏡にも映ってた気がする。


「あとはですねぇ」


「まだ何かあるの?」


「ご主人様は身体能力も向上してます」


「具体的には?」


「思考加速、神経伝達速度と反応速度の向上、暗視、遠視、動体視力、聴覚、嗅覚向上、全ての筋力向上に体組織の硬化もろもろです」


私は周りの風景を見渡す、そう言えば暗い夜のなにハッキリとわかる。


「ご主人様は真祖の血を飲んじゃいましたからね」

「貴女、真祖だったの?」


「そうだお」

「だお?」

リーゼロッテが新しい語尾を開発したらしい。


軽いノリで真祖だと明かされてしまった。


「私って人間よね?」

「何度も言ってるじゃないですかぁ、ご主人様は人間ですよ」


私は自分が人間だと言う自信が揺らいできたのであった。

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